表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友が密かに署名した婚前契約書  作者: 朧月 華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/52

第43話 沙織の焦燥と新たな脅威

蓮の「無能」の演技の真相が、私の心の中で確信へと変わりつつあった頃、連城グループの内部では、沙織による主導権争いがさらに激化していた。健太郎が逮捕されてから数週間、沙織は連城グループの臨時取締役会を招集し、健太郎派の幹部を次々と排除していった。その手腕は、恐ろしいほどに冷静で、迅速だった。彼女は、自らを連城グループの救世主であるかのように振る舞い、一見、順調に権力を掌握しているように見えた。


「美咲、あなたも早く決断すべきよ。このままでは、健太郎さんの残党が、あなたを危険視して動き出すかもしれないわ。連城グループという巨大な空白を狙う輩は、国内外にいくらでもいるのよ。私の同盟を受け入れれば、あなたもアークデザインも、安全が保障されるわ」


沙織からの催促の電話は、日に日に頻度を増していった。彼女の言葉は、私への忠告でありながら、同時に、私を同盟へと誘い込む巧妙な脅しでもあった。その声には、以前のような余裕はなく、どこか焦燥感のようなものが滲み出ていた。沙織もまた、この連城グループの混沌の中で、確固たる地位を築くことに、必死になっているのだ。


私は、森本先生に、連城グループの内部状況をさらに深く調査するよう依頼した。そして、森本先生の調査によって、沙織の焦燥の理由が明らかになってきた。


「林さん、蘇沙織さんは確かに健太郎氏の逮捕によって一時的に優位に立ちました。しかし、連城グループ内部には、健太郎氏の意を汲む強固な派閥が依然として残っており、彼らは蘇沙織さんの急進的な行動に強く反発しています。さらに、連城グループの傘下にある企業の中には、蘇沙織さんのやり方に不信感を抱き、独立を画策しているところもあるようです」


森本先生の言葉は、沙織が表面上、権力を掌握しているように見えながらも、その足元は決して盤石ではないことを示していた。連城グループという巨大な組織は、健太郎という絶対的な支配者を失ったことで、内部が分裂し、権力闘争が激化していたのだ。


さらに、外部からの脅威もまた、美咲とアークデザインに迫っていた。

健太郎の逮捕と、連城グループの混乱というニュースは、瞬く間に経済界を駆け巡った。「星核」技術という、計り知れない価値を持つアークデザインの特許情報も、どこからか漏洩し始めていた。


「アークデザインの持つ『星核』技術は、世界の多くの企業や、国家までもが狙っています。健太郎氏が逮捕された今、その技術を手に入れる好機だと考え、様々な勢力が水面下で動き始めています。美咲さん、アークデザインは、今、極めて危険な状況にあります」


森本先生の言葉に、私の胸に重い不安がのしかかった。健太郎という強大な悪意は一時的に排除されたけれど、その代わりに、もっと多くの、見えない敵が、私とアークデザインを狙って動き出しているのだ。沙織との同盟は、確かに一時的な安全を保証するかもしれない。しかし、彼女の野心は、私やアークデザインを、新たな危険へと巻き込む可能性を秘めている。


私は、この状況で、誰の言葉を信じ、誰の力を借りるべきなのか。蓮の不在は、私に大きな不安を与えていた。しかし、同時に、彼の影が、この混沌とした盤面で、何か別の、決定的な動きをしようとしているのではないかという、強い予感も抱いていた。


私の直感は、この物語にはまだ、誰も知らない真の「執棋者」が潜んでいると囁いていた。その人物が、この混沌に終止符を打ち、全ての反転をもたらすだろう。私は、その最後のピースを見つけるため、母の遺した手帳を強く握りしめた。私の戦いは、まだ終わらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ