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第8話 あらたなる影

 テロリストを捜索するいたりんたち。しかし成果は上がらず、街を彷徨うばかりであった。

 そしてやっと怪しい影を見つけ、追い詰めるが……

 新たな影が!

 お読みください。

 とはいったものの……。

 なんなの~、このよどんだ雰囲気は。


 テロリストどもふん縛るぞっと意気込んだものの、街にはかなり雑多な“悪意”が充満していた。淀んだ気のような魔導素子が漂っている。暗い鈍い色の絵の具を噴霧したように……。


 これじゃ、テロリストを判別するなんて……。住職はドス黒い色だからすぐに分かるって言ったのに……。これじゃ、どれがどれだかわんないよぉ。


「杏、どうしたの? テロリストのしっぽは掴めそう?」

「……ちょっと、難しいかも」

「頑張って! 今はあなただけが頼りなんだから」

「……分かった。頑張ってみる」


 と、まなみには答えたものの、何をどうすればいいのやら……。うーん、仕方ない。一番ドス黒い色を探して虱潰しにあたってみるか……。そうだ!


「まなみ、ちょっと聞いてみるんだけど……」

「何? 珍しいわね」

「知り合いに、探偵さんっている?」

「探偵? どうして?」


 私はまなみに現在の状況を説明して、虱潰しに対象を潰していくことを話した。


「そういうことね……。何も探偵に頼まなくても、うちの調査部に頼めばなんとかなるんじゃないかな」

「調査部? ナニソレ……?」

「まぁ、簡単にいえばうちの財閥の諜報機関ってところね。なんせ、うちみたいな財閥ともなると末端まで情報統制するのって難しいのよね。それで万が一社内秘の情報とかが流出した場合なんかを想定して、合法非合法を問わず調べる部署なの。そこに協力を頼みましょう」


 え? まなみさんさらっとモノスゴイ発言をなさいませんでした……? 本当にこの人と友人でいていいもんなんだろうか? 住む世界があまりにも違いすぎて、めまいが……。


「とはいえ、杏が目星をつけてくれないと、動きようがないのよね。……杏、聞いてる?」

「はぁ、聞いてますよ……」

「なにそんな顔しているの! しっかりしてよ、あなた以外に出来る人がいないんだから」


 ……しょうがないなぁ。確かに現状でテロリストを追えるのは私だけだし。

 頑張りますか!

 

――――☆――――☆――――


 とはいったものの……。ドス黒い魔導素子の塊はそこかしこにあった。

 一つずつ潰していったが、関係のないものばかりだった。


 あぁー! もう、どうしてこう犯罪者が多いのかしらっ! 

 覗き、盗撮、盗聴、詐欺ect. ……この街は犯罪の巣窟かいっ!


 あからさまな犯罪行為を放置するわけにも行かず、とりえず情報だけはケーサツに届けておくことにした。……なのに。


「ほほぉ、今回も手柄をほり込んでくれるのかい? 魔導術士様々だねぇ。こんなんなら魔導術士様に特別褒章を警察から進呈しないといけないかねぇ? そのうち魔導術士様に警察業務を委託するなんてことになるかもな。ははっ、まさに『警察の犬』ってわけだ」

「……私達は犯罪行為を見つけて放置するわけにも行かないものですから、お気遣いなく。我々には逮捕権は無いですからね。あとは警察の皆さんの仕事ですので、お任せします。しかしこのままだと皆さんの代わりに魔導術士が街の治安を担う日も近いかもしれませんね。飼っているはずの犬に仕事を奪われて、失業しないようにお気をつけ下さい。フフッ……」


 担当刑事の品のない冗談にまなみが我慢しきれずいつものように毒を吐く。担当の刑事さんの顔がひきる。


 まなみさん、気持ちはわかるけどそれは言いすぎでしょ……。しかもいつもの『氷の微笑』で……。担当刑事さんが凍りついているじゃない。まなみさんおねがいしますよ、ケーサツみたいなお役所ともめると後が面倒くさいんだから。


 とはいうものの、雑魚ばかりでアタリが全くない。テロリストはいつどこで動き出すのかわからないのが厄介。微罪をいくら摘発しても、私達の一番の問題は一向に解決しない。本星に近づく方法はないものかしら……。


「調査部に持ち込むようなアタリはなかなかでないねぇ……」

「まぁねぇ……。とりあえず、地道にやるしかないでしょ」  


 さすがのまなみも疲れが出たのか、少しぼやく。私もぼやきたくなったが、そこはグッと我慢した。 


 私って偉い?

 だって、事務所代表だもん、やることやらないと!


――――☆――――☆――――


 捜索を開始して、だいぶん時間が過ぎた。一ヶ月位は経っただろうか?

 未だに目立った成果なく、警察の実績を底上げするだけだった。


「……なかなかみつからないなぁ」

「そうねぇ……」


 私もまなみも街を彷徨い疲れ、途方に暮れていた。

 街は夕暮れ、行き交う人も足早に家路につく人ばかりで、怪しい影すら見えない。


「今日はこのへんで切り上げようか?」

「そうね、また明日にしましょう」


 私はまなみに声をかけ今日の捜索を終わりにしようとした。いい加減疲れていたし、やればやるほど、犯罪者を見つけるだけで、私を喜ばせることは何一つないからだった。



 ふと街をぼんやり見ていたら、何か黒い影がうっすらと見えた。


 え? ……何かな? 明らかに今までのものとは違う、漆黒の影が通り過ぎたような……。


「まなみ、いくよ!」

「え? どうしたの急に? もしかして、獲物を見つけた?」

「まだ、判らないけどその可能性は高そうよ。今までと全然違う黒い影がよぎったわ。追ってみる!」


 まなみは半信半疑で私の後を追ってくる。まぁ仕方ないよね、見えてないんだから……。

 とにかく、見失わないように追いかけないと。


 ほのかに残る黒い残像を追いかけ、路地の奥へ入り込んだ。


「あれ……? いない……」


 追い詰めたはずの影が掻き消えた……?


 私は周囲をくまなく見渡し、人影を探す。路地の暗がりに人の気配が掻き消されたかのようだった。


 ふいに微かな人の気配を感じ、身構える。


「誰っ?!」


 私の問いかけにその“気配”は答えなず、代わりに魔導術を発動した。


「魔導術?! 何で?」


 疑問を解決する間もなく、私は身構え、術を発動させた。


「万物の守りよ! 我を守れ! 魔導防壁っ!」


 間一髪で、相手の放った火炎を防ぐ。同時に、相手の位置を探る。

 しかし、位置が掴めない!


(ちっ! やっかいね、これは……)


「杏、大丈夫っ?!」

「気をつけてっ! 術をつかうわっ!」

「術っ?! わかった!」


 私とまなみは術の発動準備をして、相手の出方を警戒する。相手の動きが読めない。


 ……ちょっとヤバいかも。魔導術戦に慣れている感じがする。


 通常、魔導術を発動すると魔導素子の流れや“場”が乱れ、その位置を感じることができるのに、この相手はその乱れが小さくて感じにくい。そんなことができるのは魔導術を使い慣れた術士。……それも、魔導術戦に特化した“魔導術戦士”……。


 だとすると、私たちでは……かなり厳しい。一応戦闘訓練はしているけど、おざなりなもので戦闘のプロを相手にがっぷり四ツに組んで戦えるものでは……。


 そんな思いが頭の中を駆け巡ったとき、一瞬、魔導素子場の乱れを感じる。



 来るっ?!



 再び、私たちを火炎の波が襲う!

 地獄の業火が周囲の空気を焼く。

 肌も髪も干からび、焦げそうな灼熱の空気が私たち二人を荒々しく囲む。

 焼けた空気が私たちの喉も干からびさせ、呼吸を妨げる。


 苦しい。息が……。これは長くは持たない……! 反撃どころじゃ……。


 私たちは魔導防壁を生成、火炎を防ぐが防戦一方に追い込まれて行く。


 ……これは年貢の納め時ってヤツ?


 私が諦めかけたとき、突然攻撃が止んだ。


 何……? 何かあったの?


「あんたたち、ナニモノだ?」


 ふいにかけられた声に、一瞬脱力する。誰?


「私たちは国家魔導術士! そういうあなたはっ?!」


 まなみが不審な声に答え、右手に装備しているWADをかざす。


 すると、今まで感じられなかった人の気配を感じ、近づいてくるのを感じる。


「なんだ、同業者さんかよ……」


 暗がりから表現れた“気配”はどうも男のようだった。ビルの隙間からわずかに差し込む光に照らされたその姿は闇からの使者にも思えた。


 ただ、わずかな光に現れ消えるその顔つきは精悍さと幼さが同居しているような不思議な顔つきだった。背格好も鍛え上げられた感じはうけるが、筋骨隆々の歴戦の戦士というほどではなく、どちらかといえば高校生ぐらいのアスリートというほうがしっくりくるような姿だった。そんな不思議な風貌の男が国軍の都市迷彩戦闘服を着て、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


 しかし、奇妙にアンバランスな風貌とは裏腹に眼光鋭く、私たちを見据えていた。


 少年兵……なの? あれだけの術を操っていたのがこの人……?


「あんたら、何をしていたんだ、こんなところで?」

「……人にモノを尋ねるなら、名前ぐらい言いなさいよ。失礼じゃない? それとも、名乗れないようなやましい事情でもあるのかしら……?」


 ぶっきらぼうな物言いの兵士にまなみは多少の毒を含ませつつ、反応をうかがう。しかし、まなみにそう言われてもその兵士は動じる様子はなかった。


「……失礼した。特殊任務中につき、官姓名などの詳細は勘弁願いたい。国軍直轄の特殊部隊のものとだけ言っておこうか」


 国軍の特殊部隊の兵士さんがこんなところで何をしているのだろう? 特殊任務っていったいなんだろう? こんな町中で何を?


「ところで、国家魔導術士のお姉さんたちがこんなところで何を?」

「えっ……?」


 え? 何? にこやかに笑みを浮かべくだけた口調で質問された……。


 一体何なのこの人は……。


「……私たちはさる人物を追っていてね。その人物の気配を追っていたら、この路地に入り込んだ……ってわけ。というぐらいでどうかしら?」


 まなみがかなりボカシて目の前の兵士にこの路地へ入り込んだ理由を答えた。


「……奇遇ですね。似たようなもんですよ」


 その兵士からは非常に簡潔な答が返ってきた。


 結局、何も判らないじゃない! そんだけじゃ!


 その時、彼の通信機が音もなく作動し彼は通信機で通話を開始した。


「……はい……標的を追っていたのは国家魔導術士の二人組です。……はい? いえ、分かりました、やっておきます。……後日? ……自分が……ですか? ……あ、いえ、了解です」


 そういうと彼は通信機を切り、私たちのところに近づいてきた。

 通信機を切るとき何かあったのか、一瞬、ガックリと肩を落としたが、すぐに思い直したように顔を上げた。


「……申し訳ないが、お姉さんたちの住所と連絡先を教えてもらえないだろうか?」


 彼は手で後頭部を軽く叩きながら、バツの悪そうな少し引きつった笑顔でそう宣った。


 私とまなみは顔を見合わせる。


 ……任務中にナンパとはいい度胸だ。

 ネットワークに潜む40億のいたりんファンの皆さん毎度おまたせしております。いかがだったでしょうか? モノガタリは急展開、新たな影の登場でいたりんたちにはこれからどうなるでしょうか?

 彼女たちの活躍にご期待ください。

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