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作戦

 約束の2日後、今回はライラも伴って2人で、再度、中央棟の貴賓室へと足を運んだ。


 当日までに()()()()()()()は全部で10個だった。

 2年前は6個で寝込んだルナティアだったが、身体の成長と共に、発揮できる魔法の量も耐性も上がったようで、今回、10個も付与したのに、寝込むということは無かった。


 貴賓室に入り、ジークリードとレグルスに付与した魔石を全て渡すと、レグルスの顔色が変わった。

「10個も付与したのか?倒れないように、とあれほど―」

「ええ、ですから倒れていません。お兄様、付与は2年前から一度もしていないけれど…私は2年の間に、成長したのです。お陰で当時よりも使える魔力量も様々な耐性も上がったようです。ですから、今回、10個の魔石に付与をしても、倒れることはありませんでした。…少し、疲れはしましたが…。お陰で昨晩は熟睡してしまいました。」

 恥ずかしそうに笑いながら話すルナティアを改めて見つめる。嘘はついていないようだ。


 確かに、2年前は150センチ程度で他の令嬢と比較しても小柄な美少女、という言葉がぴったりだった。

 あれから2年経ち、身長も伸び、幼児体系であった身体は、すらりとした女性らしい身体へと変わっていた。その上常日頃から鍛錬をしているルナティアは、普通の令嬢と比べて筋肉量も多く、見た目以上に仕える魔力量も多くなったのだ。


「…分かったよ。それから、ありがとう。お陰で予定した全員に渡せそうだ。」

 レグルスが苦笑しながらルナティアの頭を撫でる。くすぐったいと思いながら

「魔石はどなたに渡すの?出来ればカエラ様とジュリア様にも渡したいのだけど…。」

と、ルナティアが聞くと、

「その分は大丈夫だと思うけど…なぁ、ジーク?」

「あぁ、まず、キュリオとジャンの分をいただこう。あとは…カートリスとオリガル、リリーに渡せれば…。問題は魔石を渡すときに、どう言って()()()()()()()()()()、だな。」

「そうだな。魔石に防御魔法がかかっているということを上手く伝えなければならないし…。」

「特にオリガルに至っては、母君が魔法省トップだからな、上手く言っておかないと色々疑われてしまう可能性が高いからな…。」

 うーん、と2人が悩んでいる。


 その隣で一緒に考えていたルナティアが、少しの沈黙の後、言った。

「理由、理由…。…お父様が送ってくれた、とかではダメかしら?」

「っ?!…それだ!!」

「うんうん、父上なら淫魔を倒しても違和感ない。魔石が手に入ったから送ってくれた、ならありそうだし…。というか実際に送ってくれたこともあったし…。」

「よし、その線で話の辻褄をあわせて行こう。」

 そう言って、4人で魔石が手に入った経緯をまとめた。魅了の話はそのままユグ・ド・オセアノから聞いた、ということで進めることにした。


 話がまとまったとホッとしたのも束の間、急に部屋のドアがノックされた。全員で振り返るとそこには、カートリス・シヴィアとオリガル・ノーランドの2人が立っていた。


「時間通りにきたよ、ジーク。」

 おっとりとした口調でカートリスが言うと、

「…ジョナサンの奴、融通が利かないよな。ジークに呼ばれたんだ、って言っても「約束されている時間はまだのはずです」って言って、部屋まで案内してくれないんだから…。」

と、オリガルはその隣でブツブツと文句を言っている。


「流石はジョナサンだ。指定した時間をきっちりと守ってくれる。ここを任されているだけのことはあるな。」

 感心した様子でジークリードが頷く。それを見て「ひどいじゃないか」じゃれてかかるオリガルの姿を見て、普段、兄達上級生同士のやり取りをあまり見たことの無いルナティアは、驚きつつも、微笑ましい表情で見つめていた。


 笑うルナティアの表情が視界に入ったカートリスは、慌てて話を元に戻そうとした。

「ごめんよ、レグルスの妹君。放置してしまっ…。ところで…ジーク、僕達を貴賓室になんて呼び出して、一体どんな内緒話をするつもりなんだい?」

「ああ、そうだ。実は…。」

と、レグルスが、魅了についてと対抗策としての魔石保持について、掻い摘んで説明をする。

 説明を聞き終わった後、

「魅了か…。確か闇属性にあった気がするけど…。それと、ユグ先輩の助言で、淫魔(サキュバス)の魔石を持っていれば、っていうのも分かった。だけど、どうやって魔石を手に入れたんだ?淫魔(サキュバス)と言ったら中級クラスだろう?」

と、オリガルが聞いてきた。

「たまたまなんだが…最近、あちこちで魔物の目撃情報があるのは知っているだろう?僕の父が辺境で淫魔(サキュバス)を倒した時に出てきたものらしい。」

「あ~…リストランド卿が、かぁ。それなら納得だな。」

 レグルスの説明に、オリガルが納得すると、今度はカートリスが質問をした。

「理由は納得したよ。だけど、本当に彼女(プルクーラ)が魅了を使役しているのであれば、僕達全員が魅了に掛からないのは不自然に思われるんじゃないかな?魅了対策で魔石を持っている、と知られるのも得策ではないだろう。」


 確かにそうだ。

 魅了について知ったとしても、主要人物全員が魅了対策をしているとなると、真っ先に光属性のリリーが何か対策をしていると思われて狙われるだろう。次いで、土属性を持つ、オリガルとルナティアが、と言ったところか…。


 暫くの沈黙の後、オリガルが提案をした。

「例えば、だけど…俺とジークは保護魔法を最初から掛けられている、というのでもいいと思う。ジークは王太子だし、俺は魔法省長官の子息だからな。レグとルナティア嬢達は、リストランド卿が送ってくれた魔石を持っている、で問題ないと思う。」

「…僕は?」

「公爵家の子息だけど…魔法に特化している訳でもないし…。」

 オリガルは、ただそれだけ言って、ただ、黙ってカートリスの顔を見つめている。


 暫くの間、お互いに見つめ合った後、カートリスはため息を()きながら言った。

「…分かったよ。僕が(おとり)になればいいんだろう。」

「え…」

 ルナティアの驚く声をかき消すように、オリガルが口を挟んだ。

「流石だ。よく分かっているじゃないか。君のそういう(さと)いところは素晴らしいよ!」

 驚いているルナティアを他所(よそ)に、レグルスも、ジークリードまでも何も言わない。

 見かねたルナティアが声を上げた。

「ちょっ…ちょっと待ってください!(おとり)なんて危険ではないですか?」


 4人の上級生が一斉に振り向く。そしてルナティアの顔を見るなり、少しだけばつが悪そうな顔をしながら、カートリスが口火を切った。

「えーっと…レグルスの妹君。心配ありがとう。だけど、これも作戦なんだよ。」

 苦笑しながら、カートリスが言う。

「作戦、ですか?」

「そう。敵の手の内が分からないと、対策も出来ないでしょう?」

「ですが、だからって…」

「うん、だから、対策は勿論するよ?魔石はしっかりと身に着けておく。…(おとり)と言っても、()()()()()()()()()をするだけだから。今回の場合、僕が一番適任だと思うんだ。魅了対策が出来る状況が無いからね。それに最悪、本当に魅了された場合は、リリー嬢に浄化魔法をかけてもらうから大丈夫だよ。」

 そう言う彼の表情は、最初に見かけた時に目を反らし逃げた彼とは全く違っていた。彼自身、学園で多くを学び、経験を自身に変えてきたのだろう。


 ルナティアは、周りを見回した。

 オリガルは勿論、レグルスもジークリードも頷いている。

 兄達の表情から、深い信頼を感じたルナティアは

「分かりました。カートリス様、余計な口出しをして申し訳ございませんでした。」

と、頭を下げた。

 途端にカートリスは慌てながら、「大丈夫だから、謝らないで」と連呼していた。


 その後、カートリスの中の記憶の上書きをするため、と言われ、ルナティアは部屋から出された。

 万が一、本当に魅了された場合、こちらの情報が洩れないようにするために記憶の上書きを行うのだが、その操作後の記憶に、ルナティアは居ない方が良い、とのレグルスの判断だった。


 部屋を出る直前、不安そうな顔をしているルナティアに、ジークリードが小声で教えてくれた。

「大丈夫だ、全てが完了した後、記憶を戻すことが出来る魔法だから心配するな。」

 その言葉を聞き、少しだけ安心して部屋を後にしたのだった。



 その後の連絡は、ライラとジャンを通して行われた。

 あの中央棟に魔石を持って行った次の日、レグルスからリリー・グレシャに事情を説明し、リリーは浄化魔法の特訓を始めた。特訓の立会いは基本的にオリガルがやっているようだ。レグルスやジークリードでは、噂に立ちやすいから、と言う理由らしいが、リリーから多少の不満が出ているとかいないとか…。

 カートリスは、というとその翌日から、魅了されていると思われる生徒の観察を始めた。魅了に掛かっている演技をするために必要らしいが、元々、マンウォッチングが好きな彼は、半ば楽しんでいるように見えた。

 レグルスとジークリードは、いつも通り生活をしているが、その後も数回、アプローチを受けているようだった。


 ルナティア達は、というと、渡された魔石をお揃いのブレスレットに加工して、ジュリアとカエラに渡した。

 2人は、お揃いのブレスレットに大喜びで、「何時、どんな時も肌身離さず持ち歩く」と決意表明をしていた。


 そうして3週間が過ぎたころ、「最近、プルクーラの隣にカートリスの姿をよく見かける」という噂が一般科に流れてきたのだった。


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