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突破口
その夜。
部屋に帰り、ベッドの上に腰を下ろすと、昼間の楓ちゃんの表情が頭から離れなかった。
萌ちゃんが失禁を当たり前のことと思えるようになったのは――美咲が“慣れた”からだ。
美咲が変化したことで、その周囲にいた萌ちゃんも自然と引き込まれた。
「じゃあ……楓ちゃんは?」
楓ちゃんは、私の“恥ずかしさ”を受け取ってしまった。
もし私がこのまま羞恥心を抱え続ければ、楓ちゃんもずっと……。
それを思うと、胸が苦しくなる。
「……私が、何とかしないと」
お漏らしをするたびに、ただ赤面して俯いている自分。
そのせいで楓ちゃんが、世界の常識から外れてしまう。
――どうすれば、私も“慣れる”ことができる?
頭に浮かんだのは、茜の顔だった。
大学時代からの友人で、今はアナウンサーとして活躍している彼女。
「あの日」以来、茜はお漏らしを“恥ずかしい”ままにはしなかった。
むしろ、自分の意思でギリギリまで我慢し、快感に変えているという。
「……茜なら……」
お漏らしが“気持ちいい”と思えれば、私だって順応できるかもしれない。
そうすれば楓ちゃんも……。
彩はスマホを手に取り、連絡先をじっと見つめた。
指が、送信ボタンの上で震えて止まる。
「……茜に、相談してみようか」
暗い部屋の中で、ディスプレイの明かりだけが彩の迷いを照らしていた。




