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僕の体験した少しだけ不思議な出来事について日記にしてみた。

作者: 月下氷人

これは中学生の時にあった本当の話。

もう社会人になったけど今でもはっきり覚えている。

なんで今更とは思うだろうけど、偶々思い出したから折角なので日記にして残そうと思ったんだ。



あの日は中学校の部活の大会の日だった。



僕は人口が3万人にも満たない小さな田舎の町の中学校に通っており、部員数が20人程度のテニス部に入っていて、元気に汗を流すスポーツ少年だった。その日の大会は少し離れた会場だったため学校でバスを借りていて、楽しい話をしながら遠足気分で会場に向かっていた。


何度も山を越えないと行けない田舎道。その途中で『注意』とだけ書かれた道路標識があるトンネルを通る時に先輩がこう言い出した。



「この『注意』ってだけの標識ってさ、何に注意か知ってる?」



誰も知らなかったようで静まりかえった車内。



「これってさ、心霊現象が起きるところに置いてあるらしいよ。心霊現象なんて注意としかいえないからこんな書き方になるんだって」



その時はまだ朝の明るい時間だったし、楽しい車内だったから皆笑い飛ばしていた。何より心霊現象なんて誰も信じてなかった。




いざ会場に着けば大会が始まり、朝のそんな一幕なんて無かったかのように1日が過ぎていった。

納得のいく結果を出せた者、出せなかった者、それぞれ入り交じる夕方。当然帰りもバスで同じ道を通って学校まで帰ることになる。



帰りのバスのなか。手持ち無沙汰になれば雑談が起きるのは当然話であったが、今回は朝の「心霊現象注意の標識」についての話がメインとなった。



「あの話って本当なの?」


「うわさだよ、うわさ。本当に見たことなんてないし」


「でも信じられないよなぁ」


「それはそうでしょ。本当なら朝のトンネルで何か起きなきゃ」



そんな話をしていながらどこか期待していた部分もあった。トンネルという怖い話が多く、どこか切り離されたような空間。非日常に憧れる中学生にとっては大好物といっても過言ではない。


時間はまさに逢魔時。

件のトンネルが近づくにつれて期待は増していった。



しかし、いざトンネルに入っても拍子抜けなほど何もなくバスは進んで行った。トンネルも半ばになり、気付かぬ内に潜めていた息を吐いて『やっぱり何もなかったね』と誰かが言い出すその瞬間だった。





「キャハハハハハハ!!」



年端もいかぬ子供のような笑い声がバスの中に響き渡った。


「え!?」


「今の何!?」


「皆聞こえた?」


「いや、聞こえたけど……」


当然の事ながら中学生の部活のバスであり、そのような子供が乗り込んでいる余地はない。


「どうせ外の車からでしょ?」


「窓開いてた?」


「どこも開いてないよ」


「普通あんなに声響く?」


「てか周りに車ないけど」


「え」



その一言で全員に緊張が走った。確かに田舎道で車通りは少ない道である。しかし、確かに前にも後ろにも、車の影は見えなかった。



「いやいや、すれ違う車だったとか……」


「それにしては笑い声、結構長い間響いたよね。しかも横にいるみたいに……」


「……」



深く考えてはいけない、いつの間にか車内はそんな雰囲気となっていった。





勿論実害等はなにもなく、ただ周りにいないはずの子供の声が鳴り響いたというだけの出来事である。心霊現象とも言えないような小さな出来事である。



さてなぜこんな話をしたか。




最近夜ねむろうとするとどこからともなく子供の笑い声が響く気がするのだ。


気にもならなかった声は意識すればするほど大きくなり、今では頭の奥で鳴り響くのがハッキリと分かるようになった。



そして中学の時のこの話を思い出したのだ。


これから私はどうなるのか分からない。心霊現象をバカにしてたから呪われたのか、単にストレスによる幻聴なのか、それも分からない。



ただ何となく皆に聞いて欲しかったのだ。






『注意』とだけ書かれた道路標識を見たら気を付けた方が良いという話を。




実体験に基づく話なのでオチ弱め。

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