大事な話
19.
「ついたぞ、ちかげ」
息を荒げる私を見ながらたけるは言った。
もう、足速いわよたける。
「まぁとりあえず見てくれよ」
そこは恋愛学園を筆頭に街が一望できる丘の上だった。
「きれい・・・」
夕日に照らされるその風景に、私は感嘆の声を漏らしていた。
こんなにキレイな景色があったなんて、今まで知らなかった。
「なに言ってんだよちかげ。ここは小さいころよく遊びに来てただろ?」
え? 小さいころ?
そういえばどこか懐かしい雰囲気のある街並みではあった。
小学生以来来てなかったもので、すっかり忘れてしまっていたわ。
でもどうしてたけるはここに私を連れてきたのかしら。
「ちかげ、話があるんだ」
「え、話って?」
たけるはせわしなく目線を泳がせている。
「あのな、ちかげ」
私はたけるの言葉を待った。
「俺はちかげのことが好きだ」
風が一瞬ピタリと止んだかのように思えた。
状況がうまく把握できていない。
え、たけるが私に・・・?
「今日ここに連れてきたのも、それが言いたかったんだ」
え? え?
胸の奥からこみ上げてくる想いが、無意識に涙となって私の目から流れていた。
「いつもないがしろにしててごめんな。本当はお前から毎年チョコもらうの嬉しかったんだ」
嬉しい。
嬉しいはずなのに、頭が混乱してハッキリとした感情がわからない。
「だからな、ちかげ」
たけるは真面目な顔になった。
「俺と付き合ってくれ」
突然のたけるの告白に私は戸惑った。
え、うそでしょ? 信じられない。
確かにたけるに好きになってもらうために、私は努力をしてきたけれど。
こんなに早く想いが伝わるなんて・・・。
でも嬉しい。
嬉しすぎて、何も言葉が出てこない。
アハハ・・・いつものテンション保てないわ。
それにしたっておかしい。
時間を置いて少し冷静になった私は、考えた。
いや、なぜ考えているのだろう。
素直に喜んでいればそれでいいはずなのに。
たけるが私のことを好きって言ってくれたのに。
この違和感は何なのかしら・・・。
「うっ・・・」
そう考えたとき、私は激しい頭痛に襲われた。
痛い、痛いッ。
「おい、どうした! ちかげ!」
たけるが私を心配してくれている。
アハハ・・・嬉しい・・・。
すでに視界はぼんやりとしていて、たけるの声だけが私の耳に響いていた。
え、私どうなっちゃうの・・・?
やだよ、やだよ。
せっかくたけると仲良くなれたのに。
恋人になれるのに。
頭痛は激しさを増す。
「なんなんだよ! どうしてちかげが急に倒れるんだよ!」
たけるは悲痛の声を上げている。
「ちかげーーーーーーー!」
たけるが私の名前を呼んだのを最後に、私は完全に意識を失った。




