カフェ開業編 〜母さんが作る思い出のケーキ〜
さとる:あ、あのー…
やまもと:いらっしゃいませ。
本日はどのようなご要件でしょうか?
心の声:うわぁ、この人暗いなぁ…。
ちゃんと会話できるか心配だなー。
ちゃんと言ったことに反応してくれればいいけど(笑)
さとる:えと、融資をしていただきたくて。
今日はその融資の相談で来ました。
普段は会社員として働いていて、融資を受けたことがないので相談に乗ってもらってもよろしいでしょうか?
やまもと:大丈夫ですよ。
具体的にはどのようなご相談でしょうか?
さとる:カフェを開業したいと思いまして。
そのための開業資金について融資していただけないかと。
やまもと:カフェですか。
私も良くカフェには行くんですよ。
カフェって良いですよね。
ちなみに今はどのようなお仕事をされているのですか?
心の声:カフェかあ、うまくいく人の方が少ないのに。
それにしても飲食店って本当にみんなやりたがるよなぁ。
簡単でとっかかりやすいってイメージがあるのかな、失敗したときのことも考えないで。
さとる:今はこちらの会社で会社員として勤務しています。
やまもと:あっ、◯✕商事さんにお勤めなのですね。
大手企業さんじゃないですか、存じ上げていますよ。
心の声:◯✕商事って言ったら大手企業じゃん。
まじかぁ、カフェなんて開業しないで会社員のままの方がいいじゃないか。
給料だって俺よりも上だろうし、羨ましい。
やまもと:さとるさん、差し支えなければカフェを開きたいと思った動機を教えて頂いてもよろしいでしょうか?
◯✕商事は飲食関係の会社ではないですよね。
お仕事でのご経験とカフェ開業との関連性がいまいち無いように思うのですが、今のタイミングでカフェ開業を決断したのは一体どのような理由によるものでしょうか?
さとる:◯✕商事で働いてきた経験が直接活かせるわけではないのですが。
実は、美味しいチーズケーキのレシピを知っていまして。
家族にも評判だったので、そのチーズケーキを主力商品としてカフェ開業をしようと思いました。
やまもと:なるほど、それは随分と思い切った判断ですね。
私だったら◯✕商事の肩書を捨てて自分でカフェを開くという選択を取る勇気はないですよ。
心の声:勇気じゃなくて無謀だと思うけどな(笑)
それにしても、美味しいチーズケーキのレシピか。
大手企業を退職してまでカフェを開くというにしては動機が弱いな。
まぁ会社でポジション争いに負けたとかトラブルがあったってところかな。
覇気がなくて暗いもんなー。
さとる:えぇ、まあ。
創業計画書についてなんですが、ネットで調べて作れるものは作ってきました。
内容の確認をしていただいてよろしいでしょうか?
やまもと:わかりました。
資料を拝見させていただきますね。
心の声:大手に勤めているだけあって書類は要点を得ていて出来が良いぞ。
でもちょっと引っかかるところがあるな。
さとる:どうでしょうか?
やまもと:書類はしっかり作成されていますね。
さとるさん、カフェを出す店舗はもう見つけていらっしゃるのですか?
さとる:ええ。
駅から少し歩くのですが、周囲は住宅街で落ち着いた雰囲気の場所です。
競合店も少ない場所ですので来客数は見込めると思っています。
やまもと:好立地な場所を既に見つけているんですか。
しかし良い場所でしたら、申込みされる方も多そうですね。
さとる:そうなんです。
ですので、先に物件の申込みを行って手付金も支払っておきました。
やまもと:えっ!?もう物件の契約をされてしまったのですか?
心の声:さっき創業計画書の支払済資金のところを見ていて嫌な予感がしたんだよ。
まじかぁーーー。
おいおい融資通らなかったらどうすんの。
さとる:はい。
時間が空いてしまうと他の人に借りられてしまうと思い、すぐに物件の契約を進めたんですけどだめだったでしょうか?
やまもと:融資審査が終わってない段階なので、仮に融資が通らなかったらどうするのでしょうか?
さとる:はい、そこをちょっと心配しています。
やまもと:…。
契約手付金もお支払いしたとおっしゃっていましたよね?
創業計画書ではこの手付金についても融資金額に含まれているようですが。
その費用は自己資金ではないのでしょうか。
さとる:はい、その費用もお借りしたいと思っています。
やまもと:さとるさん、残念ですが、融資金額に支払ってしまったものを含めることは認められません。
さとる:えっ!?そうなのですか。
やまもと:そうです。
今のままでは融資が通らないのでもう一度検討して下さい。
心の声:融資が通ってもないのに不動産の契約までするとは。
大手企業のステータスを捨てることと言い、行動力だけはあるんだな(笑)
さとる:検討といっても創業計画書に記載している通り自己資金はないんです。
やまもとさん、何かいい方法はないでしょうか。
やまもと:ルールはルールですので、どうしようもありません。
さとる:なんとかなりませんでしょうか?
これから家賃が毎月発生してしまうんです。
やまもと:残念ながら、こちらの方ではどうにもなりません。
心の声:俺に相談せずに自分で勝手にやったことでしょうよ。自業自得だよ。
さとる:そうですか…
やまもと:支払ってしまった部分の他にも気になるところもあります。
支払済資金の問題が解決してもう一度ご相談で来店される際には融資の全体的な使い途をもう一度修正して下さい。
さとる:はい。ありがとうございました…
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銀行を後にしたさとるは、とあるカフェに立ち寄りで一人呆然としている。
融資の申込みが白紙となり、カフェを開店するために契約した物件の家賃の支払いをどうするか頭を抱えていた。
さとる:困ったなあ。
心の声:ようやくイメージ通りの店舗が見つかったのに。
支払った資金は認められないなんて、知らなかったし。
他にも問題があるような言い方だったな。
でも何がどういけないのかわからないし。
…もう疲れちゃったなあ。
あおい:あの、突然すみません。
なにかお困りごとですか?
さとる:えぇ、ちょっと。
あなたはどなたでしょうか。
あおい:失礼しました。
私は銀行専門の経理担当、榎本あおいです。
さとる:銀行専門の経理担当?
あおい:はい、銀行融資を通すことを専門にしています。
ちょうど創業計画書と〇△銀行さんの資料が目に留まりまして。
それと、あなたが暗い表情だったので。
さとる:ははっ、すごいな。
おっしゃる通りです。
ちょうど今、銀行に融資を断られたばかりでした。
ようやくカフェの開業を決意して行動に移したのに、妻にも合わせる顔がなくて…
こうやって、途方に暮れているところなんです。
心の声:女手一つ育ててくれた母さんに喜んでもらいたくて大手の会社に就職したけど、
部下と上司の間に挟まれて、少しずつ疲れが溜まってきて。
これからのことを考えると夜も眠れなくなってきて。
周りの人に会うと「元気がない」とか健康を心配されるようになってきて。
妻と幼い子供もいるから頑張ろうとしても余計に辛くなって。
◯✕商事は世間では大手企業と言われていて、このまま仕事を続けていれば家族を養えるくらいの安定した収入があるのはわかってはいるんだ。
でも…
そんな時にふと「母さんが作ってくれた思い出のケーキ」を思い出す。
片親で貧しかったけど、特別な日に作ってくれる母さんのケーキが嬉しかった。
素朴だったけれども母さんの愛情が詰まっていたケーキ。
高校生くらいからは母さんに作り方を教わり、母さんのためにケーキを振る舞った。
母さんが喜んでくれるケーキ。
母さんが亡くなってからは家族のためにケーキを作った。
家族が喜ぶ姿を見るのが嬉しくてまた、母さんの面影も思い出すことができた。
体調が優れなくなった時に妻が、カフェでもやったらと言ってくれた。
私がカフェでゆったりと過ごすのが好きなのを知っていたから。
あおい:よろしければ融資を通すお手伝いをしましょうか?
さとる:えっ、銀行に融資を断られたのに大丈夫なんでしょうか。
確かに融資が通る可能性がまだあるのであればまだ諦めたくないです。
あおい:大丈夫です。
お力になりますよ。
さとる:あおいさん、ぜひお願いします。
私にはこの融資がどうしても必要なんです。
あおい:あなたの融資通します。
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あおい:では早速融資を通すためのポイントを整理していきましょう。
さとるさん、銀行で融資を断られたポイントはわかりますか?
さとる:書類自体はしっかりしていると言われました。
しかしカフェの物件を契約したときに支払った手付金については融資金ではなく自己資金で対応してほしいと。
あとは融資金額の全体的な使い途についてもう一度修正してほしいとのことでした。
そのあたりの修正ができたらまた相談して欲しいと言われました。
支払済の資金については自己資金で対応しようにも手持ちのお金が無くて。
あと、計画書のどこを修正すればいいのかいまいちわからない状況です…
あおい:なるほど、資金使途ですか。
よくわかりました。
さとるさんは融資については初めてのご経験とのことですが、的確に要点を押さえられていて原因がすぐにわかりました。
流石です。
さとる:資金使途?
それに、そんなに褒められても自分では私自身は全然理解していないですよ。
あおい:いえいえ、融資が初めてで断わられてしまったら普通は気が動転して、さとるさんみたいに冷静になぜだめだったかという理由を振り返ることはできませんから。
資金使途とは、ずばりお金の使い方のことです。
この場合は融資金額をいくら、どこに使うのかということですね。
実は銀行には認められる資金使途と認められない資金使途があるんです。
そこをきちんと理解して修正すれば、さとるさんの融資もきっと大丈夫ですよ。
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さとる:銀行に認められる資金使途ですか?
あおい:銀行に認められる認められないっていう大げさな言い方だと構えちゃうかもしれないですけど、ちょっとしたテクニックで簡単に「銀行に認められる資金使途」にできるんですよ。
さとる:そうなんですか。
物件の手付金として支払ったお金が融資に認められないと言われてかなり焦りましたけど。
もしかしてこれに関しても認められる資金使途にできるんですか?
あおい:はい!大丈夫ですよ。
あと、融資金額の全体的な使い途についてもう一度修正してほしいと言われたと仰ってましたね。
創業計画書を見てせてもらいますね。
さとる:はい、こちらです。
自分では他にどこがいけないのかさっぱりで。
あおい:なるほど、計画の中にさとるさんのお給料が含まれていますね。
これは「銀行に認められない資金使途」なんです。
さとる:自分の給料を融資の中に含めるのは認められないんですね。
カフェが直ぐにうまくいくかもわからないから不安で、先々のことがわからないことだらけだったので安心料として計画の中に入れていました。
あおい:そうですよね。
事業を開始する時は不安ですよね、わかります。
でも大丈夫です!
さとるさん、自分のお給料分についても計画書で「銀行に認められる資金使途」に変えていきましょう。
さとる:自分の給料についてもそのテクニックが使えるんですか。
あおいさん、教えて下さい!
あおい:えぇ。
私に任せてください。
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あおい:では資金使途について整理していきましょう。
支払済資金については、自己資金で対応することにします。
テクニックとしては、一時的に手持ちの資金で対応しますが後日融資で回収します。
資金計画700万円の内700万円が融資金でしたが、
資金計画を750万円にし、融資金額を700万円、自己資金を50万円とします。
こうすることにより、実際に必要な融資金は700万円ですから予定通りの調達となります。
さとる:えっ。
そんなことができるんですか?
あおい:書類の書き方次第です。
さとるさんは700万円が最低限必要なのですよね。
この計画であれば必要な700万円金額を調達することができます。
さとる:すごい。
資金計画の金額を増やすっていう発想はありませんでした。
あおい:さて、増えた50万円分については使い途を増やします。
さらに、さとるさんが当初計画していた給料分60万円分の使い途を変更します。
つまり、合計で110万円分の使い途を変更します。
さとる:110万円の資金使途を変更ですね。
どんな使い途に変更するんですか?
あおい:運転資金と呼ばれる資金で調整します。
さとる:運転資金?
あおい:資金使途は運転資金と設備資金にわけられています。
運転資金は仕入れや従業員の給料等、事業を運営していくのに必要な資金。
設備資金は機械の購入等、設備投資に必要な資金。
簡単に言うと、資金の使い途が厳格な方が設備資金です。
逆に運転資金は資金の使い途が緩いものです。
事業を運営していくのに必要な資金というのは項目が多岐にわたります。
例えば、仕入れ資金、水道光熱費、消耗品等。
その詳細な項目をさらに深堀りしていくとキリが無くなります。
そんなに多くの資金使途を銀行は管理できないから、運転資金という一括としてある程度使い途が緩くなっているんです。
反対に設備資金は機械や設備の購入に必要なお金で、一度に扱う項目もそこまで多くなく一つ一つの金額も大きいので銀行からするとお金の流れを管理しやすいから使い途が厳格になっているという側面があります。
ですので今回の場合は、審査が割と緩い運転資金で調整すれば大丈夫です。
さとる:へえ、銀行ではそんなこと教えてくれませんでした。
あおい:銀行にとっては当たり前のことですし、お金を借りる人にとってはあまり関係のない話だと思っている人も多いんだと思いますよ。
銀行側との情報格差になっていることの一つですね。
それでは110万円を運転資金で調整する計画を立ててみましょう。
さとる:はい、お願いします。
あおい:まず、商品の仕入資金を今よりも50万円分増やします。
次に60万円は従業員の給与や広告費に変更します。
具体的にはこのようにします。
<さとるの作成した資金計画>
不動産費用 200万円
内装工事費用 300万円
インテリア、備品購入費用 100万円
商品仕入資金 40万円
代表者給料 60万円
資金計画 700万円(全て融資金額)
<あおいの作成資金計画>
不動産費用 200万円(支払済資金50万円)
内装工事費用 300万円
インテリア、備品購入費用 100万円
商品仕入資金 90万円
従業員給料 30万円
広告宣伝費 30万円
資金計画 750万円(融資金額700万円、自己資金50万円)
あおい:この新しい計画であれば融資金額750万円の融資を受けることができます。
さとる:すごい。
これなら融資金額を減らさずに700万円を使えますね。
あおい:えぇ。
このように計画書の作り方で解決できます。
銀行の審査で資金使途はとても重要です。
ただ、銀行が認める資金使途に変更することで必要な金額を調達できます。
説明の仕方や計画書の書き方次第で、実際には同じことをしようとしているのに受けられる融資金額が変わるということはよくあることなんですよ。
本当はここまで銀行が協力してくれれば良いのですけどね。
それに、銀行は書類や計画をチェックするのは得意なんですけど、計画を提案するというのは苦手なんですよ。
自ら事業を運営するノウハウが少ないので。
さて、さとるさんのお給料の項目を変えましたが、実際は安心のためのものですし新しい計画でも問題ないですもんね。
さとる:はい、事業を開始するのに手元にお金を残しておきたいですから。
あおい:さとるさんの気持ちを考えれば、自然と協力できると思うんですけどね。
この調子で他も見直しましょう。
さとる:お願いします。
どうしてもカフェを開店したいんです!
あおい:大丈夫ですよ。
さとるさんの融資を通しますから。
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さとる:やまもとさん、こんにちは。
前回ご相談させていただいたカフェ開業の件なんですけど、創業計画書を作り直してきました。
融資の申込みをしたいので、書類の確認をお願いします。
あと、本日は経理を担当してくれる榎本さんに同席してもらいます。
あおい:はじめまして。
榎本あおいと申します。
経理面でさとるさんのカフェ開業のサポートをさせていただいております。
やまもと:かしこまりました。
それでは資料の確認をさせていただきます。
心の声:修正と言っても自己資金を出してくれれば簡単に済む話なんだよな。
それにしても、さとるさんの雰囲気が変わったか?
前回来店したときは暗かったのにまるで別人みたいな印象だな。
さとる:まず、支払済資金については自己資金にて対応することとします。
また、前回は私の理解不足で認められない資金使途が融資金額の中に含まれていました。
私自身の給料の部分です。
その項目を融資金額の中から除外、資金計画全体を見直して資金使途についても再考しました。
やまもと:なるほど…
心の声:何が融資金額に認められない資金使途かということを的確に理解して修正してきている。
それに、単に自己資金で対応するだけでなく、運転資金として追加の金額を融資金額に上乗せすることで余裕のある資金計画になっている。
融資金額自体は当初の計画よりも50万円増えているが、こうやり方での修正方法もあるのか。
気づかなかった。
さとる:資金計画及び資金使途についていかがでしょうか?
やまもと:そうですね。
この計画内容であれば前回お伝えしていた問題点も解決さていますし、融資について問題はなさそうです。
あおい:やまもとさん、一つよろしいでしょうか。
今回の創業計画について、資金計画及び資金使途について抜本的な見直しを行いました。
しかし前回の計画もそこまでにおかしい計画ではなかったはずです。
銀行員以外で支払済資金や自分の給料が融資金額に認められないということを知っている人は少ないでしょう。
当然銀行側にもルールがあるので出来ることと出来ないことがあるのは理解しています。
しかし、もう少しだけ歩み寄って一緒に考えてあげるくらいのことはしてもよかったのではないでしょうか?
やまもと:…ええ、おっしゃる通りだと思います。
私自身に慢心していた部分があったと反省しています。
あおい:融資はその人と、その人に関わっている人の生活が懸かっています。
さとるさんの場合は、本人とご家族、それに開業してからは従業員や取引先など、多くの人達の結びつきがあるでしょう。
どうか、くれぐれもそのことについてはお忘れにならないようお願いします。
やまもと:はい…おかげで目が覚めました。
ありがとうございます。
そのことを忘れないように精一杯励んで参ります。
さとるさん、今までの私の対応について申し訳ございませんでした。
今回の融資、全力で通すように頑張らせていただきます。
心の声:いつからだっただろう。
仕事をお客様のためではなく、数字をこなして出世をするために頑張るようになってしまったのは。
新人の頃は融資を通してお客様に少しでも喜んでほしくて一生懸命頑張っていたっけ。
「融資はその人と、その人に関わっている人の生活が懸かっている」か。
まさにその通りだ。
銀行にとっては融資は日常業務だけど、お客様にとってはそうではない。
それこそ一生を左右することだってあるということを久しく忘れていた。
そのことを思い出させてくれた榎本さん、この人は一体何者なんだろう。
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さとるの融資は山本の頑張りもあり程なくして通った。
山本が勤務している支店内では、山本の稟議がスピード決裁となったことと山本の仕事に対する姿勢が急に変わったことについて話題で持ちきりとなっていた。
カフェ開店まであと数日と迫った日、さとるはカフェ開店のチラシを配りオープン日に向けての準備を進めていた。
さとる:新しくカフェがオープンします。
良かったらチラシをどうぞ。
心の声:チラシ配布とSNSでの合せ技で広告をしているけど、SNSの方は「いいね」がたくさんつくようになってきたな。
みんなに興味を持ってもらえて嬉しいな。
あおい:さとるさん、こんにちは。
さとる:あおいさん!
あおい:もう少しでカフェのオープン日ですね。
私、さとるさんのカフェがオープンするのを楽しみにしているんですよ。
さとる:はい、あおいさんのお陰でなんとかここまで来ることができました。
本当にありがとうございました。
あおい:ここまでこれたのはさとるさんの努力があってこそですよ。
私はその背中を少し押しただけです。
さとる:私はあのまま会社員として勤務していたら、今頃生きていなかったかも知れません…
もう疲れきっていましたし、絶望も感じていました。
ただ、そんな時に亡くなった母が作ってくれたケーキを思い出して。
そんな私を見かねて母が助けてくれたのかも知れませんね。
会社員時代よりも不安定になりますし収入も少なくなるかも知れませんが、生きていれば楽しいことありますよね。
今では前向きに考えられるようになりました。
あおい:そうですよ。
確かに楽なことばかりではないとは思いますけど、楽しいことだってきっとあります。
それに事業が成功すれば会社員時代よりも収入を増やすことも可能ですしね。
さとる:メニューなんですが、「母さんが作ってくれた思い出のケーキ」をうちの看板メニューにします。
チーズケーキなのですが、口の中で溶けるようなケーキなんです。
隠し味に少しチョコレートを加えるのがポイントなんですけどね。
あおい:…絶対注文します。
それと、さとるさん。
私との約束を覚えていますか?
さとる:もちろんですよ。
あおいさんのためのケーキ考案ですよね?
チョコレートがお好きだと伺ったので、ガトーショコラにします。
あおい:なんて素敵なんでしょう。
想像しただけで幸せな気分になります。
さとる:なめらかな口当たりのチーズケーキにしっとりとしたガトーショコラ。
その2つをうちの看板メニューにします。
あおい:オープン日が待ち遠しいです。
ところでさとるさん、最初に出会ったときと比べて随分明るくなりましたね!
さとる:実は私、元々明るくて社交的なほうなんですよ(笑)
あおい:さとるさんの笑顔を見られるようになってよかったです。
大丈夫、さとるさんのお人柄ならきっと沢山のお客さんがいらっしゃいますよ。
もう心配はいらなそうですね。
あなたの融資通しました。