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リベラル  作者: アヤベ


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6/6

運搬依頼 ②

現在、カイタンを出発してから6時間ほど休憩を取りながら走らせ続け【サヘラ平原】を走っていた。

サヘラ平原とは、大陸東側に、北から南まで大陸に大きく広がっている平原で、この世界の約7割程の種類の魔物が生息しているのと言われている、この平原を横断するのに2日はかかる為、魔物との遭遇率は極めて高くなるので、今回の運搬依頼の中で危険な場所はここだけと言ってもいいほどだった。

そんな平原で馬車を走らせているのだが、あたりは段々と暗くなり始めており、野宿する場所を探していた。


「せやなぁ、ここもうちょっと走ったら無かった?」


「あそこはやめといた方がいいんじゃないかしら?」


「なんで?」


「今回は運搬任務よ?賊にも狙われる可能性があるからよ」


「せやなぁ」


今回の任務が運搬任務という事で、警戒しなければいけない者は、魔物だけでなく、商人なんかを狙った【盗賊ギルド】などからも運搬品を守らないといけないために、誰もが利用している魔物の少ない安全地帯は、利用出来ないわけではないがなるべく避けられる傾向にある。

そんな事もあり、3人は知能のある人間と戦うよりも、少しの危険を覚悟の上で魔物がいるが寝泊まりできる場所を探していた。


「あの辺なんてどうですか?木に囲まれてて大型の魔物には、侵入できなさそうじゃないですか?」


ヒロが指差す方を2人が見る、木々に囲まれており、周囲からの視界も取りにくくなっているので盗賊などに、発見されるリスクもかなり減る場所であった。


「いい場所ね、あそこにしましょう」


「ええな、じゃあ行こか」


そう言うと、レイツェルは手綱を掴み馬車をそちらの方に誘導する。

馬車を停めてから、レイツェルは荷台に置いていた運搬品とは違う箱を漁り魔法具を3つ取り出し、馬車から降りる。


「なんですかそれ?」


その行動を見ていたヒロが聞くと、レイツェルは馬車を取り囲む3点に魔法具を設置する。

すると魔法具は、3点に置かれたお互いを繋ぐ様に魔力を互いに伸ばし繋ぎ合わさる。


「魔除けの魔法具よ、まぁ、離れた所から見えなくなるだけで接近されると意味をなさないんだけどね」


レイツェルは、魔法具を設置し終わると同時に説明し始め、展開が終わると少し休む様に座る。

そこに、アクトが合わさり3人で交代でする見張り決めや食事などを済ませ、順番に眠りについて行く。

最初に、ヒロが見張りをする事になった。


「じゃあ、何かあったらすぐ起こしていいからね」


レイツェルさんはそう言い残すと、馬車の中に入って行った。

アクトさんは外で寝たいねんと言い、僕の横で寝ている、僕のことを心配してくれていての行動だろう。

3人で、3時間おきに交代で見張りを行うために、ここからは3時間ほど何があっても1人で対処しないといけない、2人にはなるべく長い間休んでほしい。


そう思いながらも何も起きないことを祈り馬車を背もたれに座っている。

暗い夜の中、焚き火だけがパチパチと音を立てる、そんな中ヒロはふと空を見上げる。

木の隙間から見える、星々の輝く様子を見て、感動を覚える。


「綺麗だなぁ、街から見るのと全然違う、すごく眩しく感じる」


その光景に夢中になり、ポツリと独り言が溢れる。

すると、隣で寝ていたアクトが突然言葉を発する。


「せやんなぁ、俺はコレが見れるから、自然って大好きやねんな」


「起きてたんですか?早く寝てください体を休めないと」


ヒロがそう言うと、アクトは気まずそうに小声でヒロに耳打ちする様に言う。


「いやぁ、実はな馬車に乗ってる時、ちょっと寝てもうたからそんなねむないねんなぁ、それにやで?馬車に乗ってただけやから体もそんな疲れてないねん」


呆れた様にヒロは少し笑う、でも少し肩の荷が降りるのを感じる、ヒロにとってアクトが起きているのは正直心強かった。

それから2人は、3時間他愛もない話をしながら見張り作業をこなしていた。


「おっ、そろそろ交代の時間ちゃう?馬車の中行って寝てきぃや、こっからは俺が見とくから」


「なんか悪いですね、ずっとアクトさんにも起きててもらったのに」


気を使うヒロを見て、アクトはため息をひとつ吐き、少し真剣な顔をする。


「ヒロ、ちょっと気ぃ使いすぎやで、俺らは家族みたいなもんやねんから、もうちょい崩してええで、それにさっきもゆったけど、馬車で俺が寝てただけやからあんま気にせんでええって」


「わかりました、じゃあおやすみなさい」


「おう」


アクトのそんな言葉に嬉しくて胸が少し熱くなる、家族みたいな者、そんなふうに思ってくれていたんだ、そう思うだけでヒロは嬉しくなって顔が緩くなる。

そのまま馬車に乗り、横になると疲れが溜まっていたのか、すぐに眠りについた。

 

次の日の朝、馬車の揺れで目が覚める。


「あれ?もう出発してるんですか?」


前の方を見ると、日が登り切る前に出発したのか少し暗かった、ヒロの言葉に気づいたレイツェルが後ろをチラリと見て答える。


「あら、ヒロ起きたのね、そこに朝ごはんを置いているわ食べなさい」


言われるがままに起き上がりご飯を食べ始める、馬車の荷台を見るとアクトがまだ寝ているのを見つける。

馬車を走らせ続けていると、馬車とは違う揺れを感じる。


「ん?なんですかこの揺れ」


ヒロがレイツェルの隣に座りあたりを見渡す、すると馬車の方へ何かが走ってくるのが見える。


「マズいわね、ヒロ、アクトを起こしてちょうだい、戦闘になるかも知れないわ」


「わ、分かりました」


ヒロがアクトを起こす、その間も馬車の揺れは少しづつ大きくなって行く。


「もしかして、クロウランナーか?」


起きると直ぐに状況を理解したのかアクトは、レイツェル声を大きく聞く。


「まだよく見えないけど、多分そうよ」


「クロウランナーってなんですか?」


ヒロが2人に聞くとアクトは立ち上がり馬車の後ろに顔を出し、クロウランナーの方を見て言う。


「ただの足の長い鳥や」


ヒロも馬車の後ろから顔を出す、すると、そこには10〜20匹程の群れで走っている、首と足の長い鶏の様な魔物が馬車を目掛けて泣き声を上げながら向かってきていた。


「ただの鳥じゃないじゃないですか!」


ドドドドと音を立てながら走り、馬車との距離が詰まってくる、慌てるヒロを横目に、アクトは嬉しそうにニヤリと笑う。


「ど、どうするんですか?魔法、魔法ですか?ってなんで笑ってるんですか!?」


「まぁ、見ときやって」


アクトはそう言うと口の前に親指と人差し指を使い円を作る、すると、その円を中心に魔力が集中するのが見て取れる。


「【ファイヤブレス】」


そう詠唱し、息を大きく吸いクロウランナーに向かい吹き付けると、扇状に大きな炎が広がりクロウランナー達を飲み込み炎上させる。

凄まじい熱気に、顔を腕で守りながら少し身を逸らす。


「す、凄い」


クロウランナーは炎に飲まれた後、追ってくることはなかった、思っていたよりもあっさり戦闘が終わり少し拍子抜けだった。


「ふぅ、どうやった?すげぇやろ俺の魔法、ドラゴンにも引けを取らん火力やったやろ?なんならそれ以上かもな」


自信満々に感想を聞いてくるのは少し面倒臭いが、正直魔法の火力は目を見張るものがあった。


「はい、凄い魔法でし…ん?なんか焦げ臭くないですか?」


「そりゃあ凄い火力やったからなぁ!」


いや、それもあると思うが、確かに焦げ臭い匂いがする、何だろう。

そう思い馬車の中を見渡す、あっ。


「ア、アクトさん!布に燃え移ってます、な、何とかしないと!」


「そんなわけ、って、ホンマやんッ!あかん俺水の魔法使われへん!」


「ぼ、僕だって無理ですよ!レ、レイツェルさん!」


「はぁ、ほんとにバカね」


先ほどの、アクトさんの魔法で荷台に固定してある布が燃えており、2人でワタワタしていると、レイツェルさんが水の魔法を燃えている箇所へと的確に命中させ、頭を抱えながら鎮火してくれた。


「アクト、後で話があるから」


「エッ!?あ、はい」


後ろ姿からレイツェルさんが怒っているのがわかる、アクトさんを見ると下を向いてプルプルと震えていた、自業自得と言うのも可哀想だけど、僕はそっと目を逸らした。


それから馬車を止めることなく走らせ続けて30分ほど経過したあたりだった、特に何事もなくヒロは木箱にもたれて少しウトウトしている所だった。


「眠い」


ひとつ欠伸をして呟く、2人には聞こえていないだろうが何も言わなかった、まぁちょっとくらい良いだろう、そう思い目を閉じた瞬間。

ゴンッ!と固い物で馬車の荷台を揺らす様に横から衝突したのか、その衝撃でヒロはバランスを崩し床にベタンと張り付く。


「痛ッ!今度は何ですか!?」


床に打ち付けられ赤くなった顔を上げ2人の方を見る。

すると、前を塞ぐ様に馬車を横向きに停めているのが見える、それとは別に左右を挟む様に馬車が荷台停まっているのが見えた、どうやら賊に囲まれたらしい。

馬車が停車したのち、外から声が聞こえる。


「おぉい、停まってくれてありがとな、なぁに運んでるんだぁ?」


柄の悪いスキンヘッドの賊が外から馬車を覗く様に、素早くフードを被るレイツェルさんに声をかけていた。

レイツェルさんは黙ったまま、賊を見ていた。

そこにアクトさんが御者席に体を乗り出し賊に向かって叫ぶ。


「お前何やっとんねん!いきなりぶつかってきたら危ないやろ!大事な運搬品に傷付いたらどないしてくれんねん!」


キレるアクトさんに、同調する様に賊の男も言い返してくる。


「うるせぇ!テメェらの危険なんて知ったこっちゃねぇんだよ!さっさと金目のものだけ置いて帰りな!」


そんな言い合いをしてる間に賊の仲間は馬車から降りてきて、馬車を囲む様に6〜7人程立っていた、それを馬車の中から眺めていると馬車の荷台に手をかけて中に入ろうとしてくる賊の1人と目が合う。


「あの、中には入らない方がいいですよ?レイツェルさんがかなり機嫌が悪いので…」


前には聞こえない様に小声で賊に教えるが完全に僕の静止を無視して乗り上がってきた。


「おい坊主、この荷物はもらってくぜ、余計な真似するなよ?」


賊の1人が、剣の先をこちらに向け運搬品に触れようとした瞬間、御者席の方から氷の玉の様なものが飛んできて賊の腹部に命中し、そのまま馬車の外へと吹き飛ばした。


「ウゲェッ!」


「あぁ、だから言ったのに、もぅ知らないですよ」


賊の1人が地面に叩きつけられてドサッと大きな音を鳴らす、その音と同時に、レイツェルさんは静かにとても冷たい声で警告をする。


「私はこのバカとは違って会話はあまり好きではないの、だから一度しか言わないわ、道を開けなさい」


その声にアクトさんは黙り荷台に引っ込む、賊のリーダーらしき人物は、その警告を無視し再び叫び始める。


「威勢がいい嬢ちゃんだな、だがその提案には乗れねぇな、荷物を置いてとっとと帰りな、それか何だ?嬢ちゃんが俺らを満足させてくれるのか?ガッハッハ」


レイツェルさんは、賊の言葉と笑い声に顔を歪ませる。


「はぁ、交渉決裂ね、少し痛いわよ」


レイツェルは、ため息をつきそう言い放つと、手のひらを地面に向ける、それと同時に額にある角が薄暗く光を放つ、そしてそのまま手のひらに魔力を集めると、氷の雫の様なものを生成する。


「【アイスウォール】」


その詠唱と共に雫を地面に落とす。

雫が地面に触れると、馬車を中心に円形に氷の剣山の様なものが周囲に広がり、賊や周囲を取り囲む馬車を外に押し流し、馬車の前にいたリーダー以外全員を無力化する。

レイツェルは、白い息を吐き賊のリーダーを睨みつけ静かに言う。


「まだやる?」 


賊のリーダーは身体を震わせながら怯えた表情で、レイツェルに剣を向けて言う。


「そっ、その角、ば、バケモンかよお前ッ!」


その怯えた様な軽蔑する様な視線に、レイツェルさんが一瞬、悲しそうな顔をした様に見えた。

彼女は脱げたフードを被り直し、人差し指と親指を使い、指を鳴らすと周囲の氷が一瞬にして消えた。

そして、黙ったまま賊達の横を通り過ぎて再び馬車を走らせ始めた。

賊の言葉を気にしているのか、どこか元気の無い風に見える後ろ姿を見ていると、何か言葉をかけないと行けないと思い御者席の隣に移動する。

それを見たレイツェルさんは少し不思議そうな顔をしているが、何を話していいのか分からない、だが、思いのまま伝えよう。


「レイツェルさん、僕はレイツェルさんの角を綺麗だと思いますよ!だから、あんな奴の言葉なんて気にしないでください!」


慌ててそういうが何か恥ずかしいことを言った様な気がする、でもこれで少しでもレイツェルさんが元気を出してくれるならそれでもいい。


そんなヒロの言葉に、少しの間、ポカンとしているレイツェルさんが、プッと吹き出した。


「ふふっ、あなた本当に変わってるわね、私があんな奴らの言葉で傷つくわけないじゃ無い…でも…」


嬉しそうにそこまで話すと、左側に座っているヒロの方を見て、靡く赤色の髪を左手で押さえ、ヒロの目を見て言う。


「あなたのそう言うところ嫌いじゃ無いわ、ありがとね」


僕はその時思った、彼女が美しいと。

僕が見惚れていると、後ろからアクトさんが肩を組んできて、茶化す様に言う。


「何や何や、ヒロ何見惚れとんねん、レイを相手にすんのは茨の道やでぇ」


「いや、違いますよ、そんなんじゃ無いですって、やめてください」


茶化され恥ずかしくなり、否定するが、正直その通りなのであまり強く言い返せない自分がいた。

そんな僕たちを見て、レイツェルさんは楽しそうにニコニコしていた。

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