通称ブラック編 〜個信(個人情報)はどうなっている〜
あきら:はい、曽根ですけど。
きった:曽根様のお電話でしょうか?
わたくし、□○銀行融資係の切田と申します。
今少しお時間よろしいでしょうか?
あきら:あっ、はい。
大丈夫です。
きった:先日は融資のお申し込みありがとうございました。
本日はその結果をお知らせしたくてご連絡差し上げました。
あきら:はい。
それで…結果はどうなりましたか?
きった:審査の結果なのですが。
当行では残念ながら取り扱うことができないとう結果になりました。
ご希望に沿うことができずに申し訳ありません。
あきら:…理由を聞いてもいいですか?
きった:理由については総合的な判断とさせていただいております。
心の声:そりゃ断られた理由くらい知りたいよな。
でも個人信用情報が原因とは回答してはいけない決まりだし。
勤務先もしっかりしていて収入にも問題ない。
もちろん借入もない。
過去に事故があったんだから、今更どうできるもんでもない。
曽根さんに問題があるんだから、理由については心当たりはありそうなもんだけど。
あきら:総合的理由ってなんでしょうか?
きった:総合的に判断させていただいた結果でございます。
あきら:…そうですか。
わかりました。
審査してくださいましてありがとうございました。
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その日は気分転換も兼ねてホテルのラウンジで作テレワークを行っていた。
ホテルのラウンジだけあり、ゆったりとした空間で備品も豪華だ。
テレワークを行っている最中に先日申し込んだ融資の結果を知らせる電話が掛かってきた。
そんな場所で自らの融資の否決結果を知ってしまい、余計に惨めな気持ちになってしまった。
あきら:はぁ…
心の声:やっぱり、俺はブラックなんだろうなぁ。
学生時代にクレジットカードの支払いを忘れてしまったのが原因かな。
思い当たりがあることと言えばそれくらいだし。
カーローンすら借りられないんだから、これから先借入するのは難しいんだろうか。
それは辛いな…
でもディーラーでローンの申込みをしなくて良かったな。
ディーラーの店員さんに融資が通らないなんて知られたら恥ずかしかったから。
モデルチェンジする新しい車は現金で買えばいいか。
問題は将来的には住宅ローンを組めるかどうかってことだな
いやー、困った困った。
これじゃあ、仕事も手につかない。
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あおい:あのー、もしかして融資でお困りですか?
さっきあなたが電話しているときに総合的判断って言葉が聞こえて。
それだけだったら何のことかよくわからないと思ったのですが。
電話の後落ち込んでいる様子だったのと、ローンのパンフレットが見えましたので。
あきら:そうですけど…
あなたはどちら様ですか?
あおい:突然失礼しました。
私は銀行専門の経理をしている榎本あおいと申します。
銀行融資を通すことを専門にしているので、もしかしたら何かお力になれることがあるかもと思いまして。
あきら:銀行専門の経理ですか!?
それじゃあ、少し話を聞いてもらってもいいですか?
心の声:この人に話を聞いてもらったら、カーローンの融資は難しいとしても住宅ローンについては何かアドバイスを貰えるかもしれないな。
とりあえず今のままじゃ駄目なんだから。
ダメ元で話を聞いてみるか。
あおい:もちろんです。
あなたの融資通します。
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あおい:では、銀行との電話ののやり取りを教えてください。
あきら:はい。
先日カーローン融資のお願いをしていたんですが。
その審査結果の電話がさっき来まして。
結果はお察しの通り駄目だったんですけどね。
駄目な理由がよくわからなくて。
銀行からの説明は『総合的な判断』とだけで。
あおい:なるほど。
あきら:でも融資が駄目だった原因に心当たりはあるんです。
学生時代に作ったクレジットカードなんですけど、だいぶ前に入金を忘れてしまったことがあったんです。
それで引落しができなくて、カード会社からの連絡で気づいて入金はしたんですけど結構遅れてしまって。
あおい:それはいわゆる事故履歴ってやつですね。
その情報が登録されていて、銀行の融資審査に影響した可能性はあります。
あきら:じこ?
あおい:ええ。
クレジットカード返済が滞ったことを銀行では事故と呼びます。
世間的にはブラックと呼ばれていますね。
あきら:そうですか。
私はブラックなんですね。
今後もずっと、融資を受けられないということでしょうか?
将来的に住宅ローンは組みたいと思っているんですけど。
あおい:そんなことないですよ。
あきら:えっ?
本当ですか!?
あおい:はい。
“通称ブラック”になってしまっても対処方法はありますよ。
まずは状況を把握しましょう。
あきら:具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?
あおい:個信といわれる個人信用情報を確認してみましょう。
金融機関やクレジット会社が顧客の支払い能力を判断するために利用する情報のことです。
あきら:そんなもの私が確認できるんですか?
あおい:大丈夫です、自分自身の情報であれば確認できますよ。
個人信用情報の開示請求についてお伝えします。
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あおい:流れとしては、インターネットで信用情報を扱っている会社に自分の情報を確認したいから開示してくれと依頼します。
具体的な方法については調べながら手続きを取ったほうが良いですね。
あきら:なるほど。
ほんとだ、調べると出てきますね。
あおい:ええ。
日本には3つの信用情報機関があります。
CIC:㈱シーアイシー
JICC:㈱日本信用情報機構
KSC:全国銀行個人信用情報センター
あきら:何がどう違うのかさっぱりです。
あおい:簡単に言ってしまうと、どれも独自に信用情報を集めていて、金融機関によって利用している信用情報機関が違うんです。
厳密に言うと細かい違いはあるのですが、いちいち覚える必要はありませんよ。
今回はクレジットカードなのでCICを確認すれば大丈夫ですが、念のため全ての個人信用情報を確認してみましょう。
あきら:わかりました。
一個ずつ案内通りに進めれば大丈夫そうですね。
あおい:そうですね。
注意点としては、個人信用情報の開示請求は会社ごとに手続きも異なりますし、郵送での対応をしている機関もあります。
全部揃えるには時間がかかりますから、続きは全部揃ってからにしましょう。
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あきら:おまたせしました。
やっと全部の情報開示時が終わりましたよ。
あおい:それは良かった。
早速中身を確認していきましょうか。
あきら:お願いします。
見方が難しくて困っていたんです。
あおい:最初はそう思いますよね。
でも見慣れると難しくはないですよ。
そう何度も目にするものでもないですけどね。
あきら:特に何も書いていないように見えるんですけど。
どうでしょうか?
あおい:ご覧になっていただいて何か気づきませんか?
あきら:借入の履歴がほとんどありませんね。
あれ、クレジットカードの履歴もない。
あおい:延滞や破産等の金融事故については、一定年数が経過すると消えます。
情報開示によると現在、個人信用情報上ではあきらさんの過去の事故は確認できません。
あきら:それは良かったんですけど。
それなら、どうして審査が通らなかったのでしょうか?
あおい:それについてもおおよその検討はついています。
どういうことかというと、
あきらさんが以前に事故を起こしてしまったクレジットカードの保証会社と今回融資を申し込んだ銀行が利用している保証会社が同じではないかということです。
個人信用情報上に記載はなくても、同一の保証会社には記録が残っています。
つまり、過去に事故のあった保証会社では審査が通りません。
あきら:んー、なんか難しいですね。
あおい:あきらさんが融資をお願いしたのって1つの銀行だけですよね?
言い方を変えれば、別の保証会社を利用している銀行から融資を申し込めば審査が通るということです。
あきら:えっ、そうなんですか!?
たしかに融資を申し込んだのは□○銀行だけです。
あおい:金融機関がどの保証会社を利用しているかは、融資商品説明書で確認することができます。
例えば、信用金庫さんにはしんきん保証基金という保証会社があります。
こちらで審査してみれば通るかも知れませんよ?
あきら:融資を断られた後にそんなことができるのですか?
あおい:保証会社によっては保証基準も異なりますし、過去の事故に対する扱いも異なっています。
融資を申し込んでみる価値はあるかと思います。
今回のケースの場合には、担当者の方には内密にした方が良いかも知れません。
保証会社の審査は通ったものの、金融機関の審査が通らないケースもあるので。
嘘を付くのは良くないですが、聞かれないことには答えなくても大丈夫ですよ。
あきら:はい。
肝に命じておきます。
あおい:今は信金さんでもインターネットで融資の申込みができるところもありますから。
今審査申込みしてみましょうか。
あきら:はい。
可能性があることがわかって結果が楽しみになってきました。
あおい:審査が通ってから喜びましょうね。
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あきら:あおいさん、ネット融資審査の手続きが終わりました。
あおい:お疲れさまでした。
回答を待ちましょう。
少し時間がかかると思いますから、用事を済ませてきますね。
あきら:はい。
回答がくるまで緊張します。
あおい:今度は審査通ると良いですね。
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あきら:あおいさん、審査の結果についてのメールが来ました。
あおい:それで、結果はどうでしたか?
あきら:それがじつは、まだ内容を確認していなくて。
せっかくならアドバイスをくれたあおいさんと一緒に確認しようと思って。
あおい:そうでしたか。
それではあきらさんのタイミングでどうぞ。
あきら:やっぱり緊張しますね。
大学の合格発表を思い出します。
えっと…
審査通りました。
無事に融資審査通りましたって!
やりました、あおいさん!
あおい:良かったです。
諦めないで挑戦してみるものでしょ?
あきら:ほんとそうですね。
最初は半ば諦めていたのに。
本当に通るものなんですね。
あおい:とはいっても、まだ事前審査の状態ですから手放しで喜べる状態ではありませんよ。
案内に従って本審査についての手続きを進めましょう。
あきら:はい!
油断は禁物ですね。
それにしても嬉しいなー。
結果がわかったら改めてあおいさんに報告しますね。
あおい:はい。
いい結果が聞けることを楽しみにしています。
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一時は融資を断られ諦めていた曽根。
今後自分が住宅ローンも組めない可能性で頭をかかえていたが、
あおいのアドバイスにより無事にその懸念も払拭できた。
今日は、諦めていたカーローンの最後の手続きをするために銀行に足を運んでいた。
銀行員の波乗り挨拶:ありがとうございました。
あきら:よし、手続きは全部終わった。
これも全部あおいさんのおかげだな。
すぐに報告しないとな。
えっと、電話番号はと。
あおい:はい、榎本です。
あきら:あおいさん、こんにちは曽根です。
今ちょうど銀行でのカーローン手続きが終わったところなんです。
報告しなきゃと思ってすぐ電話しちゃいました。
本審査も通って、融資金を明日ディーラーへ振込んでもらうことになりました。
あおい:それはなによりです。
あきらさんの頑張りの賜物ですね。
おめでとうございます。
あきら:全部あおいさんのおかげですよ。
これで住宅ローンの審査にも希望が持てるようになりました。
じつは今、結婚を考えている人がいて。
結婚してマイホームを手に入れるのが夢なんですよ。
昔の失敗で融資は通らないと思っていたので、今回は本当に嬉しかったです。
あおいさん、本当にありがとうございます。
あおい:今回の件で自分の個信状態を正確に把握できましたし、注意点についてもしっかり学びましたからね。
住宅ローンもきっと大丈夫ですよ。
ぜひ、その素敵な夢を叶えてください。
あなたの融資通しました。