茜に相談
週末の午後。
人気のカフェの奥の席に、茜と向かい合って座っていた。
茜はベージュの細身のズボンに、シンプルな白いブラウス。落ち着いた大人の雰囲気が自然ににじみ出ている。
「……茜」
思い切って口を開いた。
「私ね、最近わざと……お漏らし、してみてるの。でも……全然慣れないの。恥ずかしいばっかりで……。どうしたら、“気持ちいい”って思えるのかな」
茜はしばらく黙って、ストローをかき混ぜながら彩を見つめた。やがて、少し含み笑いを浮かべる。
「……彩らしいね。順応しようって真剣に考えてるんだ」
「うん。でも……どうしても恥ずかしさが消えなくて」
そこで茜は声を落とし、語るように言った。
「気持ちいいと思えるのは……“我慢”にあるんだよ」
私は瞬きをする。
「我慢?」
「そう。私たちには、前の世界の記憶があるでしょ?トイレでちゃんとするのが当たり前だった世界。その記憶があるからこそ、背徳感があるの。『こんなところでおしっこしちゃいけない』『ズボンを履いたままなんてあり得ない』っていう思い。なのに我慢できなくて、こぼれちゃう。その瞬間の温かさとか、解放感が……気持ちいいんだと思う」
そう言って茜は、自分の細身のズボンの太ももを軽く指で叩いた。
「だからね、私はわざとパンツの中にしようとはしない。本当に我慢の限界で漏らしちゃうの。そのときが、一番いい」
私は俯いて、自分のワンピースの裾をぎゅっと握った。
「……そっか……私にも、その気持ちがわかる時が来るのかな」
窓から射す陽光の中で、茜はどこか誇らしげに微笑んでいた。
「一緒に我慢してみようか」
茜が軽く言った瞬間、私は思わず息をのんだ。
「……えっ、一緒に?」
自分の声が、少し上ずっているのが分かった。
茜は笑ってうなずく。
「うん。二人で、限界まで。我慢して、絶対に漏らしちゃダメって思うの。……その方がきっと、気持ちよく感じられるから」
(……その方が? そんなの、よけい恥ずかしいに決まってるのに……)
頭の中で小さく反論するけれど、口には出せなかった。
その時だった。
「すみません、ここで失礼します」
突然、背後から女性の声。
慌てて振り返ると、黒のチノパンをはいた店員さんが、トレーを抱えたまま立ち尽くしていた。
股間がみるみる濃い黒に変わり、太ももに沿ってつたった尿が床に落ちて小さな水たまりを広げていく。
あまりに堂々とした失禁に、私は呼吸を忘れた。
店員さんは最後まで出し切ると、何事もなかったようにモップを取りに行き、自分の作った水たまりを無表情で片付け始めた。
その横で、茜が小さく笑った。
「……さすがに私も、こういう光景に完全に慣れたわけじゃないんだけどね」
私は言葉を返せなかった。
(……私、本当に、この世界に順応できるのかな……)




