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親友が密かに署名した婚前契約書  作者: 朧月 華


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第39話 蓮への漠然とした違和感

母の研究資料と手帳を読み漁る中で、「星核」技術の持つ圧倒的な力と、それを巡る健太郎の悪意が、私の心に深く刻み込まれていった。しかし、同時に、私の心の中に、蓮に対する漠然とした違和感が、影のように忍び寄っていた。


健太郎と沙織の裏切りが露呈し、健太郎が逮捕された今も、蓮は私の目の前に現れなかった。彼は、あの夜、沙織のマンションで、父親と親友の裏切りに打ちのめされ、震え続けていたはずだ。しかし、彼のその絶望の姿は、私の中で、何か不自然なものを感じさせていた。


(蓮さんは、本当に、何も知らなかったのだろうか……)


私は、蓮との結婚生活を思い返していた。彼の優しさ、私への深い愛情。それは、全て演技だったのだろうか。彼が私に告げた「君の夢は、僕の夢だ」という言葉も、母が遺したアークデザインを奪うための、甘い罠だったと。そう思うと、胸が締め付けられるほどに痛む。


しかし、同時に、彼の完璧な「放蕩息子」としての演技にも、不自然な点があったように思える。彼が夜遊びに出かける時、私は彼の瞳の奥に、いつも深い孤独の影を見ていた。私と過ごす時間の中に、時折、彼が、私には理解できない、遠い何かを見つめているような瞬間があった。それは、私を欺くためだけの演技だったのだろうか。それとも、彼自身の心の奥底で、別の何かが動いていたのだろうか。


母の手帳の中に、蓮の母親、雅美の名前を見つけた時、私の心臓は激しく脈打った。雅美と芳美は、親友だった。そして、二人とも健太郎の「星核」技術が悪用されることを阻止しようとして、命を落とした。蓮もまた、健太郎という悪魔によって、母親を奪われた被害者なのだ。


(蓮さんは、私と同じ……)


その思いが、私の心に、かすかな希望の光を灯した。彼が、私と同じように、健太郎への復讐を誓っていたとしたら? 彼が、そのために、敢えて「無能な放蕩息子」を演じ、健太郎の目を欺き、裏で何かを計画していたとしたら?


しかし、その一方で、私を欺き、不倫をしていたという事実は、紛れもない真実だった。彼の行動は、あまりにも矛盾していた。一体、蓮の真の顔は、どこにあるのだろうか。彼は、私を心から愛していたのか。それとも、私をも駒として、健太郎への復讐を果たそうとしていたのか。


沙織は、健太郎を倒し、連城グループを掌握するために私との同盟を求めている。しかし、蓮の存在が、私の心を激しく揺さぶっていた。彼は、この盤上のどこにいて、何をしようとしているのか。私の直感は、この物語には、まだ誰も知らない、最大の反転が隠されていると囁いていた。


私は、母の手帳を強く握りしめた。この手帳には、母の魂と、私に託された真実が詰まっている。私は、この真実を解き明かし、そして、蓮という男の真の顔を、この目で確かめなければならない。私の復讐の道は、まだ始まったばかりだ。


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