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第15話 えんびぃ 1

 またもや事件です! いたりんが苦手な事務仕事でスネていた時、警察からテロリストからの犯行予告が舞い込む。いたりんたちが捜査をすることになるが……


どうなりますことやら


お読みください。

 はぁ……。今日も今日とて、退屈なお仕事に勤しむのね……。何がかなしゅーて、こんな紙っ切れとにらめっこせにゃぁ……。なんだかわからない数字が羅列られつして、目の前を通り過ぎていいく……。あぁ

……意識が……おとうさま、おかあさま、杏はもうすぐそちらへまいりま……。


 …………。


 いったぁーい!


 何よ、まなみ! 頭、叩かなくてもいいじゃない! スネるぞ!


「……まじめにやんなさい。彼を見なさいよ。ちゃんとやってるでしょ……」


 そうまなみ言われ、最上くんをふと見ると機械のようにてきぱきと書類を処理していた。どこかの産業用ロボットのような動きは一縷いちるのムダもなかった。そんな彼の姿に何故か恥ずかしいやら、申し訳ないやらよくわからないけれど、いやーな気分になった。


 もしかして、私が怠け者だから……?

 ……どーせ、あたしゃ怠け者だわよ、えーえー、悪うござんした。今度こそ本当にスネてやるんだから! ……スネるぞ……本当にスネるぞ……スネちゃうんだから……知らないぞ……おーい……まなみさん?


 まなみさんは私を放置プレイときたもんだ……。


 まなみは最上くんと和気藹々(わきあいあい)とお仕事を片付けていた。その姿は私といる時とは見せないようなハツラツとした姿で、ザ・デキる女の雰囲気が醸し出されていた。


 ……親友をほったらかして。新入りさんとヨロシクするんだ。しかも年下の……。ツバメを囲って逆・光源氏計画と来たもんだ。……いいよーだ。そっちがヨロシクするならしたらいいさ、えーえー、どうせあたしゃ怠け者のダメ女だわよ。えーえー、悪ぅーござんした。


 親友を取られたようなそんな喪失感を感じる……やだ、私嫉妬してる? そんなことないぞ! きっと……たぶん……おそらく……そうであってほしいな……っと。でないと……スネるぞ。


 私が意味不明なスネ方をしていると、一本の電話が事務所へかかってきた。


「はい、いたりん魔導術師事務所……お世話になります……分かりました、お伺いします」


 何の電話だろう? まなみの目が光ったような。


「杏、例のテロリストから犯行声明らしいわ。警察へ行くわよ」


 よしきた! 国家魔導術士いたりん出動しまっす! 


 私はモヤモヤした気持ちを吹っ切るように事務所を飛び出した。


――――☆――――☆――――


 警察についた私たちは担当の刑事さんに話を聞くことにした。


「……奴ら、なりを潜めていたがついに動き出したらしい。ただ、奴らが何をしようとしているのかが皆目見当がつかん。そういうわけで、内偵捜査をお願いしたい。我々としてもそれほど今の状態では動けるわけではないのでね」


 ……それって、おもいっきり丸投げじゃん。良いのかな? 警察業務を民間委託(丸投げ)するってどうよ……。 


「分かりました。それで、依頼内容は内偵捜査だけでよろしいのですか?」


 をっとお仕事を忘れていた。余計なことを考えていた。ナイス、まなみ。


「一応はな……。ただし、不測の事態になった時はそちらの責任で対処してもらって一向に差し支えない」

「不測の事態とは? 魔導術行使も構わないと?」

「不測の事態は文字通りの事態のことだ。それ以外なかろう。積極的に魔導術を行使しろとは言わんが、やむを得ない事態になったらそういうことも黙認する可能性があると言っている。元々、法律で認められとるだろう、術の行使は。法律の範囲内ならば我々が関知するところではない」


 ……どうも警察はこのテロ事件に関して消極的だな。捜査を民間委託するわ、万が一の時の責任をこちらに押し付けるわ、言外に一切関知しない感が半端ない。冗談抜きにケーサツはこのテロ事案に関知するつもりないんじゃない?


「……ま、術の行使に関しては法律の範囲内ということで了解しました。それで肝心の犯行予告は?」


 一向に埒の明かない話を切り、テロリストの犯行声明を確認する。担当刑事から犯行予告状を受け取り確認する。


『我々は魔導術の不当性を訴えるために行動を起こした。魔導術によって人々の絆が破壊されることを実証する。これに伴う損害等は魔導術を行使するものに帰結する。願わくば、この国の人民がいち早く魔導術の不当性を理解し、この不自然な業を葬ることを期待する』 


 ナンノコッチャ……? 何が言いたいのかわからない。


「それで、何か破壊活動があったのですか?」


「それとわかる事案は今のところない状態でな……。それを捜すところからやってもらう」


 へ? と言うことは全くのはなから捜査しろってこと……? 本当にこの事案は全て民間委託(丸投げ)なんだな……。ヤル気無いなあ……。何のための警察なんだろ? まぁ、おかげさんで稼げるけどさ。


 まなみさん、そんなに拳を握らなくても……。気持ちはわかるわ。こんないいかげんな依頼ないもんね。とはいっても依頼は依頼、頑張りましょ。


――――☆――――☆――――


「……本当にいい加減な依頼だったわね。警察はヤル気あんのかしら、全く! 何から何まで丸投げじゃない!」


 まなみさんが珍しく憤慨している。事務所に帰ったとたん、爆発した。気持ちはよーく分かる。あれだけ丸投げされて、ケーサツは一切関知しない、それと万が一の時の責任は取ってね……って言われて面白いハズがない。


「そうは言っても、これで稼げるんですからあんまり文句は言えないですね」


 最上くんの一言にまなみが頭を抱える。確かにその通りなんだけどねぇ……。民間企業の悲しさか……。世知辛い浮世の習いとはいえ、身にしみるねぇ……。


 などと浮世の無情に浸っているとふいに事務所の扉が開く。


「いたりん魔導術士事務所へようこそ。どのようなご用件ですか?」


 相変わらず、営業スキルの高いまなみさんだな……。


 先ほどの鬱憤はどこへやら、まなみは突然の訪問者を持ち前の営業スキルで丁重に招き入れた。訪問者は十代だろうか、まだまだ幼さの残る女学生と言った感じの子だった。


「……助けて欲しいんです。友人がおかしくなってどうしようもないんです……。このままだと、喧嘩別れするかもしれないぐらいひどい状況なんです。なんとか助けてください!」


 魔導術士に相談するような内容ではないなぁ……。人間関係の相談ならそれ専門のカウンセラーに振ったほうがいいなぁ……。丁重にお断りしようかな、関係なさそうだし。差し当たって食い扶持も確保しているし、面倒なことに手を出さなくてもなぁ……。


 などと結構不謹慎なことを考えつつ、話を聞くことにした。


「まぁまぁ、落ち着いてはじめから順に説明してくれない?話はそこからいきましょう」


 と大人なまなみさんが彼女をなだめつつ話を聞き出す。まなみさんがなだめると大粒の涙を流しつつとつとつと話し始めた。彼女の話によるとこうだった。数日前、問題の友人と街を歩いていると、さる占い屋の呼び込みに捕まった。面白そうだったので、その占い屋へ連れ立っていったらしい。その友人が先に占いをしてもらい自分も占ってもらった。なんてことないよくある占い屋だったが、そこを訪れてから友人の人格が大きく変化したとのことだった。


「……それで、あなたの友人はどんなふうに人が変わったの?」

「なんていうか、とにかく嫉妬深く疑い深くなったんです。あたしが何を言っても、疑いの目を向けて全然しんじてくれないんです。それでいて他の友人とちょっと話したりするだけでものすごいヤキモチを焼くんです。もう私どうしたらいいか分からなくて……」


 なるほど……。それは藁にもすがる気持ちなるわね。わかる。わかるけど……。なんでウチなの?


「なるほど、それはさぞ辛かったでしょう。それでなぜうちに?」

「色んな所に連絡して相談したんですが、今ひとつ親身になってくれなくて。それにその占い屋に『魔導術であなたのお悩み解決!』と書いてあったので、ここなら何かわかるかと……」


 なにっ…?! 魔導術で占い? そんなことは魔導術ではやらないし、第一人生相談に魔導術は使えないし。魔導術は人の意志を魔導素子に働きかけ、思いのままに操る業。人の未来を占ったりすることはできない。違法術行使もしくは魔導術を語った詐欺か……? どっちにしてもこれは放置できなくなってきたな……。


 私はまなみに目配せしてとりあえず、引き受けることに同意する。


「そういうことでしたら、少しウチでも調べないといけないですね。少し手間がかかるかもしれないですがそれでよろしければ……」

「ありがとうございますっ! わたし、ここで断られたらどうしようかと……良かった……うぅっ……本当に良かった……」


 うら若き依頼人はまた泣きだした。よほど悩んでいたんだろうなぁ。おねーさんがんばるよ。


 とりあえずその占い屋の住所を聞き出し、その少女の連絡先等を聞いて一旦帰ってもらった。その後姿は今まで悩んでいた疲労とそれから開放されるかもしれない希望の両方を背負い込み、疲れてはいたがしっかりとしたものだった。


「……さて。何か引っかからない?」


 え? 何でしょう、まなみさん? 何か気がついたことでも……?


「このタイミングで魔導術を騙る詐欺まがいの行為……なんとなく臭うんだけどなぁ」


 というと……もしかして?


「今はまだ確証はないわ。でもきっと奴らと関係がありそうよ」


 まなみはそう言って、眼光鋭く窓の外を見た。


 しかし、こうも向こうから都合良く現れるなんて……。なんてヤッ○ーマン的な展開……。

 ま、考えても仕方がない。ケーサツからの依頼と同時に解決できるならこんなに美味しいことはないわね……。


 しかし。なんだか仕組まれたように展開していく事態にめまいを感じる。私の知らないところで運命の歯車のようなものに操られているようなそんな感覚……そんな大きな力に流されつつある自分に恐怖した。


 それでもやらなきゃ! それが私のお・し・ご・となの!

 なんだか、目に見えない力に操られるようないたりんたち。これからどんな事件に翻弄されるのか!?


 ご期待ください。


 応援メッセージ等絶賛募集中です。読者のみなさまお待ちしております。

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