顔100点体0点と顔0点体100点どっちが良いかという至極どうでもよいが古から答えが出ない難問に終止符を打つべく立ち上がった佐藤君
「顔100点で体0点の女と、顔0点で体100点の女、どっちを選ぶ?」
昇降口の自動販売機の前で、友人の嶋田がいきなりとんでもない質問を投げかけてきた。
「そもそも100点ってどんなよ」
「考え得る限り最高。至高。強いて言えばクレオパトラ」
「じゃあ0点ってどんなよ」
「考え得る限り最低。滅悪。強いて言えばチュパカブラ」
その理屈だと、上か下かどちらかはチュパカブラになるのだが……。
「どっちもいらん」
「そう言うな。それを選ぶのが男の役目ではないか」
隣の自販機で炭酸水を買ったもう一人の友人村上が、俺の肩をポンと叩いた。
「今日、俺の家で決めようぜ」
「は?」
「俺達でこの難問に終止符を打つんだな」
「は?」
──ガシッ!
「行くぞ」
「ああ」
「はぁ?」
こうして、俺は友人二人に拉致られ村上の家へ連れ去られた。
「これが昨日ついに完成したマシーンだ」
「おぉ!!」
「何だコレ……」
カフェの一角のようなテーブルと椅子。そして謎のレバーと画面。村上の部屋には訳の分からない物が沢山転がっており足の踏み場も無かった。
「ココにクレオパトラとチュパカブラを準備した」
「ふむふむ」
「はぁ!?」
「ハァイ♪」
クローゼットからどう見てもクレオパトラな女性が現れた。顔、スタイル共に100点満点だ。
「チュパァ……!!」
そしてチュパカブラがクローゼットから現れた。背中からトゲトゲ生えてるし顔も体もチュパカブラだ。
「0点!」
「0点だな」
「ツッコミが追いつかん……」
席に腰掛けるクレオパトラとチュパカブラ。
「さ、配分はどうする?」
「佐藤、覚悟を決めろ」
「俺が決めるのか!?」
嶋田と村上が、期待の眼差しで俺を見る。いやいやそんな目で見られても訳が分からないし決めようが無い。
「大丈夫だ。心配するな」
村上がいきなり俺の両肩にポンと手を置いた。コイツボディタッチ多くないか?
「クレオパトラとチュパカブラは三人分ある」
「はぁっ!?!?」
「よし、俺が先陣を切ろう」
「待て待て待てコラちょっ、待てよ!」
画面をタッチし、嶋田が何やら打ち込みレバーを引いた。激しい閃光の後、そこには頭がチュパカブラのクレオパトラが居た。
「これが顔0点体100点だ」
「…………」
もう一度レバーを引くと、今度は頭がクレオパトラのチュパカブラが現れた。
クレオパトラの顔にチュパカブラの体は途轍もなくアンバランスで気持ち悪く、三秒と見ていられない程だ。
チュパカブラの顔にクレオパトラの体は……まあ、何とか。顔さえ見なければ……。
「さて、ココからが俺の選択だ……刮目せよ!!」
再度画面をタッチし、レバーを引く嶋田。
閃光の後現れたのは、クレオパトラ風のチュパカブラ顔に、チュパカブラ風のクレオパトラボディの持ち主だった。
「チュパ度、顔7体3……それが俺の答えだ」
「おおっ!」
村上が『その手があったか』と言わんばかりに驚いた。100%か0%かじゃなくて良いのかよ。アリかよ。
「佐藤。お前も体重視の方が良いと思っただろ」
「う……」
確かに体チュパカブラよりは……マシだが。
「顔はそのうち慣れる」
「確かに……!!」
「じゃ、俺は彼女とデートしてくるわ」
嶋田はチュパカブラ風のクレオパトラの肩を抱き、部屋を出て行った。
「嶋田のアイデアには驚いたが、俺の答えはとうの昔に決まっている」
クローゼットから新しいクレオパトラとチュパカブラをテーブル席にセットし、村上が画面に数字を打ち込んだ。
「出でよ……!!」
レバーを引き閃光に目がくらむ。後に現れたのは右半身がクレオパトラ、左半身がチュパカブラの生き物だった……。
「右から見てれば大丈夫!!」
「…………」
右だけクレオパトラが顔を向けようとすると、村上は無言で顔を元へ戻す。正面から見てしまった俺は軽く吐き気を覚えた。
「……やっぱ微妙だな」
「当たり前だ」
「まーいいや、軽くデートしてくるわ」
村上が右手を引いて出て行った。
クローゼットを覗くと、クレオパトラとチュパカブラが体育座りで縮こまっていた。
「…………」
とりあえずテーブル席にセットした。
さて、どうしたものか……。
何度か頭を摩り、パネルに数字を打った。
考えが間違っていなければこれでいけるはずだ。
レバーを引くと、激しい閃光が走った。
くらんだ目が少しずつ戻ると、そこには顔も体もクレオパトラが満面の笑みで俺を見ていた。
「よしっ!」
俺はクレオパトラを妃抱っこして外へ駆けだした。
──五年後、俺達は久々に顔を合わせ集まった。
「ヨッ」
嶋田がチュパカブラ風の嫁とチュパカブラ風の子どもを連れて現れた。
「久々だな」
村上が右だけクレオパトラの嫁と左だけチュパカブラの子どもを連れて現れた。
「「なんでお前の子どもチュパカブラなん?」」
二人が俺の連れてきた子どもを指差して首を傾げた。
クレオパトラ100%から生まれた俺の子どもは、何故かチュパカブラ100%だった。
「外100%クレオパトラ、内100%チュパカブラにしたからだろな」
きっと内蔵がチュパカブラなんだろう。だから子宮もチュパカブラ。つまり子どもは全てチュパカブラだ。
「せめて下半身チュパカブラで妥協すべきだったかな
……」
「俺尻派だからそれはねーな」
「欲張るからだアホ」
チュパ成分に慣れてしまった二人は、既に幸せムード全開だ。
だが、俺も幸せだ。
自分の子どもがチュパカブラだろうが、俺の子どもであることには間違いない。
俺の大事な子どもだ。なんだろうが可愛いに決まってるさ。