第3階層 欲に溺れた鏡の間
「いやー、本当に人喰いには困ったものだよ」
次の階層へ向う階段を下りていると雨宮が大きな声で喋りだした。
「うるさいぞ雨宮」
「はっはっはー! アレス君! 君には分からないだろうね! この感情が! この感情が!」
何で二回言った。
「次の階層も面倒なんだよね。嫌だ嫌だ」
第2階層のように死ぬ体験はもう嫌だ。
「まあ、次の階層に比べたら第2階層はマシな方だね」
「おい、着いたぞ」
「お、早い早い」
先頭を歩いていたアレスが立ち止まった先にシンプルな白い扉があった。
「ようこそ! 第3階層欲に溺れた鏡の間へ!」
最後尾の雨宮がさっきの声よりさらに大きな声で叫ぶ……耳が痛い
「開けるぞ」
アレスが扉を開けると
「鏡?」
上を見ても下を見ても左を見ても右を見ても、鏡鏡鏡鏡鏡鏡鏡……何もかも全てが鏡張りの空間だった。
「相変わらずに趣味が悪い事で」
雨宮が部屋に入ると バン! と勢い良く扉が閉まった。
「しかも礼儀も悪い頑固爺さんだ事で」
『うるさいのう』
僕達以外の声が空間に響いた。
パリーン
その瞬間鏡が一斉に割れた。
「え?」
割れた鏡が一箇所に集まりドロドロとした銀色の液体に変わった。
『餓鬼が、希少種な化け物二匹を連れて歩いておると思ったら貴様らか、狂気使いと復讐使い』
声の主は老人のような口調をしているが、声は少年のような声をしている。
「お久しぶりだね☆ 階層主のお爺さん」
雨宮が液体に向って話しかける。どうやらこの声の主はこの銀色の液体のようだ。
『ふん、貴様にお爺ちゃんと呼ばれる筋合いは無いがのう』
「僕より年上の地点で爺なんだよ!」
『黙れ雨宮! たかが百年違いだろうが爺は爺じゃ!!』
「「喧嘩するな!!」」
アレスとグレンが止めなければ多分一時間は喧嘩していたであろう会話を止めさせる。すると、その言葉に反応したのか銀色の液体は個体に変化した。いや……正確には、一枚の細かい装飾の目立つ古い鏡に変わった。そして古い鏡が現れると同時に割れたはずの周囲の鏡が元に戻っていた。
「さて、囚人君紹介するよ。彼は……んー……まあ彼で良いか、彼なのかな? まあいいや、彼は千年鏡第3階層の階層主だよ」
雨宮が僕に「自己紹介して」とアイコンタクトを送ってきた。
「えっと、はじめまして、僕の名前は……囚人……です。よろしくお願いします」
とりあえず言ったけど、名前「ホルダー」でよかったのかな? でもまあ、記憶喪失だし良いか!
『ほう、が「レベル10」の化け物か、おもしろい……おもしろいのぅ』
そして次の瞬間
『貴様はワシの収集物に調度いい』
「え?」
意識が飛んだ。
そして意識を取り戻したとき僕が見た世界は……




