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第20話 すろーす 4

 大変です、いたりんたちが絶体絶命の危機です。しかし、その攻撃を防ぐ存在が!

 お楽しみください

「危ないなぁ……きれいなおねーさんがそんな火遊びをしちゃ……」


 あれ? どこかで聞いたことのある声……しかも燃えてないし。助かった……のかな?


 閉じた目をゆっくりあける。目の前は煙が漂い、前がよく見えない。少しすると、煙の中に人影が見えた。そこにはかなり見慣れた背中があった。


「姐さん、杏さん大丈夫ですか?」


 彼はそこにいた。いつの間にか、私たちと蛇女との間に仁王立ちし、彼が蛇女の攻撃をしのいでいた。


「え……? 最上くんいつの間に? あれ?」

「考えるのは後! 杏、ヤツを止めるよ!」


 状況が全く分からないまま、まなみの声に従う私。

  

 まぁ、いいや。とにかく目の前の変態女を取り押さえないと。


 私は気を取り直し、蛇女に対峙する。


「一人増えたからと言って、どうと言うことはないわ!」


 蛇女は仕切り直し、こちらに攻撃をしかけてきた。


「いけませんねぇ。そんなに激しいとせっかくの美人が台無しですよぉ」

「……よくも、そんなことをぬけぬけと」


 蛇女は最上くんの軽口に、怒り心頭に発する様子が見て取れた。

 最上くんは余裕の様子で蛇女にむけて腕を伸ばし、人差し指をゆっくり左右に振っている。

 

「なめるなっ!」


 怒りにまかせ、蛇女が攻撃を開始した。最上くんは右に左に易々と蛇女の攻撃をかわし、炎撃で応戦する。蛇女は次第に防戦一方になってくる。その隙をまなみは見逃さなかった。


「そろそろ、乱痴気騒ぎもお開きねっ!」


 まなみは出力全開で蛇女を雷撃した。私も躊躇なく、氷撃し蛇女を氷漬けにした。


「ぐはぁ……」


 蛇女はついに力尽き、地べたへ這いつくばった。


「……やっと……終わった」


 ちょうど、すべてが終わったぐらいに警察が蛇女を取り囲み、逮捕した。


 とりあえず、ひと段落。あとは警察にお任せね。


 なんとか蛇女を取り押さえ、警察へ引き渡した私たちはお互い顔を見合わせ、お互いの健闘を称えあった。


 とりあえず、警察に蛇女を引き渡し一息ついたところで、いろいろ疑問がわいてきた。


「……ところで、なんで最上くんが?」


 一番気になったことを本人に聞いてみた。実際、最上くんにはお留守番を頼んで、何も言ってなかったから、普通に考えるとこの場にいるはずないんだけど……。


「いやぁ、実は姐さんから、メールで呼び出しくらいまして……」


 最上くんは苦笑いしながら頭をかいた。

 え? まなみが……? あ、あの時に……。

 

 どうやら、ハーブの店に入る前にメールを送って、呼び出しておいたようだ。まなみらしい手回しの良さ……さすが『ザ・できる女』……んでも、なんで最上くんの個人アドレスを? 

 私は知らないのに……


「取り敢えず、引き上げましょう。後は警察の仕事よ」


 まなみの一言に、私たちは事務所への帰途へ着いた。


――――☆――――☆――――


 事情聴取とお決まりの書類の提出に行っていた、まなみが警察から帰ってきた。


「おつかれさま。どうだった?」

「……ま、いつもながら、後味のいいものじゃないわね」


 彼女は鞄をおろしながら、応接間のソファーに深く座った。


「……ふぅ」


 一息ついて彼女はおもむろに語り始めた。


「どうも彼女、大戦孤児だった人の子供らしいの。結構、苦労したらしくてね。早くに親を亡くしてそれから一人で生きてきたみたいなの……」


 この国が巻き込まれた世界大戦、その時に多くの人が死んだって聞いたけど、そんな歴史にかかわりのある人がいたんだ。ちょっと驚き。そのせいで親がいないんだ……私と似たところはあるわね。ちょっと同情しちゃうかな? やったことは肯定できないけど。


「……それから職を転々としながら、何の偶然か、ハーブ関係の仕事をしている親代わりの人に出会ったらしいの。ただ……」

「ただ? 何? 何かあるの?」


 まなみが言いよどむので、思わず聞き返した。


「その時、ハーブのことを教えてもらったらしいんだけど、あわせて魔導術を教えてもらったらしいのよね。『君の今の境遇へ落とした元凶と戦う力だ。覚えておいて損はない』とかなんとか、そそのかされたらしいの」


 まぁ、なんとあからさまに怪しい……


「それで、そのそそのかした人ってどんな人なの?」

「うーん……そこがあいまいなのよねぇ……あの蛇女が庇っているのか、記憶操作されているのか、警察がそこを突っ込んでも、あいまいな話しかしないらしいの」


 さすがに、そうそう簡単には尻尾をつかませない……ってことか。ま、テロ組織ならそうかもね。


「数か月前、突然店をやってみないかって言われて、あの店を任されて今日にいたる……というのが事件までの経緯らしいわ」


 ……怪しさ満載で、どこから突っ込んでいいものやら。なるべくしてなるというか……まるで小説に書いたような経歴だわ。これではテロリストにならない可能性のほうが低いような……。


「ま、とりあえず警察に一任するしかないけどね、動機の解明なんて」


 まなみは言うべきことを言い終わったのか、さっさと話を切り上げた。


「とにかくあの女は、テロリストあるいは、その関係者に接触して行為に及んだということは間違いなさそうね。ただそれより問題なのはWADよ」

「そうね。あれが魔導術士以外に流出していることがもっと問題よねぇ……」


 そう、国家管理されているはずの代物がテロリストに流れてしまっていることが重大な問題。下手をすると、大規模魔導術テロの再演……なんてこともありうる。しかも、国家がテロリストに関係している恐れが出てきた。これはもう手の出しようがない。


 ここで、一介の魔導術士が悩んでも仕方のないことなんだけど、しかるべき人には相談するほうがよいかもね。公安の新巻さんか……あの人も大概胡散臭いからなぁ。一応、こっち側の人のようだけど、あの手の人は裏で何をしていることやら。


 ま、これから手を付けるということでいっか……。


 それより、目下の問題は……。


「……それより、まなみ、なんで最上くんの個人アドレスを知っているの? 雇用主である私でも知らないのに……」


 私はまなみを疑惑の目でにらんでみた。


 ……まなみ、あからさまに目をそむけないで。

 最上くんもこそこそ立ち去ろうとしないで。


「二人とも納得のいく説明をしてよ」

「……」

「……」


 何二人とも黙っているのヨ……何かやましいことでもやっているの?


「……とっ、特にやましいことはしていないわ。してないわよっ……シテナイデスヨ」

「……そっ、そうそう、やましいことなんて……シテナイデスヨ」


 二人とも何をごまかそうと……セリフを合わせてんのよ。

 そういう主張をしたいのなら、せめてこっちの顔をみて話してよね……二人ともしっかり目が泳いでいるし……まなみ、どこのツンデレですか、アナタは。

 最上くんも棒読みなセリフで説得しようと思っているんですか?


「……ま、いいわ。あまり影でこそこそしないでね、心配になるから」


 二人とも首がもげるかと思うぐらいうなづいている。

 ……仲がおよろしいことで。まったく。

 ちょっと、妬けるわね……

 スネてやる……


 ……


 ま、平和だからいいけどね。このまま、この状態が続くといいんだけど……。


 私は未だにギクシャク言い訳をしようと、あたふたしている二人を後目に窓の外をみた。窓の外は暗雲が立ち込め、嵐になりそうだった。

 いかがだったでしょうか? テロリストと国家との関係が浮上してきました。いよいよ物語は佳境に入ります。

 怪しいといえば、まなみと最上の関係もとんでもなく怪しくなってきました。こちらもどうなることやら……。

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