プレゼント【6】
「そんなに期待が集まっているなら、第一王子も大変ですよね」
「大変?」
沙彩が呟いた言葉に、マリスは不思議そうに聞き返す。
「大変じゃないですか。国民から注目を集めてるなんて。心が休まる時がないと思います。勝手に期待する方もですが、期待される側はプレッシャーを感じるわけですから」
期待を受けるという行為がどういう事なのか、沙彩だって知っている。
期待を寄せられて喜ぶ人もいるだろう。だが、中にはそうじゃない人もいる。
また、その期待が大きければ大きい程、緊張してしまうのも確かだろう。
勝手に期待を寄せてくる方にも問題があるかもしれないが、人は向けられた期待に、必要以上に答えようとしてしまう。
時には、周りがフォローをしなければ、「期待」に押し潰されそうになるまで、必死になる。
「そう、だね……」
俯くマリスの様子に気付かないまま、沙彩が歩いていると、まだ人通りが少ない、大きな道に出る。
「マリスさん、出口はまだですか?」
「あ、ああ、もうすぐそこだよ。そろそろジョセフィーヌに乗ろうか」
マリスは颯爽とジョセフィーヌに跨がると、馬上から沙彩を引っ張ってくれる。
ジョセフィーヌを歩かせながら「さっきの話だけど」と、沙彩の後ろに座ったマリスが話しかけてくる。
「サーヤが第一王子の立場だったらどうする?」
「そうですね……。無理に期待に応えないと思います。期待に応えるという事は、どこかで自分の感情を押し殺すという意味でもあります。要は期待を寄せてくる人達を優先するわけですから」
寄せられた期待には、答えなければならない。
そう考えて必死になって、周りが見えなくなる事もある。ーー自分の心が摩耗している事に気づかないくらいに。
「期待に応えるのも大事だと思います。でも、無理をし過ぎるのも良くないです。
自分の出来る範囲、持ってる力の中で、ほどほどに期待に応える。自分に嘘つかない程度に、苦しくならない程度に」
「……そっか」
チラッと後ろを見ると、マリスは正面を向いたままだった。
けれども、真っ直ぐに見据えた緑色の瞳は、どこか哀愁を感じさせられたのだった。
「マリスさん……」
「サーヤ、しっかり掴まっていてね」
そうして、マリスはジョセフィーヌを走らせると、街を出たのだった。
この時、マリスが何を考えていたのか、沙彩は聞く事が出来なかった。




