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第7話 いたりん修行中

第7話 上げました。仁王寺で修行するいたりん。悪戦苦闘する彼女を応援ください。それでは……。

 …………静寂。


 本堂は何かしら懐かしいような緊張感に満たされしずまりかえっている。私はナゼか座禅を組み、瞑想している。


 私はテロリストを捕まえるため、捕捉術の手解きを住職にしてもらっていたはずなんだけど、どうしてこうなった……?


 座禅って、いったいなんの修行なのさ……? 早いところ、テロリストを捕まえたいのに……。


「喝っ!」


 あぅっ……。叩かれた……。どうして禅の修行を……。


「……まだまだ、修行が足らんようじゃのぉ、杏よ」


 眉間にシワを寄せ、腕を組み困ったような顔で私を見つめる。

 いやいや、肝心の捕捉術はどうなったのさ? 禅の修行するつもりはないんですが……。


「心を鍛え、常に平常心を保てなければ、捕捉術の行使はままならんぞ。見てみい、まなみちゃんを。見事に無我の境地に達しておるぞ」


 住職にそう言われ、かたわらの相棒を見るとそれはそれは見事なほど無我の境地に到達したまなみさんがいた。微動だにせず、漆黒の絹のような髪を巻き上げ、後でまとめたその姿は弥勒菩薩半跏思惟像みろくぼさつはんかしいぞうの如く、内側からにじみでる神々しさがあふれていた。私は一瞬息を呑む。五六億七〇〇〇万年後に衆生しゅじょうを救済するために現れるという仏が今ここに降臨した……?


 まなみさんが…………。解脱げだつしちゃった……?


 悟りの境地とかそういうものから世界で一番縁遠いと思っていた人が……。救済するから金よこせとか言いそうな人が……。


 なんか、悔しい……。スネてやる。


 昔から、まなみはそうだった。私が必死になってやっとできることをいとも簡単にやってみせる何てことがあった……何回も何回も。


 そんなとき、いつも悔しくて仕方なかった。まなみが羨ましくて仕方なかった。そして、いつも胸が痛んだ……チクチクと。


 そんな自分の心の狭さが嫌だった。そんな自分の不器用さが嫌だった。

 『――が嫌、――が嫌』――自分を嫌う気持ちがさらに私を責める。

 悔しい思いを抱きながら、彼女を見ていたら、ゆっくりと伏せた目を開けた。


「……あら、杏。どうかしたの? そんな顔して」


 まなみに心の内を悟られないようつくろった。

 ……こんな気持ち、彼女には悟られたくない。彼女にだけは……。


 心の内を悟られないようこれ以上無いぐらいの愛想笑いをしてちょっと気になったことをまなみに聞いてみた。


「まなみって、どこかのお寺で修行してた?」

「え? ……杏、大丈夫? あまり訳のわからないこと言わないの」


 まなみは、『信じられない。頭、大丈夫?』と言わんばかりの憐れみの目で私を見る。

 まなみ、お願いだからそんな目で見ないで……。せーじょーだから。


「だって、あんなに簡単に解脱するんだもん……」

「解脱? なんのこと? あぁ、あの瞑想状態のことね。理屈は簡単よ、杏。呼吸を調え、意識を一点に集中すると心拍数が安定してくるの。その状態を一定に保っていればα波がでるから、すぐに瞑想状態なれるわ。子供のころから、セルフコントロール術としてやらされてたからね……」


 ……恐るべし、まなみさんの隠されたスキル。また、私の知らないまなみさんが目の前に現れた気がする。


 ……スネてやる。


「杏もまなみちゃんを見習って、もう少し落ち着いたらいいんだがなぁ。子供のときから落ち着きなくて……」


 ……住職、言うに事欠いてなんということを。これでも今では立派な落ち着いたお・と・な、なの!


「……そんなことはさておいて、そろそろ本題に入りません? それほど時間もないことですし」

「おぉ、そうじゃの……」


 まなみに促され、住職がようやく本題に入る気になる。

 ……本当に、食えないタヌキおやじだな、住職は。


「……まぁ、この捕捉術はイタコでなければ完全に使いこなすことはできん。まなみちゃんには申し訳ないがの。ただ、無駄にはならん。訓練によって、イタコではなくともある程度は気配探知が可能になるんでな」

「……分かりました。やむを得ないですね、それは」


 などと、いつもながらまなみと住職で勝手に話が進んでゆく。いっつも置いてきぼりじゃない、私は! 


 ……今度こそ、本当にスネてやる!


「まずは、周囲の魔導素子の流れを感じるんじゃ。少しづつじゃが体全体で、そよ風のような感覚がわかるはずじゃ。まずはそこまでやってみぃ」

「分かりました」


 まなみは住職の指示通り、意識を集中すると同時に周囲に意識を拡散していく。


 それはいいけれど……。


 住職とまなみは全く私を置いてきぼりにしてどんどん話を進めていく。

 そんなにほったらかしにするなら本当にスネるぞ……? 泣いちゃうぞ……?


「ほれ杏、何をしている? お前も訓練せんか!」

「ほーい……」

「何をむくれておる、ちゃんとせい!」


 痛いっ! 本気で頭叩かないでよっ!

 住職に拳で頭を叩かれた。

 もぉ……。どうしてこうも扱いが違うのかしら? 


 頭に来た! 住職もまなみも見返してやるんだから! 何時までも、スネていてもなにも変わらない。


 やってやろうじゃない!


 まなみと同じように意識の集中と拡散を私も始めた。


 私とまなみは無言で、魔導素子の流れに意識を集中する。ほのかに光を帯び、薄い光のベールに包まれる。


 こうして、なし崩し的に始まった訓練第一日目は過ぎていった。


――――☆――――☆――――


「……どうじゃ? 何か感じたか?」


 住職が私たちに訓練の成果を尋ねる。子供が予防接種の時に『注射痛かった?』と聞くような表情で……。子供かい!


 訓練し始めて数日、感覚的には大きな違いは感じない……。これでいいんだろうか? 


「まだはっきりとした感覚ではないですが、少し魔導素子の流れのようなものが感じられます」

「そうか。その感覚大事にせいよ。さすがにまなみちゃんの仕上がりは早いようだな……」


 そういって、住職は私の方を腕を組みながら見る。しばらく私を見つめ、困ったような顔をする。


 ……あによ。そんな目で見ないでよ。どーせ、あたしゃおちこぼれの弟子ですよ……全く。


 そんな私の様子に住職は大きくため息をつく。そして首を左右に振りながら腕を組み、無言になった。


 私だって一生懸命しているだもん。サボってなんかないし。そう思いつつ、まなみの様子が気になり、彼女の方をちら見する。相変わらずそのたたずまいは何十年も修行し、解脱しかけている尼僧にも思える。


 どうしてこうも差ができる? 学生の頃から、まなみは何をやらせても私より上達が早かったな。

 ……負けてたまるか! こっちは本物のイタコだぞ。普通の魔導術士のまなみができることをイタコ魔導術士の私ができないでどうする。


 そういえば……。まなみが言ってたな。

 私はまなみの言葉を思い出す。


 ――呼吸を調え、意識を一点に集中すると心拍数が安定してくるの。その状態を一定に保っていればα波がでるから、すぐに瞑想状態なれるわ――


 よし、呼吸を調えて……。


 感覚でまなみの言葉通りにしてみた。徐々に私の中でエネルギーの様なモノが収斂してくる。

 なんだろう? 初めての感覚。

 ……頭の中で何かが弾けた。けど、すぐにいつもの状態に戻った。


 何か変わったのかな? よし、もう一度。


 私はさっきの感覚を忘れないように何度も、何度も瞑想状態に挑戦した。最初はごく短い時間だったが、回数を重ねるごとに瞑想状態の時間が伸びているような気がした。それとともにだんだんと自分という殻が溶けてなくなっていくような感じがした。自分と周りのものが融合し一連の流れを作り出しているのが感じられた。


 そしてついに……。


 私のまわりの魔導素子が……? 今まで感じていなかった魔導素子が感じられた。自由に動き回る魔導素子がうっすら見える! 


 ……これが? これがそうなのかな? 


 ふと、住職の方を見る。住職は何も言わず、こちらを見ている。目が合うと、少し表情が緩んだ。


 できたみたいだよー。


「……どうやら、できたみたいだな。かなり時間がかかったのう……」


 そう言うと住職は顔に幾つものシワを寄せ、私を見る。その目は安堵とも親愛ともいえない優しい目だった。まなみは相変わらず、瞑想状態のまま静かに座禅を組んでいる。


「ここまでくればあとひと息。流れる魔導素子の色を追ってみろ」


 私は住職の言う通り、周りを飛び交う魔導素子に意識を集中する。


 赤、青、黄色……。様々な色の魔導素子がただよい、光の奔流の中にたたずんでいる気がした。


 こんなにも魔導素子が漂っているんだ、ここは。さすがお寺だな。様々な人の思いを集めているんだな……。悲しみの色、苦しみの色……そんな色もこの光の奔流の中ではただのアクセントにすぎない。それさえもひとつの絵を構成する要素になっていた。


 あれ……? 顔に何か……?


 私は頬を伝う何かに気がついた。自分でも気が付かなかないうちに涙があふれていた。


「……どうやら、いいところまでいったらしいな」


 徐ろに住職は口を開く。私はどういうことかよくわからず、住職に質問する。これって何ですか?


「捕捉術を使うためには漂う魔導素子に込められた“思い”を全て同時に感じ取らなければならん。今、杏が感じているものがこの本堂の中に漂う魔導素子に込められた思いじゃよ。まぁ、本堂では葬式なんかが多いから、そっちの思いの割合が多いじゃろうがな。その思いが伝播して、体が反応したんじゃ」


 そうなんだ。悲しみの色、苦しみの色は近しい人との離別の色……ということなんだ。


「さて、そこまで出来たのなら、あとは慣れじゃな。テロリストどもの色はドス黒い悪意に満ちた色をしておる。見ればすぐに気づくはずじゃ……。杏、行って来い。今のお前なら見つけられるはずじゃ」


 はい! 頑張りまっす!


「まなみ、行きましょう! 悪意に満ちたロクデナシをとっ捕まえるよ!」


 そういって、まなみとテロリストをあぶりだすために街へ繰り出した。

 どうだったでしょうか? え? 話の展開が遅い? 

 ……。


 せーかーい。


 引き伸ばしというわけではないのですが、杏が主役らしくなかったので

強調してみました。結果、話の展開が遅くなっています。

 スミマセヌ…(*・ω・)*_ _))ペコリン


 とはいえ、暖かく長い目でこのモノガタリを見守り続けてただけると幸

いです。


 それでは、また次回まで


 (^_^)/~

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