金利引下げ編 〜金利を下げる魔法の言葉〜
よしだ:いらっしゃいませ。
あ、坂田さま。
本日はお仕事の方はお休みなんですか?
あきとし:吉田さん、こんにちは。
今日は会社は休みを取ったんですよ。
会社員だと平日の日中は中々時間が取りにくくて困っちゃいます。
よしだ:そうだったんですね。
本日はどのようなご用件でしょうか。
先日、新しい不動産融資についてご検討されていると仰っていたのでその件でしょうか?
あきとし:その件はまだ検討中なんですが。
えーとですね、じつは。
御庫でお借りして購入した投資用のマンションの件なんですが。
そのー、金利の見直しのお願いをしたいと思いまして。
よしだ:なるほど。
金利の見直しというのは、金利の引下げのことでしょうか?
心の声:坂田さんはたしか、うちとしか融資取引はないはずだよな。
他行に既に借換を提案されていて、金利の安い側に付こうとして金利の引き下げを要請してきている?
考えすぎか。
サラリーマン大家だから日中に他行と交渉するような時間も持てないはず。
少し探りを入れてみるか。
あきとし:…はいそうです。
お願いできないでしょうか?
心の声:うわー、吉田さんから笑顔が消えたー。
一気に緊張感が出てきちゃった。
この感じ苦手だな。
よしだ:今より金利を下げるというのは…
ちなみに坂田さん、新しく検討していらっしゃる不動産は引き続き当庫で融資をご検討していらっしゃるということでよろしいですか?
あきとし:ええ、そうですけど。
私が取引しているのは御庫だけですし。
よしだ:それは良かったです。
じつは金利の引下げについてなんですけど、当初はその金利でご納得されてお借入れいただいているので途中で下げるというのは難しいんです。
新しく検討されていらっしゃる不動産の方であれば、最初に金利を優遇させていただくという方法も取れるかと思いますがいかがでしょうか。
心の声:他行への借換という線はたぶん無いな。
金利の引下げなんて数字にならないどころか、事務負担で結構時間が取られるだけで成績にプラスには働かないし。
それっぽいことを言って現状のままで納得してもらうか。
あきとし:それは嬉しいですが…
やっぱり少しだけでもお借りしている金利の引下げは難しいでしょうか。
よしだ:申し訳ありません。
当初その条件でご融資させていただきました訳ですし、それを今になって変えるというのは難しいですね。
あきとし:購入の時は、他に貸してもらえる銀行もなかったので、本当に感謝しています。
ただ、少し高いのではないのかなと思いまして。
よしだ:確かにインパクトのある住宅ローンの金利なんかと比べてしまうと高く感じてしまいますよね。
住宅ローンは生活に絶対必要な『住居』なので、多くの人が利用する商品だから安く設定されているんです。
しかし、投資用のワンルームマンション融資の金利としてはだいたいこのくらいが一般的なんです。
むしろ、もっと高い金利の人もたくさんいらっしゃるくらいです。
実績を積んでいって段々と金利を下げていくというのが投資用の不動産融資をしている方の印象ですね。
吉田さんも次の不動産融資の際には金利について頑張らせていただきますよ。
心の声:こんな感じで納得してくれ。
単純な金利の引下げなんて手間暇がかかるだけよ。
あきとし:わかりました、ありがとうございます。
今後ともよろしくおねがいします。
よしだ:お役に立てずに申し訳ありません。
いつでも不動産融資のご相談お待ちしています。
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信用金庫からの帰り道。
一息付くためにカフェに立ち寄った。
あきとし:はぁー。
心の声:金利の引下げのお願いはだめだったな。
吉田さんの言うことももっともだししょうがないか。
それに次の融資は金利下げてくれるって言ってくれたし、それで良しとするか。
サラリーマン大家として不動産融資を始める時、どこの銀行にも断られて唯一助けてくれたところだしな。
今は返済に困っている訳じゃないんだけど、近隣に新しい賃貸住宅が増えてきて家賃相場が少し値下がりしているのが気がかりなんだよな。
先月も古い入居者さんが退去して、新しい入居者さんが決まったのは良いけど、家賃を少し下げることになっちゃったし。
せっかく有給休暇も取ったんだから、新しいく買う不動産についてでもこのまま調べてみるか。
ここに来る前に不動産屋で良さげなチラシをたくさんもらってきたことだし。
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あおい:あの、すみません。
このチラシ落ちましたよ。
あきとし:あっ、すみません。
拾っていただきありがとうございます。
あおい:いえいえ、お気になさらず。
失礼ですが、不動産のチラシばかり見受けられますがお仕事関係ですか?
あきとし:ああ、これは副業みたいなもんです。
私こう見えてサラリーマン大家なんですよ。
どの不動産を次に買おうか悩んでいたらこの通り、散らかしちゃいました。
あおい:そうだったんですね。
申し遅れました、私は銀行専門の経理担当をしている榎本あおいと申します。
職業柄か、こういうチラシにはついつい目が行ってしまうんですよ。
あきとし:これはご丁寧にどうも。
私は坂田昭敏と申します。
メーカーの営業をしていて、先程お伝えしたように不動産も持っています。
今日は有給休暇を取って、不動産情報を見ていたんですよ。
今持っている不動産を買うために信金さんに融資してもらっていて、本当はその金利を下げてもらうために休みを取ったんですけどね。
難しいって言われてしまって断念しましたけど。
時間が空いたからこうして不動産情報を集めているんです。
あおい:それは興味深い情報ですね。
チラシと同じくらい気になります。
よろしければ詳しくお聞かせください。
ひょっとしたらその金利、下げられるかもしれませんよ?
あきとし:えっ、本当ですか!?
是非聞いてください。
あおい:もちろんです。
あなたの融資通します。
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あおい:それでは信金との取引状況や金利のやりとりについて教えてください。
あきとし:はい。
投資用不動産を5年前に購入した際に信金さんに融資してもらいました。
その時は融資を受けるのが初めてで、複数の銀行に融資を断られた後だったので本当にありがたかったです。
借入してから5年間1度も返済に遅れたことはありません。
少額ではありますが積み立てについても協力していて、満期が来たら定期預金にしています。
当初はどこの銀行にも相手にされなかったので、金利についても受け入れていたんですけど。
ここ数年で新しい賃貸住宅がどんどんできてきて、私の不動産についても先月入居者が退去してしまったんです。
なんとか新しい入居者は決まったんですけど、最近の近隣の家賃相場が下がっている兼ね合いもあって家賃を下げざるをえませんでした。
今すぐ返済がどうこうというわけではないのですが、この先もこういう状況が続いてしまったらと思うと不安で。
それで少しでも金利を下げて月々の負担が軽減できないものかと信金さんに掛け合ったんですけど、理由とか思っていることをあんまり上手く伝えられなくて。
あおい:それでどんな反応でしたか?
あきとし:今の融資はお互いに合意の上で契約したものだから金利を下げるのは難しいと。
そのかわり、次の不動産融資については金利を頑張るって言ってくれました。
あおい:なるほど。
あきとしさんはその担当者さんとは融資を受けてからの付き合いですか?
あきとし:不動産融資を受けたときにお世話になった担当の方は異動してしまいまして。
今の担当さんになってから2年くらいです。
あおい:信金から何かお願いをされたこととかはありますか?
例えば積み立てしませんか?とか新商品でましたよとか。
あきとし:最初に融資を受けるときにされました。
その影響で今でも積み立てをして満期になったら定期預金に移しています。
最近は新しい不動産融資についての勧誘が多いですね。
あおい:そうでしたか。
だいたい検討がつきました。
次は金利を下げる作戦を立てましょうか。
あきとし:えっ、金利を下げることできるんですか?
あおい:断言はできませんが、可能性はあります。
詳細な借入状況について確認させてください。
資料はお持ちですか?
あきとし:はい。
金利を下げてもらうために一通りは持ってきました。
これでよろしくお願いします。
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あおい:おっしゃってたように、今まで返済に1度も遅れはありませんね。
あきとし:はい。
家賃の入金口座と返済口座が一緒なので資金不足になったことはないです。
資金が貯まっても出金することはしないようにしていました。
あおい:それは良い心がけですね。
再度確認ですけど、職業は会社員でよろしいですか?
会社員の収入の他に投資用不動産からの不動産収入があると。
あきとし:その通りです。
サラリーマンでもできる副業を探しているときに不動産経営のことを知ったことがきっかけで不動産投資を始めました。
あおい:副業もブームになっていますからね。
ご自宅は持ち家でしょうか?
あきとし:はい、持ち家です。
住宅ローンはありますが。
あおい:わかりました。
なにか他に借入をしているということはありますか?
あきとし:いえ、ないです。
借入は住宅ローンと不動産融資だけです。
あおい:なるほど。
住宅ローンと不動産借入の月々の返済額と、給与収入と不動産収入を対比させてと…
月々の返済は、給与収入と不動産収入で十分賄えますね。
あきとし:はい。
心配性なので、無理のないように借入をしているつもりです。
あおい:あきとしさん、それは大切なことですよ。
借入が可能だからといって、無理して借りてしまい返済に苦しんでいる人は残念ながらたくさんいます。
そのあきとしさんの姿勢のおかげで、今回の金利の引下げは可能になると思いますよ。
あきとし:そうなのですか!?
だって、さっき断られましたよ。
あおい:そこは交渉事ですよ。
金融機関だって全ての人の金利を下げていたら利益を取れなくなってしまいますからね。
そこで今回、金利を引下げる”魔法の言葉”があります。
あきとし:魔法の言葉?
あおい:ええ。
それでは順を追ってお話していきます。
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あおい:まず前提として、金利を引下げても金融機関や事務を行う担当者にとってメリットはありません。
慈善活動をしているわけではありませんからね。
少しでも高い金利で収益を上げたいと常に思っています。
そのことを頭に入れると、あきとしさんのようにその場をやり過ごすような対応をされることは自然な流れです。
あきとし:それはそうですよね。
私も営業職についているのでそのへんの交渉はわかります。
信金さんの収入が減ってしまいますもんね。
あおい:そうですね。
なので、少し見方を変えてみましょう。
もしも金融機関側がいきなり全額返済をすると言われたらどう思うでしょうか。
これから発生するであろう金利についてはもらえなくなって、収益が無くなってしまいませんか?
あきとし:なるほど、たしかに。
でもそれだけお金を持っている人であれば最初から借りないような気が。
あおい:それでは、その返済資金を他の金融機関から調達してきたとしたらどうですか?
つまり、借り換えってやつです。
あきとし:そうか、そういう方法があるのか。
それならたしかに全額返済が可能ですね。
あおい:そうです。
ただし借り換えにはいくつか注意点もあります。
借り換えには諸費用が発生します。
諸費用を負担してまで、借り換えする必要があるのかという部分は把握しておく必要がありますね。
あとは借り換えをしてしまうと、元々借りていた金融機関との関係性が悪くなってしまう傾向にあるということです。
この辺の注意点を見落としてしまい、後になって後悔している人も多いんですよ。
あきとし:諸費用を把握しておくということは理解できたんですけど、金融機関との関係性という部分がいまいちピンとこなかったんですけど。
あおい:簡単に言ってしまうと仲が悪くなるということです。
恋愛に例えてみましょうか。
長年付き合っていたカップルがいて、ある日突然「好きな人ができたからあなたとは別れます。」と告げられたらどうでしょう。
あきとし:それは大変にショックですね…
あおい:そうですね。
そのショックから立ち直ってからは人それぞれ思うことは違うと思います。
しかし、金融機関の場合はほぼ確実に悪感情が残ります。
「貸してやった恩を忘れて借り換えをするのか。」とかね。
恋愛感情ではなく、お金の付き合いですから自然ではありますが。
別に新しい金融機関にお世話になるから関係ないと思うかもしれませんが、本当に困るのは借り換えする時ではないんです。
借り換えをした金融機関が思ったよりも不親切だったら?新しく融資はできないと言われてしまったら?
こういう懸念事項はたくさんありますが、いざ起きてしまったときはどうでしょう?
元々借りていた金融機関に頼み込めますか?
「借り換えをしたのはあなたなのだから、うちではもう面倒を見れません。」と言われることは十分ありえます。
当時の担当が異動していたとしても、履歴は残っているのでどう判断されるかはこちらではわかりません。
あきとし:話を聞いた時に借り換えをすぐにでもしようと思っていましたが…
やっぱり、借り換えはしない方が良いんじゃないかという気持ちになってきました。
あおい:少し驚かせすぎてしまいましたね。
でも実際に起こり得ることですからしっかり知っておかないと。
こちら側も丁寧に対応すれば大丈夫です。
たとえ借り換えをするにしても良好な関係を築いていくこともできますし。
今回のポイントは借り換えありきではなく、借り換えを選択肢に入れて交渉を行っていくところにあります。
金融機関にとっては金利がゼロになるのか、少し減るのかという選択に迫られるわけですからどちらの方がマシかということです。
あきとし:なるほど。
あおい:金融機関では融資残高や融資先数が目標となっていることが多いです。
融資から発生する利息が収入の中心となっている信金では尚更です。
借り換えをされてしまうと困るので当然それを阻止しようとしてきます。
あきとし:そのことを利用して交渉していくということですね。
あおい:そういうことです。
そろそろ”魔法の言葉”がなんなのか自分で答えられるようになったんじゃないですか?
あきとし:金利が高いように感じるので、「借り換えを検討しています。」が魔法の言葉でしょうか。
あおい:ばっちりですね。
この魔法の言葉が通用するケースとしないケースがありますがあきとしさんの場合は有効と判断しました。
もう少し準備をして日を改めたうえで、信金さんに相談にいきましょう。
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あきとし:あおいさん、ここまで準備しておけば大丈夫ですかね?
あおい:ええ、できることは全部やりましたから。
あきとし:そうですね。
もしこれで金利が下がらなくても色々とやりようはあるんだと勉強になりました。
ありがとうございます。
あおい:お礼はまだ早いですよ。
これからが本番なんですから。
あきとし:それもそうですね。
なんだか緊張してきました。
あおい:大丈夫、自信を持ってください。
私も隣で聞いていますから。
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準備を整えたあきとしはあおいと共に◯✕信金へと向かった。
よしだ:いらっしゃいませ。
坂田さん、本日は新しい不動産についての融資のご相談ですか?
心の声:隣の人は不動産会社の人かな。
持ってきたのが融資しやすい物件だと良いけど、まぁ業者の人と一緒に来ているなら大丈夫か。
あきとし:こんにちは。
今日はその件ではありません。
先日お話した金利の引下げの件で、もう少しお話をさせていただきたくて改めて来た次第です。
こちらの方は榎本さん。
金融面で色々とアドバイスをしていただいている方です。
私の借入状況についても全て把握してもらっています。
あおい:はじめまして。
榎本あおいと申します。
同席させていただきますので、よろしくお願いします。
よしだ:はぁ、どうも。
坂田さん、金利の件は先日お伝えした内容でご納得していただいたと思っていましたが。
あきとし:そのことなんですが、吉田さんから難しいとのお話があったので近くの〇□銀行さんに相談してみたんですよ。
そうしたら、今の金利よりもかなり安い金利で借り換えできることになったんです。
私は今『借換を検討しています。』
そのことを今日はお伝えしようと思って。
よしだ:えっ!!
◯□銀行さんでのお借り換えですか?
どのくらいまで話は進んでいらっしゃるのでしょうか?
あきとし:融資の残高証明書を持ってきてくれと言われました。
発行をお願いしてもよろしいでしょうか?
よしだ:少々お待ち下さい。
心の声:マズいマズい!!
残高証明書の発行まで求められているのか。
これは借り換えについて本気で考えているな。
融資残高が減ったらまずいし、事業先の数字も1先落ち込むのはもっとまずい。
上司と相談してなんとか借り換えを阻止しないと。
上司と相談するために席を離れる吉田
あおい:あきとしさん。
かなり様になっていましたよ。
何の心配もなく聞いていられました。
あきとし:これもあおいさんのおかげですよ。
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よしだ:お待たせして申し訳ありません。
上司と相談して参りました。
金利の引下げについて検討させてください。
ですからそのー、借り換えについては一旦白紙に戻していただけないでしょうか?
あおい:あれ、金利については当初の契約があるから下げるのは難しい。
そう伺ったんですが、違いましたっけ?
よしだ:…も、申し訳ありません。
あおい:金利の引下げはたしかに数字にならないことかもしれません。
ですが、御庫からの積み立て等のお願いも坂田さんは拒否せずにお付き合いしてきました。
自分の都合の良いことだけへの対応というのは、おかしくありませんか?
よしだ:…おっしゃるとおりです。
あおい:当たり前のことですが、返済に遅れもありません。
現在の収入と返済のバランスにも問題ありません。
借入した時の恩を忘れた訳ではありませんし。
借り換えの話となってから急に動くというのどうしたものかと、そう思ってしまうんですよ。
あきとし:まぁあおいさん、そのへんで。
私も〇✕信金さんと吉田さんにはお世話になっていますから。
吉田さんのご提案通り、もし金利を引下げていただけるのであれば今回借り換えはしません。
金利の引下げを検討していただけますでしょうか?
よしだ:はい。
早急に対応いたします。
ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。
こうして金利の引下げ交渉は”魔法の言葉”がきっかけで無事に成功した。
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あおい:へぇー、ここがあきとしさんのマンションですか。
あきとし:区分所有なので、持っているのは1部屋ですけどね。
あおい:駅からも近いし、利便性の高い場所ですね!
あきとし:空室が出てもすぐ入居になる場所なので助かります。
あきとし:そういえばあおいさん、信金さんでの会話びっくりしましたよ。
急に雰囲気変わるんですもん。
あおい:まぁあれは演技もありますよ。
あきとしさんは◯✕信金さんとの付き合いは今後も続きますからね。
なるべく良好な関係でいて欲しかったので、ああいう言い方をすれば私に悪感情の矛先が向くかなと思いまして。
あきとし:そこまで考えてくれていたんですね。
本当にありがとうございます。
おかげで金利が1%も下がりましたよ。
あおい:はい、金利1%分の演技です。
そういえば、新しく買う予定の不動産は決まったんですか?
あきとし:はい。
2つ候補があるので、吉田さんに相談に乗ってもらいながら決めていこうかなと。
あおい:さすが、サラリーマン大家さんですね!
あなたの融資通しました。