探検大会(準備)~前日~
翌日の放課後、ルナティアとライラ、ジュリアはカエラと別れ、回復魔法の練習のために中央棟に向かった。
中央棟の入り口に着くと、そこには既にジークリードが待機していた。
「殿下、遅くなって申し訳ございません。」
ルナティアが頭を下げると、続いてジュリアとライラも頭を下げた。
「いや…むしろ、折角の放課後が魔法の練習になってしまって、すまない。」
「いえ、それより、殿下の貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。」
「…ルナティア。」
「はい?」
「ここでは…殿下と呼ばないで欲しい。前にも言ったが、俺は一生徒として学園に通いたいんだ。…殿下と呼ばれると…。」
「そ、そうでしたね。申し訳ございません。トニトルス様がそうお呼びしていたので…そうすべきなのかと…。」
「彼女はそれほど親しくないから、なんと呼ぼうが気にならないが…。」
「分かりました。…では、私はなんとお呼びしたら宜しいのでしょうか。」
ルナティアの問いに、少し間を置いて、ジークリードが答えた。
「…名前で、いい。」
「っ!!」
思わぬ言葉に、一瞬、言葉が詰まったが、深呼吸をしたルナティアが笑顔で答えた。
「かしこまりました。では…ジークリード様、とお呼びいたしますね。」
微笑みながら答えるルナティアの表情を横目に、ジークリードが続けて言った。
「…ジュリア嬢もライラも、同様に頼む。それからカエラ嬢にもそう伝えてくれ。」
平静を装ってルナティアの友人たちにも同じように伝える。
「「かしこまりました。」」
僅かに耳が赤くなっているジークリードに気づいているジュリアとライラは、内心、微笑ましく思いながら答えた。
2人の内心など知る由もないジークリードは、返事をそのまま受取り、
「ありがとう。…では早速、回復魔法の練習に入ろう。この部屋を借りているから…中へ。」
と言って、ルナティア達を誘い、1階の教室へと入って行った。
それからの数日は、探検大会までの短い期間の放課後を毎日、中央棟1階の教室で、ジークリードの指導の下、魔法の練習を行い続けたのだった。
そして、探検大会の前日、言付けどおりに、10名全員が中央棟5階に集合した。
今回は、ちゃんとクラーロ・レーヴも参加している。
「いよいよ探検会は明日、となった。まずは、前回欠席だった、クラーロ・レーヴに聞いておきたいことがある。」
ジークリードの言葉に、クラーロは、ふぃ、と顔を背けた。どうやら責められると思っているようだ。
そんな様子を気にもせず、ジークリードは話を続けた。
「クラーロ・レーヴ、君は回復魔法が使えるか?」
「…は?」
思いもよらない質問だったのだろう、クラーロは間抜けな声で返事をした。
「君は、回復魔法が使えるのか、と聞いている。」
ジークリードが再度聞くと、
「まぁ…、初期の初期ですが…体力回復の魔法なら…。」
「そうか!どれくらいの回復を見込める?」
「ポーションの半分くらい、ですかね。」
「そうか…。…うん、とりあえず何とかなるだろう。」
黙って聞いていたエリカが口を挟んだ。
「殿下。回復魔法の練習の成果はいかがでして?」
「ああ、ルナティア嬢が回復魔法を、何とか、な。」
エリカがルナティア達の方を見ながら、
「まぁ、そうでしたの。闇魔法の方は出来なかったのですね?折角、殿下自らお時間を作ってくださったのに、成果がないなんて…。」
と、呆れたように言った。
「闇魔法自体が珍しい属性だから、回復の呪文が分からなくて、な。友人に聞いたが分からなかったんだ。ルナティアの場合も、魔法書にはまだ記載が無から、風属性の友人に呪文を聞いて、ひたすら練習した結果なんだ。」
「…そうでしたの。そういうことなら仕方ないですわね。」
納得したのかしていないのかは分からないが、つまらなそうにエリカが言った。
「さて、これで明日の本番では体力回復の心配も無くなった。他の異常事態は恐らく無いと思うが、念のため保護魔法をかけておいた方が良いだろう。そこで、エセリアル嬢、以前お願いしていたハンカチは出来ているだろうか。」
「はい、こちらに…10名分ございます。」
「ありがとう。ではこれに、保護魔法をかけよう。…保護魔法は土魔法の保護魔法が一番強力だと思うのだが…トニトルス嬢、貴女は、保護魔法は使えるかな?」
「え?…あ…いえ、わたくしはまだ…。」
さっき、ジュリアとライラに少し毒舌を吐いたこともあるからだろうか、ばつが悪そうだ。
「そうか…仕方がない、これは先生方に依頼をしよう。」
ジークリードがカトレアからハンカチを受ると、途中でカエラが声をかけた。
「先生方に依頼、って、そんなことできる…ですか?」
「あぁ、前日まで申請すれば、保護魔法をかけるだけなら協力してくれる。魔力が無いものが集まったチームなどは、保護がないと大変だろう?」
「なるほど…。」
その後も当日の様々な優先順位などを決めて解散となった。
そして翌日。
いよいよ、最初の大きなイベント、探検大会が始まろうとしていた。
長々とすみません。
次回から本戦です。まだ続きますがお付き合いくだませ。




