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二度目

ベッドの端に座ったまま、私は自分の膝をぎゅっと抱えた。

「……やってみる?」

胸の鼓動が速くなる。頭の中で否定と肯定がせめぎ合っていた。


外でやる勇気は、まだない。

茜みたいに堂々とできるわけじゃない。

だから、自宅で。誰にも見られないこの空間で――。


私は立ち上がり、寝室の明かりを消してみた。

少しでも暗いほうが、失敗しても誤魔化せるような気がしたからだ。

けれど、それでもやはり心臓はドクドクと大きな音を立てている。


「……あの日、カフェで一度やったじゃん」

自分に言い聞かせる。

でもあれは、衝動と流れで……今回は意識して自分から。


私はスウェットのズボンの前を軽く抑えた。

そこに意識を集中させると、急に恥ずかしさが込み上げてくる。

「なにやってんだろ、私……」

小さく笑ってごまかしたけど、手のひらは汗で湿っていた。


深呼吸をひとつ。

そして――意識的に、力を抜こうとする。


……出ない。


頭で「していい」と思っても、身体が拒んでいる。

これまで二十数年間、“トイレでする”という当たり前を守ってきた体。

それを裏切るのは、やはり難しい。


「……やっぱ無理かな」

そう思ったとき、ふいに下腹部に重みが走った。

飲み会で飲んだビールのせいだろう。尿意がまた強く波を打った。


その瞬間――。


じわっ……。

温かさが広がった。


「あっ……」

小さな声が漏れた。止めようと思ったが、止まらない。

ズボンの布地を伝って、股から太ももへ。

ソファに座り込むと、布がじわじわ濡れていく感触が背中に広がった。


「……ほんとに、しちゃった」


私は呆然と自分の膝を見下ろした。

暗がりの中でも、濡れて色の変わった部分がはっきりわかる。

羞恥と、奇妙な安堵。

どちらともつかない感情が胸を満たしていった。


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