先輩の告白
「先輩……?」
私と美咲が声をかけると、佐伯先輩は驚いたように目を見開き、しばし沈黙した。
その後、震える声でぽつりと告げる。
「お漏らしで泣いちゃうなんて、私、おかしいよね」
「違うんです、先輩」
「私たちも同じなんです」
私と美咲が今までのことを打ち明けると、先輩の目に涙がにじんだ。
「……私も……同じ。あの日からずっと……」
佐伯先輩は人目を気にして、近くのビルの隅に私たちを誘った。
そこで小さな声で、あの日のことを語り始めた。
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それは平日の午後、職場のトイレの個室。
先輩は、会議続きでトイレに行く暇がなく、限界まで我慢していたという。
「ようやく席を立って……個室に入ったの。でも、鍵を閉める前に……もう、だめで……」
彼女は両手をぎゅっと握りしめながら話を続けた。
「パンツの中に……一気に出ちゃったの。ベージュのズボンに濃い染みが広がって……温かくて、止められなくて……」
当たり前のように受け入れるべき世界。
けれど、そのとき彼女の心を満たしたのは――羞恥心だった。
「……どうして私、こんなに恥ずかしいって思ってるんだろうって。
だって、周りの人は誰も気にしないのに」
彼女はそのままパンツを濡らしたまま便座に座り込み、肩を震わせて泣いたという。
「それからずっと……おかしいのは私なのかなって思ってた。
でも今日、彩ちゃんと美咲ちゃんを見て……やっと……」
佐伯先輩は顔を覆い、涙をぬぐいながら小さく笑った。
「やっと、同じ気持ちの人がいるって分かった……」
私、美咲、そして佐伯先輩。
羞恥心が残された三人。
その共通点は――“同じ日”。
(どうして……私だけが違うんだろう?)
私の胸の奥で疑問が膨らみ、2人との違いに新たな謎の輪郭が浮かび上がっていった。




