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武術大会~終幕~

「…さて、と。ルナ、僕も行ってくるよ。」


 ジークリードの戦いが終わったと同時に、レグルスが席を立ち、

「もうすぐ1回戦も全部終わるし、その後、少しの休憩を挟んですぐに2回戦だ。僕は2回戦の初戦だからね。」

 ぐっ…と、伸びをしながらレグルスが言う。


「えっ、そんなすぐに?」

「うん、だって今日中に全ての試合を終わらせるんだよ?…だから、この後は試合が全部終わるまでこっちには来れない。…負ければ来るけど、負けるつもりもないからね。こっちに来なくても、応援してくれるよね?」

「もちろん応援するわ。兄様も、ジーク兄様も。」

「ありがとう。ルナが応援してくれていると思うと頑張れるよ。」

 いつもの優しい笑顔でルナティアの頭をそっと撫でた後、母に向きなおり、

「母上、それでは、リストランドの名に恥じないよう全力で戦って参ります。」

「…レグルス、リストランドの名に囚われなくて良いですよ。貴方は貴方なんだから…。下手なプレッシャーは戦闘を鈍らせます。貴方の思うままに戦っていらっしゃい。」

「っ、はい!!」

 本当に嬉しそうにその場を後にしたレグルスを見て、

「兄様のあんなに嬉しそうな顔って…珍しいわよね…。」

 ルナティアがぽつりと呟いたのだった。


 全ての1回戦が終わった後、少しの休憩時間を挟み、2回戦最初の試合の選手たちが入場した。観客は大盛り上がりだ。


 レグルスと対峙しているのは、ジャック・ラリートという3年生で、学園を卒業後は騎士団に入ることが決まっている実力者だ。因みに、子爵家の嫡男だそうだ。(←母に聞いた)

 去年が3位、今年は優勝を狙っている、との噂だ。


 観客席にいる、生徒の中から、様々な会話が聞こえてくる。

「リストランドかぁ…多分、強いよなぁ?」

「大国一の実力を持つ父の息子って、どうなんだ?」

「プレッシャー、半端ないよな…。」

「うーん、だけど、ジャック相手じゃあ…いくら何でもきつくないか?」

「きつい、きつい。だってジャックは騎士団の入団テストでも、団員に負けなかったって聞いたぞ?…テストに出る団員は下位だとは思うけど、一人くらいは中位の団員が入るだろう?」

「だよなぁ…リストランド卿の息子っていうプレッシャーだけでも可哀そうだけど、リストランドはここまでだよな。」


 多分、3年生なのだろう。その会話が聞こえたルナティアは、立ち上がり抗議しようとしたが、母に止められてしまった。


「母様、どうして止めるの?…あんなこと言われて…勝負はまだ分からないじゃない。兄様は強いって父様も言ってたのに…。」

「ルナティア、ここで抗議しても仕方ないでしょう?レグルスの実力なんてこの学園では誰も知らないんですもの、殿下以外は…。」

「だけど…!」

「大丈夫よ、()()()()()()()()()だけだもの。…それともルナティアは、レグルスが負けるとでも思っているの?」

「そんなこと思っていないわ。…絶対、兄様が勝つもの。」

「それなら、安心して見ていなさい。…ほら、またこっちをレグルスが見ているわよ?手を振って応援してあげるんでしょう?」

 母の言う方を見ると、1回戦と同じようにこちらを見ているレグルスの姿があった。

 ルナティアは、1回戦以上の大きな声で叫んだ。

「お兄様!頑張って!!絶対、絶対に勝ってね!!」

 令嬢にあるまじき行為ではあるものの、今回ばかりはデメーテルも(たしな)めることはしなかった。

 ルナティアの応援を受け、レグルスは満足そうに微笑み、相手が待つ中央に向かって歩き出した。


 開始の合図の後、2人はお互いの様子を見ることもなく、いきなり剣を交え始めた。

 一定レベル以上の強さを持つ者たちにとっては、互いの剣筋が見えるのだが、一般観客には、剣筋など見えるはずもなく、ただ、剣と剣がぶつかり合う音だけが聞こえている状態だった。


「凄い戦いだな。リストランドはまだ1年だろう?ジャックのスピードについていくなんて…。」

 開始前に、観客席でレグルスが負ける、と言っていた3年生と思われる生徒たちが驚いている。


(これが3年生スピード?この早さなら…きっと兄様は勝てる…!)

 ルナティアがそう思った瞬間、レグルスの攻撃スピードが上がった。

 さっきまでお互いが攻防を繰り返していたはずなのに、今ではジャック・ラリートは防戦に転じている。

「なんだ?急にスピードが上がったぞ?…まさか()()()()()()()をかけたんじゃないのか?」

 観客席内にいた生徒の一言で、その周辺がざわつき始めたが、審判の先生は首を振り、試合を続行させた。


「ルナティア、レグルスの剣筋、見える?」

 デメーテルが視線を闘技場の試合に向けたまま聞いた。

「え?あ、はい。ギリギリだけど…何とか見えています。」

「そう…貴女もなかなかね。…残念だけど、私にはもう見えないわ。」

 苦笑いをしてデメーテルが呟く。

 観客席は、不正を疑いざわつく者と、剣筋を見極めようと凝視する者と、半々だった。


 試合は、決定打がないまま規定時間が過ぎ、終了となった。

 勝敗は、審判の先生方による『()()』にゆだねられ、結果はレグルスの勝利となった。

 観客席では、不正の疑いでざわついていたため、勝者発表の後、レグルスは審判の先生が唱えた特殊魔法で魔法付与の確認を行ったが、()()()()()()()()()()()()と証明された。証明されたことにより、更に別の意味で観客席はざわついた。

「12歳であのスピード…。」

「リストランド卿は、一体どのような鍛錬をしているのか。」

 そのざわめきを聞きながら、ルナティアはこっそりと胸を張り、満足した笑みを浮かべたのだった。



 その後も、見ごたえのある試合が続き、大きなけが人もなく、セイグリット学園主体の武術大会は、優勝が、2年生のユグ・ド・オセアノ、準優勝は従兄のサリルという結果で幕を閉じた。


 残念ながらレグルスは、準決勝で結果優勝したユグと対戦し敗退、ジークリードは4回戦目でテーレ国出身の3年生と当たり、敗退した。


 ほとんどの1年生が、1回戦・2回戦で昨年の強者と当たるようになっている武術大会で(もちろん2人も例外では無かったが)、4回戦まで進んだジークリードはもちろん、上位4人に食い込んだレグルスに対し、観客からは惜しみない拍手が送られたのだった。


戦闘の表現って難しいですね…。難しいから端折ってしまい、思ったより短めで武術大会が終わってしまいました。


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