なぜか高校の同期が夢に出てきて、そいつと前の席に座ってた女とパチンコに行く流れになる話
なぜか高校の同期が夢に出てきて、そいつと前の席に座ってた女とパチンコに行く話5
昔お婆ちゃんから言われたことがある。「大事なのは心意気。結果は後からついてくる」果たしてこれは本当なのだろうか。
高校生になって思ったことだが、心意気よりもまずは思いつきでも行動に移すことの方が大事ではないのだろうか。ミキはまず何よりも行動に移した。その結果は誰もが知っている通りだ。
――もしかしてお婆ちゃんが言っていたのは「行動するという心意気」ということだったのだろうか……。
「え、これで終わり?」
一通りの説明を聞いて、意気揚々とハンドルを少し回し、初めて銀玉がヘソに入ったあと、台の真ん中につけられた液晶画面を見たミキはそう呟いた。
「うん。ハズレ」
「…………」
そんなあからさまな顔でこっちみんな。
「これをみんな何回も何回も繰り返してアタリ引いてんだよ。おわかり?」
ミキはもう一度動かない液晶を見た後、こっちを見る。
「楽しい?これ」
一番言ってはいけないことを…。
「まぁとにかく何回かやってみろって。今日は俺の奢りでいいからさ」
「いやさすがにこの後は私の金でやるから」
「あっそ、まぁ俺も見てるから」
「頑張りな」と言い残しながら俺も自分の台にやっと向き合った。
ふとカルクはどうなったかなと思って意識を左に持っていくと耳に残るあのBGMが聞こえてくる。
(15分ってとこか。こりゃ本当に万発出ちまうかもな…)携帯で時計を確認し、そんなことを思った後は、自分の台と右の台に集中することにした。
俺の父親は厳しい人だった。自分が過ごす毎日のスケジュールは起きてから寝るまでの全てを事前に決められており、それを破ることはありえなかった。決して裕福だった訳では無い。ただ政治家を父に持つ家庭というだけ。
今思うとなぜ従っていたのかは疑問だが、父親は俺に対してだけではなく、自身にも徹底的に厳しい人だったせいで、それが当たり前なんだと子供ながらに思っていたのかもしれない。
雲が分厚く、とても薄暗い日。スケジュールではもう帰宅するはずの父親が帰ってこない。俺は決められたことをこなしながらも、内心とても動揺していた。何か事故が。どこかで転んで。などヤキモキしたものだ。しかし予定外のことはこなせない。そんな風に教えられてないからだ。
そしてついには俺が寝る時間になっても帰ってこず、俺は収まらない動揺を抱えたままその日は就寝した。習慣は侮れないもので、すぐに寝付いた。
ふと、雨の音で目が覚めた。まだ周りは暗く、スケジュール通りであればこのまま目を閉じ、また寝付くはずだった。だがこの時に限ってはどうしてもトイレに行きたくなってしまった。もうオネショする時期というのはとうに終わったと自覚していたが、ここで行かないといけないと何故か身体が、脳が言っている。でもスケジュールに無いことをすると折檻されると思った時、その折檻する人がまだ帰ってきてないことを思い出す。
「……すぐ寝るし」
あの時の俺はひどく後ろめたい気持ちになりながらトイレに向かった。俺は物心ついて初めて規則を破った。そしてそれがこの時だったのは、今から思えば運命だったのかもしれない。
父親は玄関で、濡れた体をそのままに、靴も脱がずに座り込み項垂れていた。
「父さん!」
俺はトイレに向かっていたことを忘れリビングまで行き、室内干ししていたタオルを一つ、父さんの頭にかけてあげる。
それで気がついたのか、父さんは何を捉えているのかもわからない眼で俺の方を向く。
「コウイチ……」
「父さんどうしたんだよ」
頭を拭いてあげながら声をかける。
父さんはされるがままになりながらも、また下を向き
「そうだったな……」
と誰に言うでもなく呟く。そして吐き捨てるように
「ついの世代……か」
そう、言った。
「おい!!」
突然向けられた大声にびっくりし、体ごと飛び上がる。
「お前それ右打たないと無くなっちまうぞ!」
「……え?」
液晶は確かにVを狙え!と大きく表示されている。
「うおっ!!」
俺は慌ててハンドルを回し込み、なんとか間に合ったことを確認した。
「さんきゅー」
「らしくないなぁ」
カルクは前を向き直して言う。
「どした。ぼーっとして」
「いや、ちょっとな」
右をチラッと見ると、当たらなさそうな演出を一つ一つ見逃さんとする女。
「俺だって物思いに耽ることだってあるさ」
「ふ~ん」
そこで追及しないとこがカルクの良いところだ。もっとも、ただ興味無いだけとも言えるが。