萌の失敗
カフェを出て、彩先輩と美咲先輩と別れたあと、楓と二人で駅へ向かって歩いていた。
だけど私は、もうずっと――午後からずっと、限界に近いくらいトイレを我慢していた。
「……ねぇ楓。おむつ、余分に持ってない?」
思い切って聞くと、楓は一瞬きょとんとしたあと、申し訳なさそうに眉を寄せた。
「ごめん……さっきのが最後だったんだ」
その言葉に、心臓がどきりと跳ねる。
「そっか……」
私はうつむき、太ももに力を入れて歩き続けた。
「大丈夫。頑張って帰ろう。家まで行けるって」
楓は明るく言ってくれる。私は「うん……」と答えたけれど、本当に耐えられる自信はなかった。
電車に乗り、座席に腰を下ろした瞬間、膀胱がきゅうっと縮んだように感じた。
「んっ……」
思わず太ももをぎゅっと押し付ける。お腹が張って苦しい。
けれど、さらに追い打ちをかけるようにアナウンスが響いた。
《ただいま事故の影響で、この電車はしばらく停車いたします》
「……え、うそ……」
全身から血の気が引いた。
車内では、他の女性客が次々と「いつものように」限界を迎えていた。
大学生くらいの女の子が、しゃがみこんでズボンを濡らしている。
OL風の女性はスカートをまくり上げ、水色のパンツとストッキングに広がるシミを隠そうともせず、ガニ股で失禁をしていた。
視界に飛び込むその光景に、体が一層反応してしまう。もう出したい、私も……。
「だめ……だめだめだめ……っ」
私は膝を抱えるように前屈みになり、必死に耐えた。
「萌、頑張って! もうちょっとで動くから!」
楓が隣で声をかけてくれる。その言葉をしがみつくように信じて、私は歯を食いしばった。
やがて電車が動き出し、ホームに着いた瞬間、私は立ち上がって足早に歩き出した。
「はぁ……はぁ……!」
汗で背中がじっとり濡れている。あと少し、あと少しで家に帰れる。
「ほんとに頑張って!もうすぐだよ!」と楓は言い残し、私は自宅へと急いだ。
やっと自宅のアパートにたどり着き、寝室へ駆け込む。
机の引き出しから新しいおむつを取り出して、ズボンを脱ごうとした、その瞬間――。
「っ……も、もう無理っ……!」
膀胱の奥がきゅうっと震え、次の瞬間、じょわぁぁ……と暖かい感触が広がっていった。
「やだ……やだやだ……!」
グレーのズボンの色がみるみる濃くなり、足の内側を熱い液体がつたっていく。じわじわと広がる染みが、床にぽたぽたと音を立てて落ちる。
私は必死で止めようとしたけれど、止まらなかった。全身の力が抜け、ただ立ったまま濡らし続けるしかなかった。
やがてすべてを出し切ったあと、私はぐったりとベッドに腰を下ろした。震える手で濡れたズボンと下着を脱ぎ、足元に落とす。
シミがくっきりと広がった水たまりを見下ろしながら、涙が止まらなかった。




