楓の違和感
目が覚めて、寝ぼけ眼のまま洗面所に入る。
いつものようにお風呂場に向かい、
パジャマのまま用を足そうとしたとき――ふと、胸の奥がざわついた。
「……なんでだろ。恥ずかしい……?」
そんなはずない。今まで何度もこうしてきた。パジャマを濡らして、そのままシャワーで流して――それが“普通”だった。
なのに今日は、体が拒むように足がすくんだ。
「……まあ、いっか。いつしてもいいし」
無理にすることもない。楓は尿意を抱えたまま家を出ることにした。
街に出れば、景色はいつも通りだった。
信号待ちをしているOLが、当然のように立ったままスーツを濡らしている。
駅のホームでは、女子高生たちがスカートを押さえながらしゃがみ込み、パンツに失禁していた。
「やっぱり私は立ったまま派かな」
しゃがむ人も多いが、楓は太ももを伝って流れる温かさが好きだった。だからわざわざベージュのチノパンを選ぶことも多い。今日もそうだ。濡れた跡で、我慢してた量が分かりやすいから。
――なのに。
会社へ向かう電車の中でも、足を軽く閉じながら落ち着かない。
ホームに降りても、歩きながらも、体が“する”ことをためらってしまう。
「なんで……? ここで何度もしてきたのに」
腹部はじんわりと重い。確かに尿意は溜まっている。
でも、いざとなると股間が熱を持つだけで、自然に出てこない。
「……まあ、会社ですればいいか」
少し笑ってごまかしながら、楓はデスクに向かった。
けれど、胸の奥に残った奇妙な違和感は消えない。
会社に着き、朝の挨拶を済ませ、自分のデスクに座った。
パソコンを立ち上げながら、楓はそっと脚を組み替える。下腹部が張って、頭の奥がぼんやりしてきていた。
「……そろそろ、出したい」
普段ならここで椅子に腰を下ろしたまま、自然に力を抜くだけ。
その後は更衣室に行って着替えればいい。
でも今日は力が入ってしまって、どうしても解放できなかった。
「なんで……? するだけなのに……」
膝の内側が熱い。少し身をよじってみるけれど、出てこない。出せない。
羞恥心――そんな感覚、お漏らしするのにはないはずなのに。
胸の奥がざわついて、心臓が早鐘を打っている。
午前中の会議が終わり、楓は廊下で彩、美咲、佐伯先輩の3人とすれ違った。
ふと目が止まる。
――彩先輩。
昨日、私が失禁させてあげた彼女。今日は黒いスカート姿で、どこか落ち着かない足取りをしている。
――美咲先輩。
少し顔が赤い。立ち姿が硬い。股間を庇うようにして歩いている。
――佐伯先輩。
優しい笑顔の奥に、わずかな緊張感。肩が強張っているのがわかった。
「……あれ?」
楓は眉をひそめた。
3人とも、失禁しそうな人特有の“もじもじ”した仕草をしているのに――気づいたら衣服は濡れていない。着替えていない。
それなのに、次に見かけたときには不思議と落ち着いた表情に戻っている。
「どうして……?」
楓は思った。
自分と同じ。
「出したいのに出せない」「恥ずかしくて体が拒んでしまう」――その違和感を、彼女たちも抱えているのではないか。
3人のことをもっと観察して、問いかけてみよう。
彼女たちも“自分と同じ”なら――なにか理由があるはずだ。




