自動車部品卸売業編 〜プロパー融資はできないの?〜
いしかわ:こんにちわー。
◯□信金の石川です。
やまなか:いらっしゃいませ。
少々お待ち下さい。
社長、石川さんがいらっしゃいましたよ。
いちろう:やぁ、石川くんいらっしゃい。
いしかわ:今日はいい天気ですね。
バイクでここに向かってくるとき風が気持ちよかったですよ。
いちろう:そうだねえ。
今日は気持ちの良い日だ。
いしかわ:社長、それで本日のご用件はなんでしょうか?
いちろう:じゃあ本題に入ろうか。
じつはそろそろ融資をお願いしようと思ってね。
いしかわ:融資ですか!
ありがとうございます!
では戻ったら早速信用保証協会に融資の事前相談をしますね。
心の声:よし!
今月は融資案件が無かったから助かる。
これで今日は上司に数字を詰められないで済むぞー。
いちろう:いやいや、石川くん。
信用保証協会じゃなくてさ、プロパー融資にしてよ。
そろそろプロパー融資はできないの?
いしかわ:…プロパー融資ですか?
心の声:プロパー融資だと上司への説明も難しいしな。
稟議書も大変になるし…
信用保証協会の方が楽でいいのになぁ…
いちろう:石川くんの前任の時代からプロパー融資をお願いしているんだけどさ。
毎回信用保証協会の融資になるんだよね。
信用保証協会はさ、どこの銀行で借りてもいい訳でしょ?
それに、信用保証協会の枠はいざというときのために確保しておきたいんだよ。
だからプロパー融資にしてよ。
いしかわ:そうですよね。
おっしゃっていることはわかりますが…
ですがプロパーは難しいと思います。
いちろう:どうにかならないの?
いしかわ:そう言われましても…
いちろう:とにかく検討してきてよ。
そろそろプロパー融資使わせて欲しいんだからさ。
いしかわ:…かしこまりました。
心の声:どうしよう。
上司からはダメって言われるだろうな。
なんて説明しよう…
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いちろう:今回もプロパー融資は難しいだろうなー。
石川くんの反応みてたでしょ?
ありゃだめだな。
やまなか:難しそうですね。
石川さん、良い人ではあるんですけどね。
いちろう:突っ込んだ話になるとどうも頼りないよね。
まだ若いししょうがないけど。
でも融資はまた別だからなぁ。
やまなか:前任の方も結局プロパーは無理でしたからね。
いちろう:あいつも調子いいこと言って、結局プロパーは無理だったからな。
今回も信用保証協会の方向で考えておくか。
でもそろそろプロパー融資して欲しいんだよなぁ。
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あおい:あのー、すみません。
やまなか:いらっしゃいませ。
ご要件はなんでしょうか?
あおい:そこの角で車をぶつけてしまいまして…
その際にサイドミラーが曲ってしまって。
ちょうどここの会社が目に入ったものですから。
そのー、少し車を見てもらえないかなと思いまして。
やまなか:それは災難でしたね。
いま代表を呼びますので少々お待ち下さい。
あおい:恐れ入ります…
いちろう:どうも。
ここの代表をしている新谷一郎です。
あおい:私は榎本あおいです。
いちろう:車ぶつけたんですって?
うちは修理屋じゃないから大して役に立たないと思うけど。
まぁ紹介くらいだったらできるから、とりあえず車見せてもらっていいですか?
山中さん、石川くんから融資の件で電話があったら折り返すって言っといて。
やまなか:わかりました。
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いちろう:大した傷じゃないですね。
これくらいなら近くにある修理屋に連絡入れればすぐ対応してくれると思うよ。
あおい:ほんとにありがとうございます。
ところで話が変わるんですけど、さっき融資がなんとかって?
いちろう:ああ、信金から融資受けようと思ってるんだけどこっちの要望が思うように通らなそうでね。
さっき担当者が来てたんだけど、一回持ち帰って検討してくれって言ったんだよ。
あおい:もしよければ詳しくお聞かせ頂けますか?
私、銀行への融資を通すことは得意なんですよ。
車を見てもらったお礼もしたいですし。
やまなか:そうなの?
まぁ減るもんでもないからいいけど。
せっかくだからお願いしようかな。
あおい:はい。
あなたの融資通します。
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あおい:…なるほど。
今までの融資は信用保証協会のみだったので、プロパー融資の利用をそろそろしたいということですね。
いちろう:そうです。
信用保証協会はどの銀行でも通るわけですし、もしもの時のために枠を確保しておきたいと思いまして。
あおい:基本的には、信用保証協会の融資が通れば問題ありませんもんね。
◯□信金さんとの取引は何年くらいありますか?
いちろう:もうかれこれ10年以上かな。
あおい:メインバンクとして使っていますでしょうか?
いちろう:メインバンクという位置付けとか考えたことはなかったけど、融資は一番多いんじゃないかな。
山中さん、そうだよね?
やまなか:◯□信金さんの融資残高は一番多いです。
あおい:それでは預金量はどうでしょうか?
いちろう:預金かぁ。
やまなかさん預金はどう?
やまなか:預金は、〇△銀行が一番多いですよ。
決済口座として利用していますから。
あおい:そうですか。
次は決算資料も拝見させていただけますでしょうか。
金融機関は決算書の内容次第ではプロパー融資は難しいと言いますから。
いちろう:そうなんだ。
やまなかさん、決算書出してくれる?
やまなか:かしこまりました。
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あおい:決算書を拝見しました。
失礼かもしれませんが、決算書の内容だけではプロパーは難しいかもしれませんね。
いちろう:そうなの?
そんなに業況は悪いと思わないんだけどなぁ。
あおい:業歴も長く、おおむね業況も安定しています。
特殊な自動車部品の販売(卸売業)ですから、業況にも大きな変動はないと思います。
そう考えるとプロパー融資での取り扱いの土台には乗ります。
いちろう:へえ。
そんな考え方で判断もするんだね。
あおい:そうですね。
単純に決算書の中身だけで判断することもありますが、金融機関は様々な観点で融資の判断をしています。
ポイントは決まっているのでそこを押さえることが重要ですね。
いちろう:ちょっとそのポイント教えてくださいよー。
あおい:では具体的な方法をお伝えしていきます。
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あおい:金融機関では融資審査時に「稟議書」を作成します。
「稟議書」とは融資をして良いかどうかを判断する書類のことですね。
業種や決算の内容、取引振り等がまとめられた書類です。
いちろう:あー、石川くんもなんか言ってたね。
りんぎ、りんぎって。
あおい:稟議書を作成し決裁されて初めて融資可能な状態となります。
つまり、担当者が作成する「稟議書」を作成しやすくしてあげます。
いちろう:でもどうやって?
あおい:まず、金融機関からするとプロパー融資には信用保証協会の融資よりもリスクがあります。
返済が滞った場合に回収ができない可能性がありますからね。
いちろう:そうだよね。
あおい:そこで、金融機関が被るリスクを最小限に留めることが大切です。
つまり、回収の可能性を高める必要があります。
借入の金額は多いのと少ないのとではどちらがリスクが低いと判断されるでしょうか?
いちろう:そりゃ、少ない方だね。
あおい:ええ。
では借入の期間はどうでしょうか。
短い方と長い方どちらがリスクが低いでしょうか?
いちろう:短い方がいいね。
あおい:そうです。
このように金融機関側がリスクを抑えられるような形で融資の申請をします。
いちろう:なるほど。
あおい:ですから希望通りの条件とはいかないかもしれませんが、プロパー融資してもらうことを考えると多少の条件は目をつむることで審査が通る可能性が高くなります。
まあ、金融機関によってルールはありますが。
いちろう:いやぁ、なんだかプロパー融資をしてもらえるような気がしてきたぞ。
あおい:では具体的な条件を詰めていきましょう。
プロパー融資が通るように一緒に検討しましょうね。
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いしかわ:失礼します。
いちろう:おー、いしかわくん。
何度も来てもらってすまんねえ。
いしかわ:いえいえ、帰店するタイミングでしたので大丈夫です。
そちらの方はどなたでしょうか?
あおい:榎本あおいと申します。
いちろう:ちょっと色々あってね、融資のことでアドバイスをもらったから同席してもらっているんだ。
いしかわ:そうでしたか。
いちろう:早速なんだが、融資の件なんだけれどもなるべく信金さんの条件に沿った形で構わないから、プロパー融資を検討してもらえないかな?
いしかわ:条件というのは具体的にはどんなものを想定していますか?
心の声:検討っていっても難しいものは難しいもんなぁ。
いちろう:先ずは信金さんの信用を得たいから金額はそんなに多くなくても大丈夫。
借入の期間も短くしてもらっても構わない。
いしかわ:なるほど。
心の声:それなら上司への相談もしやすいし稟議書が書きやすくなるかも。
あおい:他行さんに預けている預金ですがこれも信金さんに移そうと相談していました。
いしかわ:本当ですか!?
預金のお付き合いは難しいとおっしゃっていたのでそれは助かります。
あおい:プロパー融資は金融機関のリスクが大きいので、そのリスクを最小限に抑えたいと考えています。
預金についてもいざという時は融資の返済に回すことができますから。
いしかわ:そこまで考えてくださるなんて助かります。
心の声:これなら大丈夫そうだ。
良い条件で交渉してきたなって言われるぞ。
あおい:ですので、信金さんが融資しやすいように検討いただけますでしょうか?
いちろう:石川くん頼むよ。
融資も預金もこれで名実共にメインバンクになるんだから。
いしかわ:ええ、そうですね。
メインバンクですから当行でご支援させていただかないと。
いちろう:まずは銀行さんが可能な範囲でプロパー融資してもらって、実績を作ってからはがっつり融資してもらうけどね。
いしかわ:あはは、お手柔らかにお願いします。
業況にもよりますが、初めて融資することが一番難しいので。
約束はできませんが一度融資できれば、次回以降はスムーズにいく傾向が多いですから。
あおい:では、借入条件、借入期間はこのような感じで。
金利についてもある程度譲歩しますのでプロパー融資を検討願います。
いしかわ:かしこまりました。
それでは早速社内で協議いたします。
いちろう:よろしく頼むよ。
良い連絡待ってるからね。
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あおい:ごめんください。
やまなか:あおいさん。
社長、あおいさんがいらっしゃいましたよ。
いちろう:おー、わざわざ悪いね。
あおい:いえいえ。
今日は紹介いただいたところに車を取りに来たついでに寄っただけですから。
それで融資の件はどうでした?
いちろう:あおいさんのおけげで無事にプロパー融資借りられたよ!
石川くんの前任時代からお願いしても1度も駄目だったのに。
ほんとありがとうね。
あおい:それはよかったです。
プロパー融資は信頼の証ですからね。
金融機関はも信用していないとプロパー融資はしませんから。
いちろう:信用保養協会の枠も確保できるし、資金調達手段が増えたことも大きいよ。
あおい:信用保証協会の保証が付いている融資だけが全てではないですからね。
金融機関もちゃんとお客さまのことを理解して融資することが大切だと思います。
プロパー融資はお客さまのことを理解していないとできない融資ですから。
いちろう:いやー、色々勉強になったよ。
内部事情もわかったし今回はいい経験になったよ。
ありがとう!
あおい:はい、ご希望が叶えられて良かったです。
あなたの融資通しました。