Interview with the Mithral
「あー茶は良いぞ。当てがあるからのう」
ところ変わってイズムの作業場。
現在の状況はと言えば、自称・ミスラルを中心に土間に敷かれた畳の上に車座に座っていた。
あの後、立ち話もなんだから的な提案がイズムからあり、包まれながら移動したわけだが、未だに狐に化かされ続けているような呆けた空気が流れ、誰もが他人の出方を見守っているような気まずい状況が続いている。
鉄兵も十分に得体の知れぬ空気に呑まれているわけだが、しかし、このままでは生産的な場にはならない。覚悟を決めた鉄兵は、黙々とホーリィが淹れた紅茶が場に行き渡り、それなりに場の空気が整ってきたところで場の空気を変えるために口を開いた。
「それで、あなたは本当にあのミスラルなんですか?」
「疑い深いのう。他の者ならいざ知らず、すでにお主は分かっておろうに」
確かにミスラルに解析魔法をかけてその本質に触れた鉄兵には分かっている。だが、分かっているのと理解しているのとは別物である。
説明しにくい話ではあるが、他ならぬ鉄兵は目の前にいる自称・ミスラルが紛う事なく庭先に生えているあのミスラルの樹木と同一の存在である事は分かっている。知識としてはわかっているのだが、しかし本能がその事実を認めようとはせず、未だ理解には達していなかった。
何が鉄兵の認識を阻害しているかといえば、その最たる理由は以下の一言に集約されているだろう。
「いや、正体と姿が噛み合わないというか……」
見た目と言うのは予想以上に重要なものだ。人間というものは視覚情報に頼りきりなもので、実際に知識としては分かっていても、その外見に惑わされてしまう。これはその典型とも言える例であり、二つが同じところにあり、その姿に一つの共有点も存在しない状況なれば、その二つを同一として考える事は鉄兵の頭でも困難な事であったのだ。それは頭の柔軟性が足りないという事ではなく、未だ確証を得るに足る事実を見ていないためである。
「なるほど、この身は仮初の姿とはいえあまりに落差がありすぎるか。とはいえ、どちらも同じ仮初の器でしかない故、そもそも姿形でわしを判断するという考え事態が間違っておる」
「と、言いますと?」
「わしは精霊じゃからの。ミスラルの姿も人間の姿もわしの本質ではないという事じゃ。言うてしまえばミスラルの姿も人間の姿も現し世に干渉するためにわしが作り上げた仮初の器でしかない。それ故、姿形でわしを判断するのは間違えじゃ」
なるほど、と鉄兵は理解に必要な最後の一欠けらを手に入れて、ここでようやくストンと落ちた。
目の前のミスラルの本質は自分でも言っていたように"上位精霊"というものなのだろう。ならば気になるのはミスラルの本来の姿である。
「それじゃ実際にはどんな姿をしているんですか?」
毎度のごとく素直に聞いてみる。が、ミスラルから返ってきた答えは、すでに鉄兵が知っている事を思い出させるものでしかなかった。
「おぬしも精霊をその身に飼うておるなら見た事があろうよ。今もそこらに浮いておるクラゲのようなあの姿が本来のわしの姿じゃ」
精霊の姿を見た事がある鉄兵とホーリィが同時にあーあれかぁと納得の色を見せる。鉄兵的にはリードの授業の終わりに見た無属性の精霊の姿を思い浮かべたが、言われてみればあれが精霊の本来の姿なのだろう。
「精霊界とでも言っておこうかの。現し世と少しずれたところにあるわしらの住処では大きさというものにさほど意味は無いが、この大地と同じ大きさほどもある……そうだの、お主が知る中で一番的確な言葉で表せば単細胞生物みたいなものがわしの本来の姿じゃな」
「すごく……大きいんですね。ってか単細胞生物ですか」
それが本当ならば洒落にならない話である。登場時のこの世界に対する影響力からして巨大な力を持っているとは思ったが、桁が違うにも程がある気がする。それはそれで心底から突っ込みたい気分ではあったが、鉄兵はやや現実逃避気味に単細胞生物というキーワードに反応してしまった。精霊について知っているわけではないが、自分の事を単細胞生物と証するのはいかがなものだろうか的な発想である。
「まあわしの本体には細胞という概念は無いが、しかし一個の存在が分裂して個を増やすという認識から考えれば大方間違っておらんじゃろ。
もっともわしは遥か昔に分裂する事を止めてしまった故にそこまで大きくなったのだがの」
鉄兵の力無い突っ込みにミスラルがしれっと答える。確かにそういう観点から考えればそうなのだろう。どうやら精霊は細胞分裂っぽく増えるらしい。
「あの、聞いてよろしいですか?」
そう言って会話に入り込んできたのはルナスだった。
「なんなりと聞くが良いぞ」
ルナスの言葉にミスラルは鷹揚に頷いた。その口調だけを聞けば如何にも威厳がありそうだが、残念ながらミスラルはお子様の姿なので全く貫禄が無い。というかむしろ微笑ましいという台詞が似合うだろう。
そんなミスラルと相対して緊張感丸出しで質問をしようとするルナスはまるで大物子役にインタビューを敢行する新米記者さながらな姿だが、ここは滑稽だなとか思ってはいけない場面なのだろう。にしてもなし崩し的に質問会みたいになってきているが、この状況はいったいなんなのだろうか? 色々と突っ込みたい気もしたが、しかし突っ込んでどうしたいという代替案もないため、鉄兵は流れに身を任せる事にした。
「あなたは土の上位精霊との事ですが、ミスラルのお姿も今のお姿も本来の姿ではないと仰いました。ならばなぜそのようなお姿でこの世界に顕現なされているのでしょうか?」
普段はエキセントリックな言動と行動をしているものの、『実際のルナスは実に理知的な人物である』という鉄兵の予想はどうやら外れていないようだった。今の質問は形にし辛い疑問をスムーズに解消させる布石になるだろう。
「そうじゃの」と応じたミスラルは、視線をしばし宙に漂わせてしばし考えた。
「今のこの姿はお主らと意思を疎通するための姿じゃな。鉱物であるミスラルの姿では声の一つも出せんからのう」
それは至極もっともな話である。ミスラルは樹木系鉱物なわけで声帯などあるはずもなく、他者との意思の疎通ができるはずもない。
が、鉄兵としてはその問いに対する疑問はそこばかりではなく、その事についてもミスラルは言及した。
「なぜ鉄兵の幼少期の姿を借りているかという話ならば、他に適切な姿が見当たらなかったからじゃな」
今のミスラルの姿が鉄兵のお子様時代の姿だと気が付いていなかったルナスは『へーそうなのかぁ』的な視線を寄越してきたが、しかし言葉と態度にそれを表さない。
「と、仰いますと?」
「わし本来の姿は巨大すぎてその一部とはいえ具現化したら大惨事になるところだったらしくてのう。さらにはわしの本来の姿は現し世では酷く醜悪のようでな。本来の姿を晒しただけで見たものは狂うてしまうとの事じゃ。
故にわしが具現化するに当たりその姿の在り様について問答が続いたわけじゃが、途中で面倒くさくなってしまってなぁ。鉄兵の幼少期の姿であるこの姿は、この姿なら大丈夫じゃろうと手を抜いた結果じゃ。勝手に姿を借りた非礼は詫びるが、まあ狂い死ぬよりはましであろうよ」
先程自分を単細胞生物のようなものと称していたが、確かに山ほどの大きさのゾウリムシが現れたらそりゃ気が狂いそうになるかもしれないなぁと考えたのはずれているであろうか? それにしても自分の身を模したその理由が予想以上に適当なものだったので反応に困るが、ここは狂い死ぬよりかはマシだったと考えるほかないだろうか。かといってそれで全面的に納得できるかといわれればそんなはずも無いのだが。
それよりミスラルは少し気になる事を言っていた。
「問答って、誰かと話し合ったってこと?」
思わず口に出たその問いに、ミスラルは「そうじゃの」とつぶやき、なぜだかじっと鉄兵を見つめた。
「確かにそうなのだが、それが誰かは本人の意向故、ここでは伏せさせていただく」
なんだそりゃとは思ったが、ミスラルは至極真面目な顔をしているのでボケているのではないのだろう。多分突っ込んだところで答えは出てこないと思われたのでここは大人しく流す事にする。
「さておき話の続きじゃ。鉱物であるあの姿は、言わばわしの趣味じゃな」
「趣味?」
「さよう。わしらは魔力を食って生きておるわけだが、精霊界の魔力は味気なくてのう。対してこの世界と交わっておる魔力はそれぞれが真に珍味でな。皆、現し世の表面近くまで現れてその珍味を食しておる。
して、存分に魔力を食らい身を大きくした精霊は、絶えず取り込んでおる魔力の一部を使いその身の一部を具現化して現し世の魔力を堪能しておる。つまり、わしが現し世の魔力を直接味わうのに選んだ姿が樹木を模したあの鉱物の姿というわけじゃな。わしもこちらに来るまでどんな姿をしておるか知らなんだが、割かしまともな姿をしておったのう」
そんなわけで、どうやら食事のためにあの姿を取っているらしい。ついでのように事も無げに言っていたが、どうやら理屈で言えば発狂モノの姿で具現化する事も有り得たらしい。
いや知らないだけで実際にそんな上位精霊もこの世界に具現化しているのかもしれないが……知られてないのはもしかすると見たもの全てが発狂しているせいなのかもしれない。冷静に考えるとかなり怖い話ではあるが、ここは話の本筋に関係ないのでスルーする事にする。
「つまり、あなたのような上位精霊の方々は自由にこの世界で望むままの姿を取れるということですか?」
「さよう。現し世で火を起こすも水を凍らすも肉を作るのもわしらにとっては同じ事。故にわしらが今こうしているように受肉するのも自在である。
もっとも、わしのように肉の身体を持つ者は極々少数である故、お主が現し世の身体を霧散させるまでの間にまた新たにわしと同じような存在に会う可能性は皆無であろうがな」
逆を言えば極々少数という事は存在はしているという事なのだが、とにかくミスラルの答えはルナスを納得させるに足るものであったようだ。
迂遠な質問から入ったが、ルナスが知りたかった事はミスラルと同じような存在が他にも現れる可能性があるのかという事だったのだ。
幸いな事にミスラルは友好的であるが、その登場時に感じた気配と今までの話から、ルナスはその存在がアホみたいな脅威であると理解している。
仮にも公子であるルナスは、なんだかんだと奇行を現していても国と民を第一に思っている。
なのでルナスが一番知りたかったのは未だ脅威が続くのかという一点であり、その答えを聞いた今、ややほっとしたような空気を漂わせていた。
「まあなんだ、それは良いんだけどよ……」
ルナスの質問が一息ついたところで発言したのはイズムであった。
落ち着きを取り戻した今、冷静に見えて好奇心が疼いているのだろう。考えて見ればここにいる誰よりもミスラルと縁が深い人物はイズムである。イズムはミスラルについて誰よりも深い理解と関心を持っている人物である。そんな人物の前にミスラルが人の身で姿を現し、直接対話できるというのだ、今まで我慢していた方がおかしいともいえるだろう。
「あのよ、あんたがあのミスラルだって言うんなら、聞きたい事があるんだが、答えちゃくれないか?」
「無論聞こう。わしはおぬしを知っておるぞ。個体名は知らぬが、お主の問いを拒絶する意思をわしは持っておらん」
「そ、そうなのか?」
「うむ。お主の声はわしには心地良いものなのじゃ」
上機嫌そのもののミスラルの表情は、まるで母親の前で絶対の安心感を見せる子供のような素直な笑顔であった。自分自身の姿であるにも拘らず思わず保護欲を感じてしまうような笑みを前にして、イズムが盛大に照れる。
「で、でよ。なんであんたは……ああ、金属の方な。なんでありゃ、打つ奴を選ぶんだ?」
その問いは、鉄兵にとっても是非答えを知りたい質問であった。溶融点が不定だったり打つ人を選んだりする金属があるというのは鉄兵にとっては常識を根本から打ち崩されない問題であったのだ。鉄兵とイズムは二人揃ってぐぐっと身を乗り出す。
「その問いに答えるのは簡単じゃな。この世にはお主という存在を表すに相応しい言葉が存在しておる。
それはな、お主は精霊魔術師だからじゃ」
「はぁ? 俺が!?」
あまりに予想外の答えにイズムが素っ頓狂な大声をあげた。ミスラルの答えは、正直なところ鉄兵とイズムの考えの斜め上を行くものであった。
いつぞやのリードの講義を思い出す。
精霊魔術師とは精霊に祝福されている者で、魔力が低くとも精霊の力を貸りて魔術のような力が使える者の事である。
「知っての通り、わしの現し世の身体であるミスラルはこの世で一番硬く柔軟で熱に強い金属じゃ。故に鍛冶の業にてわしを鍛える事は出来ぬ。なればなぜわしを打てる者がおるのかといえば、それはわし自らが協力しているためと考えるのは自明の事じゃろう?」
そう言われて改めて考えてみれば、確かに納得の行く答えであるが、しかし鉄兵の常識を崩しかけた現象のその答えがそんなものだったのは鉄兵としてはショックであった。
「お主は生まれ付いての精霊使いではない。誰よりも火と土に近く存在したゆえ、火と土の精霊の祝福を得たのじゃよ。わしにはお主の声が心地良く、お主が望むままに我が身を委ねるのを良しとしておるのじゃ」
恐らくは長年捜し求めていたであろうその答えは、しかしイズムを高揚させるものではなかった。
真実は知らない方が良い事もあるが、特に今回の場合、イズムはその顕著な例とこの場では見えた。
「そうか……」
回答を得たイズムは、しかし鉄兵以上にショックを隠しきれないようであった。そのイズムの落ち込みようはなんとなく鉄兵には理解が出来た。
精霊魔術師といえば、レアリティが高く一種のステータスになるような能力であると鉄兵は記憶している。
だが、鍛冶師として生きてきたイズムにとって、その鍛冶仕事の全てが自分の力ではなく、他人の力を借りて出来ていたと言われているに等しい。
であるなら、己の腕を信じていたであろうイズムの自信が砕かれたであろう事は想像に難く無い。
「面白いものじゃな」
そんなイズムの様子を見てミスラルの口から出てきた言葉は、しかし鉄兵の感慨とは正反対のものであった。
「他ならぬお主であれば、火と土が個の意思のみで完全に支配できぬ事など知っておろうに、それでもなおその表情をするか」
心底興味深いものを見る目でイズムを見るミスラルに、イズムは目を逸らしてうろたえた。
「人の業というやつかのう。まさか有り得ぬと知っていたというのに我らを支配していた気になっていたか?
……いや違うな。お主はそれほど間抜けではない。なら一人の力で為したと思っていた事が我らに助けられていたと知って己の力に揺らぎが生じたか。ふむ、なら勘違いという奴じゃ」
ミスラルの見透かしつつも何もかも知っているという訳ではない台詞に、うなだれていたイズムの顔が徐々に上向く。
「お主が火を見る時、鉄を打つ時、その手には何も手にしておらなんだか?
お主は常に何も介さず剣を矛を鍛えその手にしていたのか?
お主がそれを手にするには常に火と土の存在がそこにあったであろう。
お主は剣を打つ時に助手の力を借りるを恥と思うか? それと同じ事じゃよ。
お主は土を見、火と戯れたからこそ知りえた知識を持っておる。故にお主は我らに近しい目線を持っておる。
我らは互いに互いの願いを叶えるという事をせなんだが、しかし同胞に力を貸すのが心地良くての。ならばなによりも自分を知る人物に力を貸すのが至玉の喜びと感じるは知れるところであろう。
お主は我らの力を借りるが力足りぬ証拠と思うたようじゃが、しかし、土と火の理を知らぬものを我らは近しき隣人と見ぬ。
されば我らの内に賛同者を得、助力されるはなによりもお主の業の威を示す誉れと思うが理ぞ」
ミスラルの言葉を聞いたイズムは、その言葉を咀嚼するかのようにしばし微動だにせず俯き続けた。
やがて動きを見せたイズムは無言のまま居住まいを正し、そっと、しかし深々と頭を下げた。それは日本で言えば座礼の最敬礼というものであったが、しかしここでは鉄兵とミスラル以外にその文化を知るものは無い。
イズムの礼を見て清らかな気分になった鉄兵は、しかしその裏では脳みそをフル回転させていた。
今までの話を聞くに、ミスラルを鍛えられるのは精霊魔術師のみという事のようである。だが、逆に言えば精霊魔術師がミスラルを鍛えるのであれば、ミスラルは望む限りその望みに応えようしている。
ミスラル製品はハイスペックではあるものの、その出来上がりは博打的な欠陥商品ばかりである。だが、今ここにミスラル本人がにいる以上、思い通りの物性を持つ、それこそ魔法のような金属を作り上げるのは安易な事なのではないだろうか?
「……ところで、ミスラルを打った時に現れる効果はバラバラだって聞いたけど、統一する事はできます?」
「む? わしは協力してるだけゆえあまり知らんの。しかし我が分身たるミスラルは望むものを与えんとしているからの。意を一つにすれば望むものが得られるであろうの。その点、虫どもは分かりやすくて好ましいな」
鉄兵の問いにミスラルはそんな言葉で答えた。そういえば野生生物の方がミスラルに望みを叶えられる場合が多いと聞いていたが、そんな理由らしい。言わば根本的で即物的なイメージ力の問題という事であろうか。野性味が薄れて雑念がある分、知的生命体であるほどにミスラルに望みを伝えるのは難しいのかもしれない。
「いずれにせよ、今はここにわしがおるからの。望みに応えるは易いぞ」
その言葉は、この世界の未来を決定付ける言葉であった。
「おい待てテツ!! 待てよテツ! そいつぁつまり……」
正座の姿勢のまま事の成り行きを見守っていたイズムが発作的に大声を上げる。
「ようするに、ミスラルの実用化の目処が立ったって事、かな」
加工すら難しく、その性質はびっくり箱のように千差万別であったミスラル。今までは加工できる人物すら限られていたために半ば趣味的に研究されてきたその金属は、しかし本人の助力を得る事により、万能の金属になろうとしている。
「……燃えてきたなコンチクショウ!」
その過程を正しく理解したイズムが静かに闘志を燃やす。
それは無論、鉄兵も同じ事であったが、しかし鉄兵にはすでにミスラルの有効活用法について一つの指針が立っていた。
それは、ずばり電力である。
魔力という得体の知れぬものは、今のところ無尽蔵にあり、様々なものに形を変える夢のような習性を持っている。そしてミスラルの言葉ははその無尽蔵な燃料を使用し、将来に渡り目減りする事も無い究極にエコロジーなエネルギーを実現できると言っているのだ。
無論、それが現代のような高圧電流を供給できるようなものかは今後研究していくほかは無いし、電気の存在も知らぬこの世界の科学技術は底辺に近いものがあり、一年や二年ではどうなるという事も無いだろう。
だがしかし、自分が居るだけの間、知る限りの知識を誰かに教え込めば五年後六年後にはその芽がふき始め、そこには元の世界では見られない独自の文化が生まれるかもしれない。
言わば魔法科学技術とでも言うものだろうか。そんなものが現れたとしたら、それは興味深く、非常に関心を奪われるものである。
一年後にはこの世界を発つ予定の鉄兵は、残念ながらその行く末を見る事は無いだろう。
だが、その礎だけでも築いていくというのは、これほど愉快な事はないのではないだろうか。
鉄兵の目の前に、未だ見ぬこの世界の未来が見えた気がした。
それは、昼日中に見た白昼夢のようなものである。
だが、その夢は鉄兵にとって非常に好ましいものであった。
2011/11/02:指摘いただいた誤字修正
その無尽蔵な燃料を使用し、[正体]に渡り目減りする事も無い
→その無尽蔵な燃料を使用し、将来に渡り目減りする事も無い
2011/11/03:指摘いただいた誤字修正
を鍛えれるのは精霊[]術師[飲み]という事のようである。だが、逆に言えば精霊[]術師が
→を鍛えれるのは精霊魔術師のみという事のようである。だが、逆に言えば精霊魔術師が
2011/11/03:指摘いただいた日本語修正
確かに山ほどの大きさの[ミジンコ]が現れたらそりゃ
→確かに山ほどの大きさのゾウリムシが現れたらそりゃ
ミジンコは単細胞生物ではありませんでした!
ややほっとしたような[感覚]を漂わせていた。
→ややほっとしたような空気を漂わせていた。
[昼日向]に見た白昼夢
→昼日中に見た白昼夢
2011/11/03:指摘いただいた脱字修正
このままでは生産的な場には[]。
→このままでは生産的な場にはならない。
ミスラルを鍛え[]れるのは
→ミスラルを鍛えられるのは
2012/7/17:指摘いただいた誤字修正
[固体]名は知らぬが
→[個体]名は知らぬが
[い]るのか[は]といえば
→[お]るのか[]といえば
ならば己の腕を信じていた者としては、その自信が砕かれたというのは想像に難く無い。と考えれば、その落ち込みようは理解できるものである。
→であるなら、己の腕を信じていたであろうイズムの自信が砕かれたであろう事は想像に難く無い。
一年後にはこの世界を[立つ]予定の鉄兵は
→一年後にはこの世界を[発つ]予定の鉄兵は
[故に]姿形でわしを判断するのは
→[それ故、]姿形でわしを判断するのは
究極にエコロジーなエネルギーを実現できると[い]っているのだ
→究極にエコロジーなエネルギーを実現できると[言]っているのだ