てるてる坊主はつらいよ
ザーザー
「てるてるぼうずさん あした はれにしてください」
パン パン ペコリ
みっちゃんは僕にお願いをした。もうこれで十回目だ。
明日はみっちゃんが楽しみにしている遠足の日。すでに準備が整っているみっちゃんの小さなリュックサックは鼻歌を歌っている。
ザーザー
でも外は見ての通り雨が降っている。時折、雷鳴も聞こえてくる。止む気配は、ない。
僕を作ってくれたみっちゃんのためにも、なんとかして晴れにしたい。みっちゃんが描いてくれた僕の顔は、キリッとつり上がった眉、ニヤッとした口、いかにも晴れにする気満々な顔をしている。
だけど当然、僕に雨雲を吹き飛ばす力などない。
ザーザー
「みっちゃん、もう寝なさい」
「おかあさん あした はれる?」
みっちゃんは、お母さんの服の裾をぶんぶん振った。
「そうねぇ、みっちゃんがいい子にしてたら、てるてる坊主さんが晴れにしてくれるわよ」
「ほんと?」
「ええ、本当よ。だからもう寝ましょ」
「うん!」
みっちゃんは素直にお母さんと寝室へ向かった。
ピカッ ゴロロロ
これは大変だ。もしこれで明日雨だったら、みっちゃんはいい子じゃないことになる。
僕は知っている。みっちゃんはいい子だ。
家に帰って来たらちゃんと、手洗い、うがいをするし、好き嫌いなく、ごはんを残さず食べる子だ。僕の頭に赤いマジックでリボンも描いてくれた。
みっちゃんはいい子だ。
これはなにがなんでも晴れにしなくては。でもどうやって?
あぁ、手があったら頭を掻きむしりたい。
ザーザー
どうやら、僕にできることはこれぐらいしかない。
神様、どうか明日は晴れにしてください