表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/46

茜の告白

茜はグラスの水滴を指でなぞりながら、淡々と語り始めた。


「この前さ、夕方の収録を終えてトイレに駆け込んだんだよね」


「……トイレに?」

私は思わず聞き返した。


「そう。前の現場から移動する途中で渋滞にはまっちゃって。昼からずっと我慢してたから、もう限界で。収録中もずっと脚が震えてたくらい」


淡々とした口調なのに、その光景が妙に生々しく頭に浮かんできた。


「でね、やっとトイレの個室に入って、ベルト外そうとした瞬間……パンツの中がじわって暖かくなったの」


「……っ」

私は息を呑んだ。


「結局、そのまま脱ぐこともできなくて、便座に座って……ズボンもパンツも履いたまま全部出しちゃった」


彼女はそう言って、グラスを口に運んだ。

恥ずかしい思い出を話しているはずなのに、表情は不思議と落ち着いている。


「でもね……」


茜はそこで少し笑みを浮かべた。


「私、それ気に入っちゃったんだよ」


「……え?」


「私ね、学生のころからずっと――おしっこを我慢するのが趣味だったの」


さらりと言われた言葉に、私は言葉を失った。


「授業中とかさ、ほんとは途中で行けたのに、わざと我慢して。限界まで耐えたあとでトイレに駆け込むと、解放感がすごくて気持ちよかったんだよね。もちろん、そのときは漏らしたことなんて一度もなかったけど」


彼女は少し遠くを見るようにして続けた。


「でも、この前テレビ局のトイレで我慢しきれずに漏らしちゃったとき――恥ずかしかったけど、今までで一番気持ちよかったの。解放感がね、もうすごくて」


「茜……」


「だから私、この世界になってからはむしろ楽しいの。みんな人前で我慢するのが当たり前になったでしょ? だから、私の性癖が堂々と開放できるんだよ」


私は呆然としながら、彼女の顔を見つめていた。

あのミスコン女王で、いまや人気アナウンサーの茜が――こんな風に、自分の“我慢癖”を性癖として誇らしげに語るなんて。


胸の奥がざわめいた。驚きと、少しの戸惑いと……そしてほんのわずかな羨望が入り混じって。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ