第5階層 眠れる女帝の森
「あの」
「すー……すー」
寝息
「あの」
「んー……すー……すー」
寝息
「あの」
「んんー……んー……すー」
寝息
「はぁ……」
さっきからこればっかり、なんだよこの空間は!!
――――――――数時間ほど前に遡る
「次の階層もこれまためんどくさくてね。とにかく怠惰とにかく怠惰とにかく怠惰」
何回言うんだ。相当めんどくさいのだろうか?
「だから別名」
「怠惰祭り」
グレンが雨宮のセリフを容赦なく奪った。
「そうだね」
雨宮はとにかく悔しそうだ。表情が死んでいるぐらいに
「次はどんな階層か何となく想像つきました」
「それは良かった。次の階層は、今グレン君が言ってくれた別名『怠惰祭り』って言ってまあ、とりあえず怠惰な場所だと思ってくれてかまわないよ⭐ ちなみに別名に関しては、階層主以外がそう呼んでいるだけだからね⭐」
階段を降りている途中そんな話をした。ちなみに前の階層で倒れ未だに動く気配のないアレスは雨宮の袖から出てきた影狼の背中に乗せられ運ばれている。
「扉発見!!」
雨宮がまたも階段を飛び降りる。「ひゃっほー」と楽しそうな声が聞こえる。そしてダーンと着地音が響いた。
「っ?!」
どうやら痛かったようだ。僕達が普通に階段を下りると雨宮が扉の前で凹んでいた。今回の扉はいたって普通の両開き式の木製の扉だった。
「……あ、それじゃ開けるよ」
無かった事にしたよこの人! そんな事よりガタガタと音を鳴らしながら扉が開いた。
「森?」
その先にあったのは森
「ようこそ! 第5階層 眠れる女帝の森へ!」
「なんですかこれ」
「え? 森だけど?」
「見てわかりますが、さっきの第4階層といい第3階層といい、この地獄の構造はどうなっているんですか?」
「んー僕にもわかんない☆」
わあ、うざい(えがおでにこやかにわらうかおもじ)
「うぜぇ」
グレンも同じことを思っていたのか
「それにしても彼女が眠っているからかな? もう道が分からないよ」
「え? どういう意味ですか?」
「えーっとねー第5階層の階層主の能力なんだけどね、森を作る能力なんだよ」
「すごい能力ですね」
地球温暖化に優しい能力だな
「でも……1つ大きな問題点があってね」
問題点?
「眠っていないと能力が発動しない」
なるほどそれじゃあ……
「今は、眠っているみたいだね……」
ふむふむ、なるほど、それじゃ、こんな説明中だろうと会話中であろうがこの森は成長してるってことだから……
「この階層がダントツいっちばーん! 遭難者と死者が続出するんだ! 過去数年前からナンバーワンを保っているのだ!!」
ダメじゃん!!
「でも大丈夫! これをみろ!」
雨宮が袖口じゃなく帽子から何か取り出した。
「磁石?」
「おしい! 正解は! 方位磁針でーした!」
「そう言えば、ここだけ次の階層の階段は北に会ったな」
ここだけなのかむしろ他の階層はどうなってんだ。
「うん、だからこれが役に立つ! 何故なら磁石は北を教えてくれるから!」
そう言って雨宮は磁石を成長真っ只中の森に向ける。
「……」
「どっちが北か分かったか?」
「……ん! ……ん」
「おい、雨宮」
「…んー……あーあー」
「雨宮……さん?」
もしかして……まさかだと思うんだが
「雨宮さん……まさか……」
「北ってどっち?」




