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エピローグ 誰かの旅が終わるとき

 赤く燃える夕陽が、荒野を照らしていた。

 草木も育たない乾いた大地は、風が吹けば、土煙を起こす。

 その中に、炎上する蒸気機関車が、駅でもない所で停車していた。


 車体には、無数の穴が空いていた。

 大小さまざまな弾丸によって、出来た風穴だ。

 窓ガラスも割れ、中から複数人のうめき声も聞こえる。


 車両内では、様々な人種の乗務員パーサーが、血だらけになっていた。

 その中の一人、黒人男性の乗務員パーサーが、乗客の手当をしている。


 乗客は二十歳後半でショートの黒髪に真っ白な肌。

 全身黒づくめで、無地のシャツとベストを着ている。

 その側には、テンガロンハットが落ちていた。 


 女性は座席にぐったりと、動けずにいた。

 負傷して、口から血を吐き出していた。


 乗務員パーサーは、出血している女性の腹部を押さえている。

 しかし、黒のシャツからでも分かるぐらいに、血がどんどん広がっていく。


「もう、良い……パーサー、貴方は逃げなさい」


 乗務員パーサーは悔しそうな顔をしていた。


 乗務員パーサーは、床に落ちてる黒のテンガロンハットを拾って、


「必ず私奴わたくしめが、助けを呼んで参ります」


 と女性の頭にテンガロンハットを被せた。


 その場を離れ、乗務員が個室から一歩踏み出すと、大きな発砲音が、車両内に轟いた。

 それと同時に乗務員は、血を流して倒れた。


 コツコツっと、床を踏む足音がした。

 その足音が鼻歌と共に、車両内通路の奥から、こちらに向かってくる。


 金属音がして、少ない空薬莢が床に落ちて、転がる音が不気味に聞こえた。

 落ちた空薬莢が、負傷した女性の個室前まで転がってきた。


 その落とし主であろう人物が、女性の前に姿を現した。

 真っ白なスーツを着た、四十代の白人男性だった。


 ポマードで固められた金髪を両手で整えていた。

 男の手には、大口径の弾丸を使用するリボルバー式拳銃が握られていた。


「やあ、やあ、やっと見つけたよ。鉄の女」


 男性は、倒れた乗務員を踏んづけながら入ってきた。


 女性は無言で、スーツの男性を睨んだ。


「何だ、喋ってくれないのか? 寂しいなぁ、俺はまだ君を壊したつもりはないぞ。だから――――」


 男性は、女性の腹部を踏みつけた。


「勝手に壊れるんじゃあないッ‼」


 口から血しぶきが吹き出し、言葉にならない悲鳴を上げた。


 男性は足を上げると、胸元から白のハンカチを取り出した。 


 返り血で汚れた革靴を、ハンカチで拭き取る。


「どうやら君は油を漏れてるから、黙っているんだな。そうだ、そうに違いない。オズに出てくるブリキも、油を差さないと、動けなかった」


 男性は一人で話を進めていく。

 その間にも女性は、必死に負傷した身体を動かそうとする。


 だが、大量出血で体に力が入らない。

 男性は、持っていた拳銃の撃鉄を起こした。


「ああ、でも油差しがないのだ。だから、コレを代わりに食らわせて上げよう」


 銃口を向ける。


 女性はこれまでと、目を瞑った。


 そうして一発の弾丸が鳴り響き、誰かの旅を終わった。



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