勝者
前回までのあらすじを簡単にまとめよう⭐
その1、アレスが切れた。
その2、相手も切れた。
そして、その3
「動く鎧がでてくるんだよ!」
「あははははははは!!」
雨宮が楽しそうに笑っているのが聞こえる。僕の目の前には黒い鎧のモンスターが僕を捕まえようと走ってきている。見た目によらず足が早い
『我首なし騎士と名を主より授かり者』
あ、喋るんだ
『主の命により貴方様をお守りします』
その瞬間
「え?」
鎧の下半身が馬に変化した。
「どういう仕組?!」
鎧は物凄い早さで僕の飛んでいった方向の落下地点まで走り止まると
ゴチン
「痛い」
上手に受け止めてくれた。鎧の胸で頭うったけど……
『我、主の命を達成、これより帰還する』
しばらく抱えられたまま歩くと
「あ、お帰り囚人君」
雨宮が相手にしているドラゴンの攻撃を見ることなくひょいひょい避けながら、こっちに向かって手を振っている。
「頼むよ! 影の様に黒い狼!」
雨宮は今度は袖から別の影狼を出してドラゴンと戦う相手にさせた。そしてこっちに向かって歩いてきた。
「いやー困ったもんだよ⭐」
「そうですね」
現在の状況を説明しよう
湖が血で赤く染まっている
以上
「竜人って本当に厄介だね。だからこの階層嫌いなんだ」
「本当に厄介だ」
「あ、グレン君お帰り」
さっきまですっかり存在を忘れていたグレンが戻ってきた。ついでにもともと赤かった服が、さらに赤く染まっていた。良く見ると胸元に穴が開いている。
「あ、死んだの?」
「どっかの誰かのせいでな」
「えへへー☆」
し、死んだ? え?
「不死っていいよね」
「不死なんざ痛みの延長戦が続いているものだ! 死ねない分倍に痛いんだぞ!」
「あと残ってるのはー」
スルーやめてあげて
「竜王とアレス君だけだね。さすがは階層主、強い強い」
「やはり、階層主のみなさんは強いんですか?」
「ん? 強さは関係ないよ」
「そうなのですか?」
「うん、階層主になる決め手はここに来る前のつ……」
「くたばれ!!」
不意にアレスの声が空間に響いた。そして、僕に説明しようとした雨宮にアレスの重い一撃がクリーンヒットし、ぶっ飛んできたキングの全身が雨宮に命中した。
「へぶしぃっ?!!」
奇跡が起きるとはこの事か
「雨宮さん……まあ、大丈夫か」
飛んでいった雨宮はほっといて、勝者となったアレスの方を見た。
「神モ王モ全て」
血まみれのアレスが笑っていた。
「俺が」
そして
「殺シて……や……ル……」
気絶したのか糸が切れたようにアレスは倒れた。
『勝者は彼ですか』
鎧がそう言った。
『それでは我は巣へ帰還します』
その瞬間、バチャっと僕は湖に落とされた。
「いてて、さて、次の階層に行こうか」
雨宮はやっぱり無事だった。




