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親友が密かに署名した婚前契約書  作者: 朧月 華


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第47話 決意と共闘の予感

蓮からの隠されたメッセージを解読し、彼の壮絶な復讐計画の全貌を理解した時、私の心に去来したのは、もはや憎しみや怒りではなかった。深い憐憫と、そして、この想像を絶する孤独な戦いを続けてきた彼への、深い敬意だった。彼が私を欺き、不倫まで演じたこと。その全てが、母親を殺された憎悪と、健太郎の悪行を暴くという、巨大な目的のためだったのだ。


私は、USBメモリを握りしめ、目を閉じた。蓮が背負ってきた苦しみは、私には計り知れない。愛する母親を父親に殺され、その父親の支配下で、何年もの間、「無能な放蕩息子」という仮面を被り、復讐の機会を虎視眈々と窺っていたのだ。彼の心は、どれほどの孤独と、冷たい炎に苛まれてきたのだろう。


私の心に、彼への憎悪とは異なる、複雑な感情が湧き上がった。それは、彼に対する深い共感であり、同時に、この巨大な闇の中で、一人戦い続けてきた彼への、深い敬意だった。そして、私という存在を、彼は最初から、この復讐計画の「最後のピース」として見ていたのかもしれない。母と雅美の親交、そして母が遺した手紙に隠されたメッセージ。全てが、蓮の計画の一部だったのだ。


私は、もう、蓮を疑うことはない。彼の真の顔は、この盤面を支配する、真の「執棋者」の顔だった。そして、彼は、その最後のピースを、今、私に託そうとしている。私は、彼の真の意図を理解した。


私の心は、決意に満ちていた。私は、もはや蓮の駒ではない。この盤面を、私自身の意志で動かす、もう一人の「執棋者」として、彼と共に戦うのだ。それは、私自身の復讐のためであり、母と雅美の無念を晴らすためであり、そして「星核」技術が悪用されるのを阻止し、連城グループの罪なき人々を守るためでもあった。


私は、すぐに森本先生に連絡を取った。

「先生、全てが分かりました。蓮さんの真意も、健太郎さんの犯罪の全貌も、全てです。私たちは、今、最後の戦いに挑まなければなりません」


私の言葉に、森本先生は一瞬戸惑ったようだったが、私の声に含まれる揺るぎない決意を感じ取ったのだろう、深く頷いた。


「分かりました、林さん。私は、あなたと、そして蓮さんの、お力になりましょう。どのような戦いになろうとも、私は最後まであなたを支えます」


森本先生の力強い言葉は、私の心を温かく包み込んだ。私は、もう一人ではない。母の魂が私を導き、蓮という理解者が私と共に戦う。そして、森本先生という信頼できる支えもある。


私は、蓮に連絡を取る術を探し始めた。彼がどこにいるのか、まだ確かな居場所は掴めていない。しかし、彼が私に託した「最後のピース」のメッセージの中に、必ず彼と接触するための手がかりがあるはずだ。


私の心は、嵐の前の静けさのように、研ぎ澄まされていた。これまでの裏切りと絶望は、私を打ち砕くことはできなかった。むしろ、私を強くし、真実を見抜く知性を与え、そして、この巨大な闇に立ち向かう勇気をくれたのだ。


私は、母の手帳と、蓮のメッセージが隠されたUSBメモリを、そっと胸に抱きしめた。

私の戦いは、今、最終局面へと向かおうとしている。


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