第1撃 オープニングは流れない
始まりの春。
なんてよく言いますが、冬から始まったっていいじゃない!
本編がスタートするわけですが…
皆さん、体調には気をつけて
この冬をヨビトと共に乗り切りましょう。
俺の名前はヨビト。
俺が小さな田舎からこのアラクタール城城下町に越してきたのは3年前のことだ。
勇者に憧れて、15歳の時に村長の反対を押し切り村を出た。
生まれた時から両親はいなくガキの頃から俺にとって村長が親代わりだった。
出ていくって言った時にはこっぴどく怒られたな。
まず初めにアラクタールと聞いてもピンと来ない人なんてこの世界に居ないだろうが…
なんと言ってもこのアラクタールは俺が勇者を目指すきっかけになった
ガルマさんの故郷でもあるのだ。
6歳の時にテレビで見た「竜王倒しのガルマ。」
このニュースを初めて見た当時6歳の少年に響かないわけがない。
衝撃的で、「いつかは俺も」なんて考えてしまうのは当然のことだろう。
現に当時の子供たちのなりたい職業1位は「勇者」だったみたいだ。
ガルマさんに会いたい・・・
一緒に討伐にいきたい。
討伐ごっこなんてのも腐るほどやったな。
本当にみんなを救う勇者になりたかった。
でも勇者ってのはそんな簡単なもんじゃなかったんだな。
テレビで見た華やかな世界はこの3年間で綺麗に崩れ去ったよ。
勇者って言っても大きくは二つに分かれる。
主にリーダーの【勇者】そして勇者の補助にあたる【サブ勇者、メンバーとも言う】
俺がなりたかったのはリーダーつまり前者の方だった。
基本的にはその村や城下町の集会所だったり酒場にある掲示板から自分に合った依頼を選びパーティーを作り、依頼を達成するために旅に出るってのが流れになるんだけど・・・
あいにく俺は運動神経0、おまけに戦略を練ってなんてそんな知力言うまでもなく、無い。そんな若造のサブとしてついてきてくれる善人なんて世の中そうそういるもんじゃない。
結局は荷物持ちのサブとして色んなパーティーに参加させてもらうこととなるのだが・・・
毎回、世間では雑魚と呼ばれる敵に一撃ノックアウト。
ドジの連続。恥ずかしながら混乱して仲間を攻撃したこともある。
いつからか俺はパーティーに入れてもらえなくなった。
今では、メンバーが揃わなかった時の予備要員という扱いになっている。最近では名前のヨビトと予備をかけられて「ヨビー」なんて。
率直に言おう。
悔しい・・・。
そう思いながらも
「そろそろ今月もピンチだし、簡単な依頼でも・・・」
なんて酒場で掲示板からLv1の依頼を物色することしか俺にはできない。その時だ。ドスンドスンと大きな足音が近づいてくるのを感じた。急いで俺は酒場に布団を敷き、眠りに入った。
「バッハッハッ!」
五月蝿い笑い声が店内に響き渡る。
「酒場清掃員ヨビーじゃないか!お前酒場に泊まって何日だ?」
本当に五月蝿い奴だ・・・
我慢我慢だ…
『サボりは良くないぞ!だいたいお前は…』
カチンときたから起き上がりこう言った。
「うるせぇ!!討伐に出ようとも俺様が強すぎてパーティー内で扱いきれないんだとよ!」
苦し紛れの言い訳だ…
「あぁ、そうか!まぁ、頑張れよ。俺達は今から悪霊バルウィンドウを討伐してくるから。」
「あんな雑魚そんな大人数いなきゃ倒せねぇのかよ。」
「バッハッハ!お前本当に面白いな!」
そう言い五月蝿い笑い声とともに店を出た。
こいつはトール。俺と一緒にこの城下町に越してきた言うなれば同級生ってところだ。こいつは体格だけは昔から恵まれていた。
(ったく、それを言うためだけに来たのかよ。悪霊バルウィンドウ・・・)
まさかっ!急いで掲示板を確認するが、やっぱりそうだった。
【 悪霊バルウィンドウ Lv3 討伐した者には報酬金5万ログ、特別奨励としてアリアの鉄剣を贈呈する】
内心思った。
(連れていってください。・・・ )
あの時強がった俺をひどく恨んだ。