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序章

 神根島(かみねじま)は太平洋に浮かぶ島である。

 神根島の真ん中には大きな山がある。その山の中腹には一本の大きな桜の木がある。

 春分の日、秋分の日にそこから日の出を見ると太陽、町の中心、この大きな桜の木が一直線上に並ぶ。

 そのことを知る島民はあまりいない。


◇    ◇    ◇


 午前三時過ぎ、真夜中と形容するに値する時刻に島の真ん中の山に向かって町の中心部から歩く二つの人影があった。

 両方とも小学校高学年あたりの背格好だ。

 先を歩いてるのは男の子らしい。春分の日で冬を抜け出して暖かくなってはいても真夜中なので、時折吹く風は冷たさを感じさせる季節だというのに半袖半ズボンである。今年は比較的暖かくが見ているほうが寒さを感じるほどである。

 対して男の子の少し後ろを歩いているのは女の子のようだ。こちらは厚着ではあるが本人にしては寒いらしい。体を小さくして、時折体を震わせている。

 さすがに我慢しきれなくなったのだろうか女の子が口を開いた。

「恭介くん、寒いよ~、帰ろうよ~」

 恭介くんと呼ばれた少年は女の子の二十メートルほど先、山の入り口にいた。

「あとちょっとだからさ、少しだけ我慢して」

前を向きなおした男の子は、山を登っていく。

 話している間に距離を縮めていた女の子はなんとか男の子の隣に並んだ。

 五分ほど歩き続けて着いたのは見晴らしのいい平らな平地に出た。

 そこにあるのは一本の桜の木。

 八分咲きほどだが満開寸前といったところだろうか。

「木登りできる?」

「少しなら・・・」

 男の子の問いかけに自信なさげに女の子が答えた。

「登るって言っても、三メートルくらいだし僕も手伝うから大丈夫だよ」

 男の子はそう言うと桜の木に手をかけて登り始めた。

 女の子も後に続く。男の子が登りやすい位置を選んで登り始めていたのか、女の子もするすると登っていく。

 できるだけ高く登り、できるだけ太い幹を選んでいく。

 男の子が二メートル半ほど登ったところでいい幹を見つけて腰を掛ける。女の子が苦戦しているようなので男の子が手を伸ばして助け上げる。

 女の子も男の子と同じ幹に腰を掛けた。

 ちょうどその時だった。

 水平線上から太陽が昇り始めた。

「うわー、すごい綺麗」

 女の子の口からおもわずといったように漏れ出た。

「あと少し待てばもっとすごいのが見れるよ」

 男の子が言うと同時に風が吹いた。

 それに合わせたように風に吹かれた桜の花が散り始める。

 桜の花は満開になると花が散ると言う。ちょうど満開になったのだろう。

 その間にも太陽は登っていき町に日の光が当たる。

 徐々に太陽は高度を上げていき、町全体を明るく照らすようになった。

 散っていく桜の花にも日の光が当たり、綺麗にピンク色が輝いている。

「私は諫早葵(いさはやあおい)だよ」

 女の子が告げた。

「知ってるよ?」

 男の子が不思議そうに首を傾けながら答えた。

「だって君一回私を名前で呼ばないから」

 少し不満げに答えた女の子の声は今にも消え入りそうだった。

「諫早ちゃん」

「葵って呼んで」

 男の子が言いかけた途中で女の子が割って入る。

「葵ちゃん、じゃあ僕も名前で呼んで」

 男の子が言うと、待っていたように女の子が答える。

神尾恭介(かみおきょうすけ)君でいい?」

「いいよ」

 男の子も満足したように答える。

 桜が咲き誇り、朝日が桜と町を優しく包み込んでいる。

 桜がひらひらと舞い落ちる中、二人は手をつなぎながらいつまでも眺めていた。

 


 

 





読みづらい、拙い文章に目を通していただき嬉しいです。

感想、評価を頂けると幸いです。


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