不思議な気持ち
17.
ど、ど、どどど、どうしよう・・・。
自分でも感じる、いつもの私じゃないことを。
どうしてこんなに動揺してるのかしら。
理由はハッキリとはわからない。
とにかくこのざわめきを静めないと。
そうだ。
こんな時はお味噌汁を数えれば、気持ちを落ち着けるとおばあちゃんが言っていたわ。
ためしにやってみようかしら。
ブツブツ・・・。
味噌汁が1つ~味噌汁が2つ~味噌汁が3つ~味噌汁が・・・って落ち着けるわけないじゃないのっ!
何気に今日の具何入れようか、少し考えちゃったじゃないの!
あと心なしか味噌臭いわ・・・。
おばあちゃんには後で説教ね。
「ちかげ」
ドキッ!
あわわわわ、たたたたたけるぅ?
「なんて声出しとるんだお前は」
だってだって、しょうがないじゃないの。
私だって何起こってるかわからないんだから!
もう、さとみのバカバカ。
これじゃあ作戦失敗じゃないの!
「映画も見終わったし、次どこ行くよ? ちかげ」
もうまともに返答なんてしてらんないわ。
ピリリ、ピリリ・・。
あー、もう何よこんな時に!
「あ、もしもし? ちかげー?」
何やら、にやけた顔でもしてそうな声で話しかけるのは、さとみだ。
「どうやら、うまく行ったようね・・・プププ・・・(笑)」
あれ、なんか私笑われてないかしら?
「もう、さとみったら! 私今大変なんだからね!」
「ええ、そりゃあもう大変そうね」
「他人事みたいに言わないでよもう」
さとみったら私をいじめたいだけなのかしら。
「作戦成功よ」
え? 今なんて?
「ちかげやるじゃないの!」
頭の上に羊が何匹も浮いて巡回している。
はて? 何を成功させたのかしら。
「もう、ちかげったら隅に置けないんだから~。このこの」
さとみの声はそれはそれは喜んでいるように聞こえるのだけれど、私にはさっぱりわからない。
「なーにーとぼけちゃってぇ。たけるくんと手つなげたじゃない★」
ななな、なぜそれを!
さとみ映画館にいたの!?
「いるわけないじゃないの。お二人の邪魔なんてできないしねー」
しかしさとみはなぜここまで詳細を知っているのだろうか、恐ろしい子ね。
なにはともあれ、さとみが計画していた内容がうまく実行できていたようである。
ホッとしたような、そうでもないような。
(たけるの手、男の子だったなぁ・・・)
終始ポーッとしながら、映画館から出た後の街並みを、私はずっと眺めていた。
18.
「ちかげ、ジュース買ってきてくれよ」
あれから少し気持ちが静まった私は、たけるに頼まれジュースを買いに行くことにした。
えーと、たけるはたしかコーヒーだったわよね。
コインを入れてボタンを押す。
あれ? あれ? 出てこないわねぇ。
よく見たらコーヒーは130円だった。
そりゃあ120円しか入れてないし、出てくるわけないわね。
私が住んでる町は、高くても120円までのはずなのに。
あぁ、増税したんだったわね。
消費税がついにベールを脱いだってとこかしら。
それにしても、映画を観る前は、どこの自販機も120円だったのに、おかしいわねぇ・・・。
この2時間弱の間に一体何があったのかしら。
しかしそんなことは気にしない。
たけるのコーヒーを買い、私はジャスミンティーを買う。
「たけるおまたせー」
たけるはコーヒーを受け取る。
「ありがとな、ちかげ」
さてはて。
映画も見終わって、ノルマ(?)も達成して、この後一体どうしたらいいのかしら?
時間はまだお昼をちょっとすぎたくらいである。
ご飯はさっき軽くファーストフード食べたし、お腹すいてないわねぇ・・・。
行き先が頭の中で右往左往している。
「ちかげ」
「なぁに、たける」
たけるも行先を気にしているのだろうか。
不安になってきたわ。
「これからどこ行くよ?」
やっぱり・・・。
それが思いつけば苦労しないんだけどね・・・。
肝心な時にさとみから連絡も来ないし、どうしたらいいのかしら。
「ちかげ、俺行きたい所あるんだけど」
え、今なんて?
「ちょっとさ、お前とじゃなきゃ行けない所なんだ。付いてきてくれるかな」
たけるは少し恥ずかしそうだ。
一体どこに連れてってくれるのかしら。
「お前とじゃなきゃ・・・行けないところなんだっ!(脳内リピート)」
!?
わわわ、私とじゃないと行けないところぉ!? どこよ、それ一体どこよ!
「ま、とりあえず付いてきてくれ」
たけるは私の手を取ると、目的地へ向かって走り出した。




