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雨のち・・・  作者: カナメ
4/8

デート

少し展開を早めます。

堀宮さんと出会って早半年。

季節は夏をまたぎ、秋へと移る。

あの傘を返して以降も、俺は週三ペースで喫茶店に通っており、今や立派な常連である。

堀宮さんを口説くことに関しては、最初の計画通り長期戦を覚悟していたのであまり進展はないままだ。

だが、そろそろいい頃合いであるとは思っている。

なので・・・自然な流れを意識しつつ遠まわしに、それとなくデートのお誘いをしたのだが・・・・・・

ことごとく失敗。

しつこくないように気をつけているので、あまり誘った回数自体は多くはないのだが、今のところ全戦全敗。めげないように自分を奮い立たせてはいるが、ここまで断られている現状に、さすがの俺も堀宮さんの鉄壁なガードに少し心が折れかけている。

だが、それでも諦めずにいた俺に遂にほだされたのだろうか?

堀宮さんがある一つの提案を提示した。



「三年後も変わらず同じ気持ちのままだったら、また誘ってください。その時は・・・真剣に考えますから」



口調はやんわりとしていたが、堀宮さんの言葉の端々に強固な意志を感じた瞬間でもあった。

ある意味、そんな迫力負けした俺は頷くだけで精一杯だった。

なので俺は・・・律儀にその約束を守ったわけである。

三年の月日をただひたすらに、辛抱強く待ち続けた。

その間、喫茶店にもマメに顔を出すのは忘れずに。



そしてきっちり三年後。

俺は解禁とばかりに早速、堀宮さんを口説いた。

三年間、一切口説かなかった俺が唐突にデートに誘った事に、堀宮さんは驚いていた。

何故、驚くんだ?

・・・・・・まさか俺が諦めたとでも思っていたのだろうか?心外である。

俺はあれから三年が経過したから、改めてデートに誘ったのだと説明。

そんな俺の説明に、堀宮さんが呆れた様子で口を開く。



「・・・まさか本気ですか?」



「本気です」



間髪いれずに俺は肯定。



「・・・・・・大抵の男性は、三年もあれば他の女性に目移りしていくんですけど」



「私は、貴女しか見てませんでしたから」



「・・・付き合うって確約したわけじゃないですよ?あくまで、考えるという前提で」



「なら考えてください。三年前の約束通り、真剣に、ね」



人気のない店内、俺と堀宮さん、二人の言葉だけが静かに応酬する。

他人に邪魔されたくなかったので、二人だけになれる時間まで粘ったのだ。

逃がす気はない。



「・・・・・・・・・やっぱり私は」



否定的な前ふり。

これはいけない。



「答える前に、一回だけデートしませんか?」



なので会話をぶつ切りにしてでも遮る。

紳士的じゃないって?

このまま紳士ぶっていては機会を逃してしまう。なら多少強引な手段もやむなしだ。



「あの・・・」



ここで有無を言わせない。言わせてはいけない。

いま必要なのは勢いだ。

なので堀宮さんの抗議とも言える呟きは、あえてスルー。



「そのデートで脈なしと判断できたら、私はスッパリ堀宮さんの事を諦めます。だから、一度だけ試しに付き合ってください」



俺の強固で譲る気のない意思が通じたのだろう。

やや間を置いて



「・・・・・・わかりました」



堀宮さんの了承をゲットした。

こうして無事にデートの約束は取り付けた。

互いの予定を確認し合い、デートは二週間後の日曜日に決定した。

あとは・・・ドタキャンされない事を祈るばかりだ。







デート当日。天気は秋晴れ。暑過ぎず、寒過ぎずのちょうどいい気温。いいデート日和である。

幸いな事にドタキャンされる事もなく、無事に待ち合わせ場所である駅前で堀宮さんと合流。

普段の店にいる時も私服ではあったわけだが、デートという事で堀宮さんはいつもとは違う雰囲気の私服姿だ。

なんと言っても普段との一番の違いは、ロングとは言えスカートをはいている事だ。

相変わらず体のラインが出ない服装だが、それが逆に清楚さを醸し出している。

化粧も普段とは違う、余所行きな感じにも見える。男なので細かい違いまではわからないので、確信はもてないが。

そんな見慣れない堀宮さんの姿に、俺は惚れ惚れした。



「えっと・・・そんなに凝視されると、不安なんですが。似合ってませんか?スカートなんて、一年ぶりくらいだから落ち着かなくて」



「・・・いやいやいや、すごく似合ってます。綺麗です、ますます惚れ直しました」



酒でも飲んでるんじゃないかと自分でも疑ってしまうくらいに、歯の浮いたセリフをペラペラと垂れ流す俺のほめ言葉に、堀宮さんは顔を真っ赤にしながら



「あまり年上をからかわないで下さい。本気にしてしまいます」



と注意してきた。

ぐはっ!?その反応は反則だろ!

こんなやり取りだけで、俺はこの場で猛烈に堀宮さんを抱きしめたい衝動に駆られたが、理性を総動員して我慢した。

駄目だ、耐えろ!耐えるんだ俺!衝動のままに行動したら平手くらってその瞬間、ジ・エンドだ。

だがどうした事か、俺の口はそれに反比例するように絶好調に動き回る。



「私は世辞や冗談も口にしますが、これは本音です。是非、本気にしてください」



堀宮さんはますます照れたのか、恥ずかしそうに下に俯いてしまった。

・・・その仕草一つ一つがやばいくらいに可愛いと思える俺は重症なのだろう。

今日一日、俺の理性はもつのだろうか?

ある意味では不安な一日の幕開けであった。











三年経過して、主人公の年齢は二十八、ヒロインは三十三歳になりました。

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