新兵器
昼過ぎ。デスクでパソコンを打つ美咲の手が止まった。
少しだけ眉を寄せ、椅子に深く座り直す。
(……もう限界かも……)
彼女の視線は宙をさまよい、膝が小刻みに揺れている。
私は気づかぬふりをしたが、彼女の唇が小さく動いた。
「……やだ、もう……」
その瞬間、美咲の肩がわずかに震えた。
太ももに力が入るのを堪えきれず、吐息が漏れる。
(……あぁ……出ちゃってる……)
おむつが衣服の下で音もなく吸い込み、外からは何も分からない。
けれど美咲の表情は赤く火照り、視線は机の隅を見つめたまま固まっていた。
終わったあとも椅子に座ったまま背筋を伸ばせず、両手で膝を押さえ込む。
休憩に入ったとき、美咲が私に小さな声で囁いた。
「……やっぱり、恥ずかしいね。誰にも気づかれてないけど……」
恥ずかしそうではあるが、失禁よりはまだ羞恥心は少ないようだ。
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夕方。電話を終えた佐伯先輩が受話器を置いた瞬間、わずかに目を伏せた。
机の下で足首を重ね、腰が硬直する。
「……っ」
かすかな息を呑む音。
私はその横顔に気づいてしまった。
頬にうっすら汗が滲み、瞳は虚空を見つめる。
動きを止めた先輩の身体から、言葉にならない緊張が伝わってきた。
(あぁ……今……してるんだ……)
やがて肩が落ち、呼吸が乱れた。
彼女は机の下で両手を握りしめ、唇を噛む。
――そして数分後。
先輩は深く息を吐き、表情を整えた。
しかし私の視線に気づくと、困ったように微笑む。
「みんな気づいてないよね……? 音も……匂いも……」
「はい、大丈夫です」
「……なのに、どうしてこんなに恥ずかしいのかな、、」
彼女の声は少し震えていた。
二人とも、外からはまったく分からない。
けれど、排泄を隠しきれない羞恥心が表情ににじみ出ていた。




