さとみ考案の
7.
う、ううん。
どのくらい意識を失っていただろうか。
目が覚めた私は、フカフカの白いベッドの上で横になっていた。
「保健室か・・・」
大事になってはいないだろうかが少し心配だった。
大丈夫かな?
「ちかげ!」
ドアの向こうから男の子の声がする。
きっとたけるだわ。
ガラガラと大きな音を立てて、入り込んでくるたけるがそこにいた。
たけるは、私の顔を見るとホッと胸を撫で下ろしていた。
「良かった・・・。ちかげ、随分顔色よくなったじゃないか」
そんなに顔色悪かったのかしら? まぁ、あれだけ頭が痛かったから、顔色ぐらい悪くなるのかもしれない。
「ありがとう、たける、心配してくれて」
不謹慎かもしれないけど、こんなに気にかけてもらえるのって、初めてだわ、嬉しい。
「べ、別に心配なんてしてねぇよ」
たけるはなぜか焦った様子だけど、多分心配してくれてる・・・はず。
「とりあえず、しばらく安静にしとけよな! 保健の先生にも病状聞いたら、病院に行くほどじゃないって言ってたし」
そっかぁ、大したことなくて良かった。
たけるはこの後授業に戻ると言って、保健室を後にした。
ちょっと寂しいけど、まぁもう少し体調が安定するまで、ゆっくりしなくちゃね。
たけるにも迷惑かかっちゃうしね☆
8.
保健室に運ばれた日から3日間が経った。
あの頭痛は、こつ然と姿を消していた。
あれだけ激しい頭痛だったのに、やっぱり疲れてただけなのかしら?
だけど気になる。
あの頭痛が来るたびに、懐かしい気持ちになること。
それだけがまだ何一つ解明できてないのだ。
だけど3日間頭痛がなかった私はそんなことすっかり忘れて、日々の生活を送っていた。
もう、周りの人も何も気にかけていないくらいだった。
「たける!」
私はお昼ご飯たけると一緒に食べる大作戦を決行することにした。
な、なんでお昼食べるだけで『大作戦』扱いなのかしらねぇ。
たけるがもっと私の気持ちをわかってくれればねぇ・・・。
ってまぁ、文句言ってもしょうがないわ。
とりあえず前進あるのみよ☆
たけるは席に座って、昼の準備をしていた。
「おう、なんだ? ちかげ?」
いつもの笑顔で返答するたける。
「私と一緒にご飯食べるわよ☆」
「えぇ~、今日は俺ちょっとこれから購買部にパン買いに行くから、一人でのんびり食べる予定なんだよなぁ」
「一 緒 に 食 べ る わ よ★」
たけるは、机にしがみついて、怖がっている。
ちょっとやりすぎたかしら?
いやいや、これくらいしないと、たける説得できないし、これでよし!
「わ、わかったよちかげ。とりあえず一緒に食べるから、購買部のパン買ってこさせてくれ」
「そのまま逃げないわよね?」
「ギクッ」
図星か・・・。
「もう、ギクッって何よ! ギクッて! そんな擬音語出してる間にさっさとパン買ってくる!(強制)」
「ヒ、ヒィ~」
慌てた様子で、たけるは教室を飛び出した。
まったく失礼しちゃうわ。
たけるが来るまで、さとみとおしゃべりしてようかしら。
予定通りさとみと談笑していると、たけるが戻ってきた。
「あら、おかえり、たける☆」
たけるは息を荒げてる。
「ハァ、ハァ、ったくお前は強引なんだから・・・。ほらダッシュで買ってきたぜ?」
「うむ、ご苦労」
疲れている様子のたけるを席に誘って、弁当の準備をする。
そうしていると、たけるの持ってるパンに目が行く。
なにかしらあの不気味な物体は。
「たける」
たけるの持ってるパンについて聞く。
「それなんなの?」
「ん? あぁこのパンのことか」
なにやら、そのパンにはしいたけが入っているようだ。
「これはな、『味噌しいたけパン』って言ってな、この学校じゃ人気ワーストNo.1のパンなんだ」
味噌しいたけパン? 聞くからにまずそうな組み合わせね。
「それおいしいの?」
たけるに質問する。
「んまぁ、人気ワーストなくらいだから、正直あまり美味しくはない。だけど一部のファンからは、かなり人気のある代物だそうだ」
「へぇ、そうなんだぁ」
あのパンがねぇ・・・。一体誰が気に入るのかしら?
そんな人がいたら、一度お会いしてみたいくらいだわ。
「ま、今のところ俺の知り合いでは、このパンを好きっていうやつはいないけどな」
まぁ、そりゃあそうよねぇ。納得。
「そうだたける、私にそのパン一口だけ、ちょうだい☆」
可愛らしくちょーだいのポーズをする私。
フフ、これでたけるもメロメロ・・・。
「あぁ、いいよ。でも俺の今日の飯なんだからな。あんまり大きく食べるなよ?」
あれ? なんか普通の会話だわ。
少しくらい動揺してほしいかなぁ~なんて思ってたんだけど・・・ハァ。
とりあえず貰っておこう。
私はその物体を口に含んだ。
「・・・」
「どうだちかげ、うまいか?」
うっ、こ、こんなの好きな人がいるの!?
ちょっとアブノーマルすぎる味よねぇ、これ。
もし、これを大好きという人がいたら、間違いなくその人は味覚がおかしいわ。
もしくは性格も何もかもおかしいわ。
「そこまでマズそうな顔しなくても」
たけるは私からパンを取り戻す。
「ご、ごめんね。あまりにも美味しくなかったもので」
私は続ける。
「まぁ、これを食べる人は相当変わり者ね。それだけは間違いない、間違いないわ!」
せっかくもらったパンにいちゃもんつけるのも性に合わないけど、本当にそれくらい不味かったから、いいわよね?
「ったく、そのパンを好きな人の前で絶対言うなよ? さっきも言ったけど、一部では大人気なんだから。まぁ知り合いいないからいいけどさ」
「もちろんよ、知り合いにいたら、それなりに代弁していくつもりよ☆ そこはちかげちゃんに任せなさい☆」
とは言ったものの代弁できるかどうかも怪しい味なので、今のは嘘になるかも。
味噌しいたけパンファンクラブの方、本当にごめんなさい。(そんなクラブはない)
たけると楽しい時間(?)を過ごした私は、昼休みがまだ少し残っていたので、さとみと授業が始まるまで、おしゃべりすることにした。
「ちかげ~、旦那とのお食事は楽しかった?」
と冷やかすさとみ。
「うん、まぁそれなりにうまくいったわ」
本当にそれなりだし・・・。
「ちかげ、これは提案なんだけど」
さとみが思い切った事を言う。
「明日さぁ、たけるくんデートに誘っちゃいなよ!」
でーと?
えぇ、えぇー!!
突然の事に頭が混乱する。
「このまま学園内でアプローチしたって、進展しないわよ? やっぱり外に出て、スリルとホラーを体験しなきゃ!」
スリルはわかるけど、ホラーって・・・。
「まぁ、要は、二人で困難に立ち向かうの! そうすれば自然に、より自然に、愛が育まれるはずよ」
「そ、そんなこと言ったってぇ、恥ずかしいよ~」
さとみは私の背中をちょっと強めに叩く。
「なーに言ってんのよ。ちかげの性格なら押しに押して行く感じでいいわよ。いつもあなたやってるじゃないの」
え、私そんな強引だったかしら?
もしかして、たけるから引かれてるのって・・・それ?
「もちろん、時にしおらしくも大事よ。強引=+(プラス)しおらしく=-(マイナス)この計算式をうまく、プラスマイナスゼロに持ってくのよ! そうすれば、たけるくんなんて・・・いや、世の男子はイチコロよ」
さ、さとみ?
さとみってこんなに恋愛に流暢だったかしら?
何でこんなこと知っているんだろう。
まぁ、いいわ。
とりあえず、たけるが振り向いてくれるのだったら、素直にさとみの言う通りにしてみようかしら。
「わかったわ、さとみ。とりあえずその詳細を教えてちょーだい」
「わかったわ、任せときなさいって! ウシシ・・・」
今変な笑いが聞こえたような気がするけど、気のせいよね。
そんなこんなで、さとみ考案、『たける&ちかげデート大作戦』が実行されようとしていた。




