幕間1
「例の反応、詳細は判明したのかね?」
――はい
「結果は、間違いではないのだな?」
――はい
「つまり、昨日岐阜で発生した超大規模なエネルギー反応の正体は不明」
「共鳴現象と仮定した場合の数値計測も不能。但し推定レベルの算出は可能、と」
「で……結果が少なく見積もっても100万以上、か。ハ、馬鹿馬鹿しい!!」
「落ち着きたまえ。そもそも戦場の周囲にはウチの連中しかいなかった筈だ。鐵と共鳴しのか?だとするならばこれ程のレベルだ、機体に何らかの影響が出ていてもおかしくは無い」
「しかしブラフマン・フレームに異常が出たという話は届いていない」
「フレームなど捨て置け。問題は、こんな桁違いの共鳴レベルを持つ人物が今の今まで見つからなかった方だぞ」
「いやいや。フレームに異常がないとすれば、なら一体何と共鳴したのだ?」
「分からんが、見落としたのは恐らくレベルが高過ぎたのではないか?現状の検査機器では精々1000が上限だ。まさかソレを遥かに超える人材の出現など流石に想定しておらん」
「オイオイ。中等教育で見落すのは止む無しとして、出生時の検査で見つからなかったなどあり得るのか?」
「だな。退学、あるいは進学拒否の可能性も無い訳ではないからな。出生時の方は……義務付けた以上、確実に調査していると思いたいが、何れにせよ絶対に見落とさんとは言えんか」
「機器の誤作動か、ただの見過ごしか。不明瞭だが、しかし一つだけはっきりとしている。コレは、少々規格外が過ぎる」
「いや、納得出来るのか?観測史上最高は256だぞ!!何かの間違い、桁を一つか二つ見間違えているとかではないか!?」
――間違いありません。これ程となると、共鳴レベル上昇に伴い段階的に使用可能となるフレームの全機能を最大限以上に引き出せるでしょうが
「が?その後は何だね?」
――桁が違い過ぎるので推測となりますが、仮に地球中の戦力を結集したとしてもなお一方的でしょう。無限のエネルギー、物理法則を無視した機動、空間を断絶する程の防御能力その他諸々。陳腐な表現をするならば世界最強。掛け値なしに、です。現時点でその正体不明の存在に勝つ術はありません
「確かに重力制御と防御フィールドを見れば現行機とは比較にならんが」
「はっきりと言ってくれるな。とは言え、ウチの精鋭でも成す術ないとなれば信じる他にないだろう」
「例の白騎士に続き、あの国はどうなっている?ヤツの調査も全く進行していないというのに」
「だな。アレもアレで規格外だが、僅か二度しか姿を見せていない現状ではどうしようもあるまい」
「片や豪雪に隠れ、力も性能も全く未知の白騎士。片や市街地に出現した謎の兵器か」
「しかもその兵器、未知の武装を搭載していたそうじゃないか」
「空間圧縮だな。ソッチは未だ小型化どころか、製造すら出来ていない」
「だというのに既に人型へ搭載していてる、か」
――はい。更に加えるならば、恐らくこれでも一部です
「おい、冷静に言っている場合か!!まさか、裏切りではあるまいな?」
――おや?もしかしてそうされる理由に心当たりがあるのですか?
「いや、ううむ……しかし、ならばどうする?協力を仰ぐ、べきなのか?」
「イレギュラーにもほどがある。例の計画、実行に移せたとてどうなるものか」
――そのプロジェクトB・Eの前倒しを提案します
「しかし、君ィ。少なく見積もっても100万を超える化け物相手では焼け石に水だぞ」
――では、どうしましょう。公表でもなさいますか?
「それこそ出来る訳が無かろう。特に国連だよ。奴等が何を言い出すか分かったものではない」
「ただでさえ黒鉄重工は脛に傷を持っているのだ。万が一、奴等の側につかれたらどうなるか分かったものではない」
「接触するべきだろうな。幸い、顔を知っている分だけアドバンテージはある」
「と、なればあの傭兵共を早々に処分する必要があるな」
「そうだな。所詮、代わりなど幾らでもいる連中だ。とは言え、最優先すべきは正体不明の兵器だ。何時でも処分できる連中など捨て置けば良い」
「ウム、何としても我々の側に引き込むのだ。国連側に回るだけならばまだしも、解析量産でもされたら……」
「では調査、及び接触を最優先としよう」
「そちらは一先ず、として白騎士の方はどうする?」
「並行はするが、優先順位は下げるしかあるまい。後は情報操作だな」
「ところで、社長にはどう伝えます?」
「あのお飾りの女に?ハッ、必要ないさ。必要な時に頭だけ下げさせておけばいいんだよ、アレは」
――愚かな連中。しかしこの反応、まさかアイツが?と、すればあの白騎士は……まさか?とすれば、もしや勘違いをしていた可能性が。ならば、計画の修正が必要か