限界と解放
茜のお漏らしを見届けて、胸がどきどきしていた。
でも同時に、下腹部にじわりとした重みを感じて――自分の尿意が思った以上に進んでいることに気づいた。
――やばい……私も、そろそろトイレに行かないと。
そう思って「ちょっとトイレ……」と歩き出そうとした瞬間、茜が私の腕をとっさに掴んだ。
「彩はまだ我慢できるでしょ? 先に私の着替えを買いに行こ」
えっ、と声を詰まらせる。
確かに限界ではないけど、もう楽にしておきたいのに。
「……でも私、本当に行きたいんだよ」
そう訴えても、茜は首を横に振って微笑んだ。
「だめ。まだ大丈夫」
茜のペースに飲まれる形で、私は再びショッピングに付き合うことになった。
けれど歩くたびに膀胱が圧迫されて、じわじわと尿意は増していく。
足を閉じたり、さりげなくかがんだりしながらなんとか耐えていたが、1時間後――もう汗が出るくらい限界に近かった。
「茜……お願い、ほんとにトイレ行かせて」
顔を赤くして懇願すると、茜はようやく「そろそろ限界みたいだね。トイレに行ってきていいよ~」と笑顔で言った。
助かった、と急いでトイレへ向かう。
けれどそこには、お昼ご飯時のせいか長蛇の列ができていた。
仕方なく並んだものの、なかなか列は進まない。
私は両腿をくねらせ、ワンピースの裾を握りしめて必死に耐える。
ふと顔を上げると、少し離れたところから茜が私を見ていた。
柔らかな、でもどこか意地悪さを含んだ笑みを浮かべながら。
――見られてる……余計に恥ずかしい。
並び始めて5分くらい経ったとき、不意に(じょっ)と小さな温かさが下着に広がった。
「っ……!」
慌てて股に力を入れ、何とかそれ以上は止めた。
――ちょっと出ちゃった……。
顔が熱くなる。ワンピースだから、シミにはなっていないはず……。
でも次の波は容赦なく襲ってきた。
ぐっと下腹部が締めつけられて、もう止められないと直感する。
「ど、どうしよう……」
思わず列を抜け出し、階段へと駆けだした。
「一つ上のフロアなら、トイレが空いてるかも……」
そう信じて必死に足を動かす。
けれど階段に差しかかった瞬間、またしてもパンツの中が温かくなった。
「あっ……もう無理……っ」
一度溢れ出したら、もう止められなかった。
おしっこは次々に下着を突き抜け、太ももを伝い、靴の中に滴り落ちていく。
「いや……っ、やだ……」
必死にワンピースを濡らしたくなくて、とっさに裾をたくし上げる。
鏡のある踊り場でふと自分の姿が映り込んだ。
ややガニ股で白いパンツを晒し、そこから勢いよくおしっこを漏らしている自分。
「……っ、はぁ……」
羞恥で泣き出しそうなのに、下腹部から駆け上がる解放感に体が震える。
鏡の中の私は、赤い顔で、涙目になりながら……どこか恍惚とした表情を浮かべていた。
鏡に映る自分の姿を見た瞬間、胸の奥に広がっていた解放感は一瞬でしぼんだ。
白いパンツを濡らし、腿を伝うおしっこが靴に染み込んでいく。
その惨めな姿を直視したとき、頬が一気に熱くなる。
「……なにやってるんだろ、私」
羞恥で心臓が痛いくらい高鳴る。
これを茜に見られたら……きっと私はもう立ち直れない。
そう考えるだけで、涙がにじみそうになった。
そのとき――
「彩」
背後から、茜の声が聞こえた。
振り返ると、そこには買い物袋を片手にした茜が立っていた。
彼女の視線は彩の足元に注がれ、床に広がった水たまりを見て小さく笑みを浮かべる。
「……やっぱり、出ちゃったんだね」
優しい声色。でも、彩の心はますますかき乱される。
「違うの、茜……私、こんなの……」
言葉がうまく出ない。顔を真っ赤にして、スカートを握りしめる。
茜は少し首をかしげて、柔らかく言った。
「彩はまだ恥ずかしいんだね。でも、その気持ち……私は好きだよ」




