変わってしまった朝
朝の光で目を覚ました瞬間、昨日までの惨めな気持ちが頭をよぎった。
(また彼の前で漏らしちゃって…恥ずかしかったな…)
そう思いながら体を起こすと、なぜか胸に奇妙な違和感が残っている。
リビングに入ると、テレビからアナウンサーの声が聞こえてきた。
「さて、本日のニュースです。昨日の調査によると、女性の8割以上が“尿意はできるだけ我慢し、限界に達したらそのままズボンや下着を濡らすのが自然である”と答えました」
思わず立ち止まった。
(え…なにそれ…?)
映像には街角のインタビューが流れている。
二十代のOL風の女性が笑顔で答えていた。
「トイレに駆け込むのはマナー違反ですし、我慢できなくなったら服のまましちゃうのが普通ですよね。みんなそうですし」
隣にいた女子学生も頷く。
「そうそう。わざわざ脱ぐ方が恥ずかしいし」
目を疑った。
昨日までなら、私がしたことは“恥ずかしい失敗”のはずだったのに、この世界ではそれが当たり前になっていた。
背後で彼が声をかけてきた。
「おはよう彩。昨日のこと、もう気にしなくていいよ。だって普通のことだろ?」
その言葉に、さらに混乱する。
「え…? 普通って…」
「だって、女の子はみんなそうするじゃん。俺の母さんも、職場の人もそうだよ」
彼は何事もないようにコーヒーを口にした。
私は自分の濡れたジーンズを思い出す。羞恥に顔が熱くなるどころか、テレビの中の女性たちのように「当然」として扱われている事実が頭を支配する。
窓の外を見れば、道端でOLらしき女性が足を止め、顔をしかめながらジーンズを濡らしている。その周囲の誰も驚かず、むしろ自然に通り過ぎていった。
(…この世界では、あれは“失敗”じゃないんだ)
胸の奥で羞恥と安堵がないまぜになる。
昨日の惨めさが、まるで“普通の行為”に書き換えられていく。
そして私は思った。
(もしこの世界が本当なら、私はもう隠さなくてもいいの…?)




