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雨のち・・・  作者: カナメ
7/8

自己満足

ちょっと短めです。

「急にごめんなさい。一度に色んな情報が頭の中で錯綜したから、上手く処理できなくて・・・」



堀宮さんの、力なく・・・乾いた笑いが逆に痛々しい。

こんな時、どんな対応をすれば正解なのだろうか?

優しく気遣うべきか?

それとも、何事もなかったかのように茶化せばいいのか?

俺には、わからない。だが、このまま気まずい空気が続けば、それだけでより事態が悪化していく事だけはわかる。

今この瞬間、沈黙こそが最悪の選択。

なので、何でもいいので喋らなければ。

俺は特に内容など考える間もなく、脳内に思いついたままの事を口にする。



「・・・えーーと、無理して笑うことないですよ。楽しければ自然に笑って、悲しい時には自然と泣くのが人間という生き物ですから。俺を気遣う前に、自分を大事にしてあげてください」



ほんと、何を言っているのか自分でもよくわかっていないが、まあそこら辺は気にしない。

ただ思ったことを垂れ流しただけだ。

恥ずかしい思いをするのは後の自分だけ。

今の俺には関係ない。だから・・・適当に俺の価値観を押し付けてみよう。

他人を気遣う前に、まずは自分自身を気遣う。

自分に余裕が出来てから、他人を助ければいい。

自分の事をおざなりにして、他人を優先するなど間違っているのだ。

自分勝手?

自己中心?

自分の都合を後回しにして、誰かを助ける・・・その結果、自分の負担は増し、助けられた誰かの負担が減る。

・・・それはなんか違うと思う。

なら助けられた誰かはこちらを助けるか?

残念だが、それはほぼないだろう。

他人に助けを求めるのは、自分に余裕がないからだ。

元から余裕がない人に、他人の状況など気遣えるはずがない。



誰だって他人にはいい顔をしたいものだ。

いい人に思われたい。だから困った人には手を差し伸べる。

そこに損得も絡めば、偽善的な感情も存在する。

ただ、下心もなく手伝う人も、稀にいる。

・・・それら全てに共通するものは、自分に余裕がある者だ。

余裕の種類は人それぞれ。金に余裕がある者。時間に余裕がある者。体力に余裕がある者・・・つまりは心の余裕だ。

心に余裕があるからこそ、他者を気遣える。

自分を蔑ろにしてまで他人を助けるなど、ただの自己満足だ。

はっきり言って、オナニーと同じである。自分が気持ちよくなりたいだけ。そこに他人の気持ちは存在していない。

自己陶酔。

その一言に尽きる。



だから、そんな自分勝手な人間には、なってほしくない。

特に、それが好きな相手なら尚の事。

だから堀宮さん。

自分の心を、気遣ってくれ。

俺なんか、気にしなくていい。無視してくれていいんだ。

せめて今は・・・今だけは、自分だけを大事にしてくれ。

今の貴女の心は、自分のことだけで精一杯なんだ。

なのに、貴女はそれでも他人を・・・俺を気遣ってしまう。

それは優しさと誤解しがちだが、違う。

それは自己中心的な考えで、自己満足の類なんだ。



俺は切実にそう堀宮さんに語りかける。

俺の想いが少しでも伝わるように。

どさくさに紛れて、堀宮さんの両手を掴みながら。



・・・その想いが、伝わったのだろうか?

堀宮さんが自分の事を、ぽつりぽつりと語りだす。

それは過去の出来事。

そして今にも繋がる内容。

俺はそれを、ただ黙って聞く。聞き役に徹する。

余計な口を挟まず、堀宮さんの独白を一字一句聞き逃さないように。

俺はただ、耳を傾け続けた。



次話はヒロインの過去話の予定です。


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