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死刑執行人への愛  作者: 逆さ藤


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療養



 しばらく、私は呆然と過ごした。

 

 それが許される立場かどうかはさておき、伯爵である父はそれが妥当だと思っていたようだ。


 私は病院に入院し、後送するには大仰だと思われるような傷を真面目に治した。身体が動くようになると呼び出しが来た。同じ貴族将校の友人から聞いたが、私がいた中隊は文字通り全滅したらしく、生き残りは本当に私一人だったらしい。


 改めてそう聞くと生き残ったことに罪悪感が湧き上がってくる。


 飛んだ生き恥だ。私一人が死ぬならばともかく、この感情をどこに持っていけばいいのかわからない。


 知り合いの顔が浮かんでは消えた。中隊員二〇〇人が消え去ってしまったのだ。先頭をひた走っていた私が生き残り、私の後ろにいた人間は死んだ。呆然とするしかなく、友人がいなくなったことにも気づかないままベッドに深く沈み込んだ。



 紛争には勝ったらしい。新聞や公報では大々的に扇国の一部が割譲されただの居留民の保護に成功だのと景気のいい話が踊っていた。

 私はというと、ただ病院の中で療養に勤めていた。長く過ごすと罪悪感が水で薄まるようになくなっていった。



 しかし、合間を縫って名前の覚えている限りの部下の遺族に手紙を書く手は止まらなかった。人柄などを思い浮かべると時折唸りそうになる。



「郵便、お願い」



 定期的にくる軍服姿の天狗は私と同じくらいの年齢。まだ二〇を過ぎた位だろうか。負傷した軍人に対しての居心地の悪さを感じてくれるのか足早に去っていった。



「はあ……」 



 いつまでここにいないといけないのか。砲弾で吹き飛ばされた身体だが、だからと言ってここまでの療養は必要ない気もしていた。



「居場所がないわね……」



 紛争終結後に前線の怪我人たちが帰還してきていた。それはどれも生きているのが不思議な位の傷があった。


 誰かが、どこまで傷つければ人間は死に至るのかと悪趣味な実験をしているみたいだ。手も足もなく目すら潰れている患者がいたが、彼はそれでも微かな呼吸を繰り返していた。

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