第6撃 多忙な1日。
盛り上がってきました。
果たしてヨビトは?
そして突然現れた女性の正体は?
彼女は続けざまに龍の存在だ、国の存亡の危機だ、ただでさえ俺の少ない脳の容量を押しつぶすがごとく空いた口が止まらない…
『ちょっと待ってくれ!要するに暴虐の限りを尽くした龍ってのを倒したのがこの俺で? 』
『はい…。』
『そしてその英雄である俺に国を守って欲しいと…。』
『そういうことです…。』
かれこれ2~3時間は話を聞いたであろう。
俺の気持ちをおいてけぼりに人でも間違えているのだろうか?
唐突に現れた女性にいきなり英雄英雄と言われ持ち上げられるのも悪くは無いが…。
窓から覗いていた日も落ち夕暮れになろうとしていた。
(あいにく俺はやっと掴んだハーレム生活に忙しいのよ。)
『はぁ…。えっと…期待してくれてるところすまないが…俺には全く身に覚えのない話だ!第一、この俺は泣く子も黙る酒場の守護神で生まれてこの方龍どころかモンスターの討伐すら成功したこと…』
自慢げに語る自分が悲しくなり口を閉じた。
それでもどうしたものか…。
目の前の女性の信じきった眼には一点の曇りもない。
(しかし冷静に落ち着いて見てみるとこの子めちゃくちゃ綺麗な子だな。)
一切のダメージなき綺麗なストレートの金髪、直視すると吸い込まれていきそうになる穢れなき瞳。雪よりも白い肌。そして世に珍しく彼女の瞳は左右で色が違っていた。
(オッドアイってやつか?)
段々と高鳴る心の臓とは別に彼女の瞳を見ている間は不思議と心が安らいだ。
安らいだからか邪な考えが浮かんじまった。
(ひょっとするとこの子にも俺のスキル使えたりするのかな…)
大丈夫。自分の気持ちを抑えられている。
そう思っていたヨビトの口角は戦隊モノに出てくる悪者以上に口角が上がっていた…。
と後のヨビトはそう語る。
『と、とりあえず、喉乾いたし…水を持ってきて欲しいな』
『…。』
静かな時間が流れた。
時を止める金色の人間なんていないよな?…
『嫌です。』
『ぇ…?ならお茶でもコ…!』
『自分で取りに行ってください…。』
【⠀……。】
なぬっ!!この俺のスキルが発動しない?
頭上には光り輝き表示されている【ハーレム呼びLv MAX】
(俺の言うことを聞かないおなごなんざこの世にいるはずがない!まさか…)
ガチャ
『失礼します。水をお持ちいたしました。』
『私が』『どきなさい!』
『あ、ありがとう。』
一向に止まらない女性の列と大量の水に困惑しつつも…。
『皆ありがとう!外に出て待っててもらえる?』
良かった…。スキルが消滅した訳では無い。
心から喜ぶってこういうことだよな。
ボソッ『ヨビト一安心…』
『今何か?』
『いや、なんでもない独り言さ!気にしないでくれ。愛くるしい動物を愛でている時につい出る独り言のようなものだから!』
『…分かりました。』
『ってのんびり話を聞いている余裕なんて私にはありません。こうしている間にも龍獄騎士団が、ルオニスがこのアラクタールに攻めてくるかも…』
無理やり現れて話を聞かされてるのは俺の方なのだが…。
何やら彼女の顔は恐怖と悲しみ・絶望に満ちた顔をしている。
『龍獄騎士団?なんだよ?そいつらは?ルオニス?ただでさえパンパンになった脳に次から次へ、俺の頭はパンクしそうだよ!第一このアラクタールにもなんちゃら騎士団っているよな?3年しか住んでいない俺でもわかる事だ!そいつらに任せられないのか?』
『はい…。確かにいますが…。』
しばらく沈黙を貫きそっとこの国の騎士団について、龍獄騎士団について話を始めた。
そして彼女が話し終えた頃、
俺は泣いていた。