第2撃 ここから俺は…
能力…憧れますよね。
厨二病をこじらせすぎた私も
今年で厨67病になりました…
助けたげて。
あいつも討伐に行って1週間が経つ。
あんなやつ、教会送りにされちまえばいい。その時あいつの無様な顔を見て俺は言ってやるんだ。
お前本当に面白いなって。
その時だった。遠くから五月蝿い笑い声、ドスンドスンと聞き覚えのある足音が聞こえてきた。
(まさか・・・倒したのか?)
速攻で布団を敷き俺は眠っている振りをした。
「バッハッハ!!」
ちっ!アイツだ。
「マスター、これはちっとした土産だ。」
「有り難き。」
(あのジジイ、俺には見せたことも無い笑顔しやがって)
トールがこちらに近づいてくる。
「ヨビー・・・そろそろパーティーは見つかりそうか?」
薄目を開けてみてみるとニヤニヤとこちらを見ている。
(無視だ。無視)
「なんだ。寝てるのか。せっかくこのアリアの鉄剣でもプレゼントしてあげようと思ったのに。」
(ん?・・・)
「トール様、しかし、その鉄剣は10万ログの価値が!」
「いいんだよ!俺の家にはもう50本以上ある。それに俺様は今猛烈に気分がいい!!惨めな予備~に・・・な?バッハッハ!!」
(寝てると思って好き勝手いいやがって・・・)
ふざけ・・・そう言いかけて俺は口を閉じた。
「ん?起きたのか!ヨビー」
危ない危ない。
悔しかったが喉から手が出るほど欲しかった鉄剣。
こんなチャンスはこの先、もう無いかもしれない。
「あぁ、今起きたよ。討伐はどうなった?」
「あぁ、聞いてくれ!いや見てくれたら分かるか?これが鉄剣だ!お前見た事ないだろ。バッハッハ!」
取り巻き達もいっせいに笑い出す。
(犬がっ!)
俺の怒りが隠しきれてなかったのだろう。
「まあ、そう怒るな!鉄剣はお前にやるからよ!予備〜♪バッハッハッ!」
殴りそうになった。
ここに置いておくぜ。
そう言いカウンターの上にアリアの鉄剣を置いた。
この後いつもの様に酒場で宴が始まる。今回の旅話から始まり、最後には昔の武勇伝。鉄板だ。
恐らくあと5時間は居座り続けるはずだ。
(こいつの前で受け取るのは癪だ。後でまた取りに来よう。 )
そう思い、用事があるふりをして店を出た。
あいつもたまにはいい事するじゃないか。俺はずっとずっーと欲しかった!
10万ログが!!!!
悪いが今の俺は人々を救いたい英雄に…なんて気持ちはさらさらない。
人生女、そして金よ!
もちろん貰うアリアの鉄剣も速攻、武器屋行きだ。
(10万があれば1年は遊べるぜ!)
密かにしたスキップは隠しきれていなかった。
周りは変な目で見ているが気にしない。
「これがトールの使い方♪♪」
なんて独りでに口ずさんでいたところ見たことの無い店を見つけた。
「ん?こんな店、今まであったか?」
妙に惹かれたその店の
看板には【 マジックショップskill】
と書いてある。
金なんてなかったが
「まあ、いいか。」
冷やかし程度にと店に入ってみた。
ギィー
ボロっちい扉は今にも砕けそうだ。
中には小さい頃テレビCMで見たアイテムや、書物などがかなり年季を帯びて陳列されていた。
(うわぁ!懐かしいなぁ。 )
見れば見るほど懐かしくて泣きそうになる。
「いらっしゃい・・・」
あまりにもか細い声に気づいたのは何回目だろうか。
(こんな若い女性が、店の主?)
見た目はおおよそ10代くらいに見える。
「私はもう127歳だよ!」
突然のことに驚いた。
「えっ!?」
(そんなはずはない。今確かに心の中で・・・)
「私は相手の考えてることまで全部読み取れちまう。これが私のスキル。」
色々なことに混乱して、話しについていけない。
「スキル?なんですか・・・それは・・・?」
聞きたいことはたくさんあったがスキルってのにとても惹かれた。
「あひゃひゃひゃ」
(なんだ?その笑い方は)
鋭い睨みを感じた。
「おっと、すみません!!」
喋ってないことまで筒抜けならどうすればいい・・・
「まぁ、いいよ。昔から笑い方のこと言われるからね・・・、そんなことよりあんた、気づいてないのかい?あひゃあひゃ」
「はい?」
「あんた、あとプラス1でスキルLvMAXじゃないか!逆に今まで気づかなかったなんて面白い男だねぇ。あひゃあひゃ。」
「えっ!?」
俺は驚いた。だって今までそんな能力ぽいことなんて何一つ・・・
「こんな店に入ってくる客なんてそういないもんさ。何かの縁だ。あと一つだけあるスキルの種。せっかくだから、食べてみるといい。スキルLv99つまりMAXになれば私の目でアンタのスキルがなんなのか確認してあげることが出来る。」
胸の高鳴り・・・今までの感情全てがこみあげてきた。
(ついに俺にも・・・ )
なんの能力もないと思っていた。こんな平凡な俺でも勇者になりたかった。必死に剣術、防御術を磨くため修行に明け暮れた日々もあった。いつかはガルマさんとともに・・・なんて夢もいつからか心に閉まいこんでいた。
なのに・・・。
色々な感情が心の中を右往左往して思わず泣いてしまった。
「面白い子だね!いいから早く食べちまいな。」
「はっっはい!!!!」
勢いよく食べた瞬間何かいつもとは違う体の中の違和感を感じた。
「これが、スキルLv99・・・うぅぉぉおおお!!」
力が滝のように漲ってきた。体が燃えるような感覚に包まれる。
「教えてください!僕のスキルを!パワー系ですか?それとも魔法系?なになに?早く、早く教えてください!」
(あれ、どうした・・・反応が・・・)
「なんですか?・・・僕のスキルは?」
僕の気持ちとは対称的な
主が口をぽかんとしながら静かに喋りだした。
「初めて見たよ。そんなスキルLV MAXの男なんて・・・」
「えっ?」
無性に答えを聞くのが怖くなった。
(いや、ひょっとしたらとんでもない力のスキルなのかもしれない。なんなら世界を滅ぼすレベルの。いいや俺はこの、ちか・・・)
「おっさん呼び、あんたのスキル。」
「ん?」
一瞬でも夢見た華やかな世界は俺の中で綺麗に崩れ去った。
「おっ・・・さん呼び・・・」
やはり俺に青春勇者劇は難しいらしい。
「まぁ、あれよ。なんのスキルもないよりはあって良かったじゃないか!」
必死に慰められているのが伝わり余計に辛くなった。
「そうだ・・・これ買ってかない?スキル増幅の実1個10万ログ。人助けと思って!ね?」
「いらない・・・【 おっさん呼び】なんて!!!いらない!!!」
「ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」
脇目を振らずに店を出て走った。もうどうでもよかった。
一瞬でも夢見た自分が馬鹿だった。
その日は結局酒場には帰らず外れの草原で寝ることとなるのだが。まさか、この選択が未来を大きく変えるなんてその時は思ってもいなかった・・・