ちかげ参上!
『ちかげ FOREVER』
1.
寒々しい風が、木枯らしと共に季節を伝えに来た頃、私には毎年準備しているものがある。
心のこもった、甘いあまーい贈り物。
想いを伝える、甘いあまーい贈り物。
けれど、その想いは中々叶わないなぁ。
何がいけないんだろう?
何がいけないんだろう?
あまりにも分からなさすぎて、2回も言っちゃうよ。
フフッ、でもいいの。
毎年毎年が勝負なんだから。
今年こそ絶対に、振り向かせてやるんだから☆
待ってなさいよ☆
2.
紹介が遅れたわ。
私は『ちかげ』っていう可愛い名前の女の子。
いつも元気ハツラツで、ビタミンCたっぷりで、ピチピチお肌の今どきの女子高生。
部活? 部活は特に入ってないわ。
だって、もし部活に入って大会に出るようになったら、その分時間が削られるでしょう?
私は絶対に嫌!
彼に会えなくなるのは嫌なの!
彼? あぁ、一人走りでごめんなさい。
ここでいう『彼』は、私の幼馴染の『たける』のことなの。
いつも優しくて、優しくて・・・。
最近は優しくないわね・・・。
まったく、どう紹介したらいいのかしら。
ともかく、私が小さいころに手を差し伸べてくれた、初めての男の子ってことだけ、伝えておこうかな☆
それ以来、私はたけるに夢中なの。
「そう、私は恋を夢見る女の子~♪」
バシッ!
瞬間、後ろからスリッパのような物で叩かれた。
「なんだちかげ、そのモノローグは? お前そんなキャラじゃねえだろ!」
後ろから叩いた主は、たけるだった。
「え~、いいじゃないの~。ていうか、私の内面見えちゃってるわけ!? どうして!?」
私の内面がたけるに見られてしまったのだろうか。不安になる。
「あのなぁ、これから作品の説明に入るんだろ? さっき言ったじゃねえか」
辺りを見回すと、何やら舞台の上に立っている。後ろには赤い幕が、触れる度に大きく揺れている。
「はっ!? そうだった、ごめーんたけるー」
フフッ、鼻にかかった甘い声攻撃よ、これでたけるもメロメロね。
「へ、変な声出すんじゃない! 本題に入るぞ、まったく」
ガーン。
ったく少しくらい動揺してくれたっていいのに・・・。
「とりあえず俺から説明するとだな、これから紡ぐ物語は、前作『一週間のバレンタインデー』のパラレルワールドなんだ」
「パラレルワールド?」
「そうだ、ちかげ」
たけるは自信ありげに答える。
「歴史っていうのは、いくつもの平行世界で出来ているっていう説があってだな・・・」
「たける」
「なんだちかげ?」
「何言ってるかわからない」
「・・・」
たけるは、ため息をつく。
「なぜこいつをパートナーに選んでしまったのだろうか・・・ブツブツ」
「コラーーーー!!」
ドスの効いたキレイな声が聞こえる。
「さっさと始めろやゴルァーー!!」
大きな声で叫んでいるのはちとせさんだ。
「わ、わかった。わかったからちとせ。そ、それじゃあ、レッツタイムスリップだな!」
「いけいけー!」
「お、おー!」
何がなんだか分からぬまま、私も賛成して3人で大きく手を挙げていた。
世界が歪む。
「「さぁ、戻ろう! 1週間前へ!」」
視界が真っ白になる。
体もなんかグニャグニャしてて気持ち悪い。
瞬間私は、いつもの学校の通学路で、カバンを持って一人佇んでいた。
3.
うぅ、頭がすごく痛い。
さっきまで、私何してたんだよぉ一体。
なんか痛みと同時に、重要なことを忘れてしまったような気がする。
まったくこの年で、若年性アルツハイマーかしら?
あぁ、恐ろしや恐ろしや。
あれ、なんだろう? 前方から男の子が走ってくる。
「ういす、ちかげ」
たけるだ。
「どうしたんだ? なんか頭抱えちゃって。痛いのか?」
私はあまりの痛みに、頭をずっと押さえていたようだ。
「ええ、大丈夫よたける。心配してくれてありがと」
たけるはなんかこっち向いてくれない。
「べべべ、別に心配なんてしてねえよ! ちかげはいつも元気が取り柄の、バカ娘なんだからなっ」
イラッ。
「お、おいちかげ怒るなって、俺が悪かったから」
・・・。
なんかたけるが、いつも以上に優しいわね。
何かしら、このとてつもない違和感は。
「いいわ、別に怒ってないから。ほら、頭痛も少し和らいできたし、さっさと学校へ行くわよ」
たけるはまだ慌てた様子だ。
「おおお、おう!」
理由もわからぬまま、私たち二人は、一緒に登校することになった。
そういえば、そろそろバレンタインデーかぁ。
今年どうしようかなぁ・・・。




