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パートナー?

 夏季休暇が明けると、学園内は武術大会一色になる。生徒代表はその準備で大忙しだ。

 生徒代表である、ジークリードとレグルスは、例年通り出場者でもあるため、準備と自身の訓練でとても忙しかった。

 そんな中で開催された武術大会は今年も大盛り上がりだったが、新入生である今年の1年生の中に、有力な武術家はあまり居なかったため、武術大会は昨年、ユグ・ド・オセアノを破り優勝したレグルスが、2年連続で優勝、次いでジークリードと言う結果で終わった。



 それからまた月日が経ち、3年生の卒業が近づいてきて、生徒代表から在校生への指名が始まった。指名された生徒は、受けるかどうかを決めて返事をするが、指名された生徒のほとんどは断ることは無い。なぜなら、卒業後の各国の進路に左右されるからだ。

 指名の結果、次年度の生徒代表は、ウーヤン・アマラとスオーロ兄弟を中心とした10名が選出された。1年生からは、クレオチアの侯爵令嬢アリシア・カフスと伯爵子息のグレイ・エセリアル、オセアノ国の貴族バイヤー・オズモンド、ファケレ国からはアミ・トモーロが、ウーラノスからはウーヤン・カエラが選出された。

 クレオチアの候補に、実はルナティアの名前も挙がっていたが、断固としてレグルスが反対したため生徒代表入りは立ち消えとなったのだった。



 新生生徒代表が決まると、代表達の最初の仕事は、『卒業生送別パーティ』の準備だ。

 セイグリット学園3年生の『卒業生送別パーティ』は、卒業した翌年に、各国で社交界デビューをする貴族の令息令嬢にとっては事前練習も兼ねているため、ただの卒業生送別パーティではない。また、平民出身の魔力持ちにとっても、将来、国の役職に就いた際の礼儀を実演で学ぶ場となっているため、とても重要な意味を持つパーティだ。

 更に3年生にとっては、必ずパートナーを伴って出席しなければならないイベントなのだ。


 基本的にパートナーは学園に在籍している者としているが、婚約者のいる貴族のみ、外部の婚約者をパートナーに伴っても良い、とされていた。

 そのため、婚約者の居ない3年生や平民出身者は、相手探しに躍起になる時期でもあった。


 一時期、呼び出しも少なくなっていたルナティアだったが、パーティのせいか(特に3年生に)頻繁に呼び出されるようになっていた。

 そんなある夜、ベランダで夜風に当たりながらルナティアがライラに聞く。

「ねぇライラ、1年生にはパートナーは必要ないのよね?」

「そうでございますね。」

 明日の準備をしながら、ライラが答える。


「そういえば、カエラ様に聞いたけど、ライラも誘われたって本当?」

「…えぇ。」

 内心、カエラに対して悪態をついているのだろう、ライラは顔を少しだけ歪めている。しかし、ベランダから振り返ったルナティアは遠目過ぎて細かい表情には気づいていないようでそのまま話を続けていた。

「それで?どうしたの?受けるの?受けないの?」

「…ルナティア様、お身体を冷やしてしまいますよ。いい加減、お部屋にお戻りください。」

「はーい。…それでどうなったの?」

 部屋に入りながらも、珍しい専属侍女のロマンスに興味津々だ。

「どうもこうも…。私は既に役目が決まっておりますから。」

「役目?どういうこと?」

「ジャンもパートナーを伴わないとなりませんでしょう?ですからジャンのパートナー役、という訳です。」

「…なるほど。」

 妙に納得した。

「という訳で、当日、私はお傍に居れませんので、ルナティア様もどなたか安心できる方のパートナーになっていただけると良いのですが…。」

「カエラ様とジュリア様と一緒ではダメ?」

「ジュリア様は婚約者がいらっしゃいましたでしょう?それに、カエラ様もウーラノスの方からお誘いを受けておられましたよ?」

「え…じゃあ、ひとりぼっち?それは寂しいわね。…お兄様に相談してみるわ。」

「そうされた方が宜しいかと。」


 そんな会話をして眠った次の日には、ルナティアはレグルスと共に食堂で昼食をとっていた。

 翌朝、速攻でライラがレグルスに約束を取り付けたようだ。

(私の専属侍女が仕事が早すぎる…)

 そんなことを考えているルナティアに、微笑みながらレグルスが声をかけた。

「それで、ルナティアからの相談ってなんだい?」

「えっと…その…。」

 パートナーのことをどう切り出してよいのか分からなくなったルナティアが言葉を濁していると、

「わかってるよ、パートナーのことだね。本当ならルナティアをパートナーにしたかったんだけど、身内はダメだというから…仕方なく、オリヴィエ嬢にお願いしたんだ。他国の有力貴族だと問題がある場合もあるし、リリー嬢も考えたんだけど、後々、揉め事になりそうだからね。その点、家格も問題ないし、後々、揉め事にならなそうな立場の方を選んだんだけど…。あ、もちろん、オリヴィエ嬢にはご理解は頂いているから安心して。」

と、レグルスが説明をした。

「オリヴィエ様って…ストリア伯の?確か…探検大会でお兄様と一緒のチームになった方よね?」

「そう、オリヴィエ嬢はその…想う相手がいるんだけど、その方をお呼びすることは出来ないから、と名乗りを上げてくれてね。勿論、下心が無いことは調査済みだ。」

「そうなのね。…それでねお兄様、私もパートナーの件で相談があって…。」

「あぁ、聞いているよ。もちろん了承しているから―。」

「え?」

「え?」

 首を傾げながらルナティアが聞き返すと、レグルスがその行為に聞き返してきた。

「…お兄様?一体なんの話を…?」

「え?だから、ジークに頼まれたんだろう?」

「えぇ?!!」

 あまりの驚きに大声を上げて立ち上がってしまった。周りが一斉にルナティア達のテーブルを見る。視線を感じたルナティアは愛想笑いをして大人しく席についた。


 妹の反応を不思議に思ったレグルスは、席につきなおしたルナティアに聞いてきた。

「…ルナ、もしかして何も聞いていないのかい?」

「はい。」

「…ジークに会っていないの?」

「えっと…、明後日のお休みに一緒に街に出かける約束をしていますけど…。」

「えぇ?!!!」

 今度はレグルスが大声を上げた。視線を感じたレグルスは、「んんっ」と咳払いをして席についた。

「出かけるなんて聞いていないけど?いつ、そんな約束したの?」

「えっ…と…、今朝?」

「今朝…って、あの東屋で?」

 東屋で会っていることを知っているレグルスは尋ねた。

「はい。」

「てっきり僕は、今朝そこでパートナーに誘ったんだと思っていたけど…。出かける誘いをしていたなんて…。はぁぁ…。ごめん、ルナ。今日の話は聞かなかったことにして。」

「…どこからですか?」

「ルナの相談の辺りから。」

「…。」

 ちょうどその時、予鈴のチャイムが鳴った。

「あ、時間だ…次の授業は中央棟だから、先に失礼するよ。それから…明後日の休み(おでかけ)の後、報告するようにね。」

 それだけ言うと、レグルスは笑顔で去って行ってしまった。


 それから2日後、約束の休日(おでかけ)の日がやってきた。


今年の武術大会は、「レグルス敵無し」でした。それくらい強くないとトーマスの跡取りにならないので…。

という訳で、思いっきり端折りました。

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