プレゼント【5】
『第一王子の縁談、またも破談に』
『世継ぎはまだか!? 焦る王家』
スポーツ紙の様な見出しから察するに、どうやらアマルフィア王国の第一王子の縁談に関する記事らしい。王子の縁談が破談となり、後継者ーー世継ぎの誕生が先延ばしになったのだろう。
どこの世界、どこの国でも、後継者問題はあるらしい。
(第一王子の縁談か……。自分には関係ないかな)
男性が一部購入すると、他に新聞を買う者はいないようで、新聞売りは声を掛けながら去って行く。
新聞売りが立ち去った直後、ようやく早馬を出したマリスが建物から出てきたのだった。
「お待たせ。何か気になるものでもあった?」
新聞売りが去って行った方を見ていた沙彩だったが、マリスの言葉に首を振った。
沙彩の視線の先を追いかけたマリスは、「ああ」と何やら納得した様子だった。
「新聞売りか。サーヤには珍しいかな?」
「この国の第一王子って、どういう人なんですか?」
「ええっ!?」
沙彩の言葉に、何故かマリスは大仰に驚く。マリスの声に驚いたジョセフィーヌが、不愉快そうに鼻を鳴らしたのだった。
「ああ、驚かせてごめんね。ジョセフィーヌ」
鼻息の荒いジョセフィーヌを宥めるように、顔を撫で回していたマリスだったが、ようやく沙彩の視線に気づいたらしい。
苦笑しながら、ジョセフィーヌから手を離したのだった。
「……そんなに気になる?」
「これから王城に向かうんですよね? それなら、きっとお会いしますよね。第一王子に」
王城ということは、第一王子を始めとする王族の住まいでもある。
当然、王族と会う機会もあるだろう。
万が一、謁見することになった時に備えて、事前に知っておいても悪くない。
そう考えて聞いたのだが、マリスはあまり答えたくないようだった。
「もしかしたら、王城に行った時に王族に会うかもしれないと思ったので、あらかじめ知っておきたかったんですが……。答えづらいならいいです」
「待って! 教える、教えるから!!」
先に歩き出そうとすれば、何故かマリスは慌てて引き留めようとする。
沙彩が訝しむ中、マリスは息を整えると「第一王子はね」と話し出す。
「アマルフィア王国の唯一の王子にして、王位継承権第一位。つまり、次期国王になることが決まっているんだ」
現在、アマルフィア王国の直系の王族には王子は一人しかいないらしい。
先代国王が崩御し、玉座を継いだ現国王は、とある女性を王妃として迎え入れた。
その王妃との間に生まれた二人の子供の内、男子は一人だけであった。
その男子が、噂の第一王子である。
「現在の国王陛下には、兄弟どころか姉妹もいないんだ。皆、早逝されてしまったからね」
「そうなんですね……」
「第一王子には他に兄弟はいないから、国王陛下を除いた王族の中で唯一の男子になる。従兄弟もいないから、正真正銘、ただ一人の男子だ」
街の出口まで歩きながら、王族についてマリスから教えてもらう。
日が高くなってきたからか、人が増えて、街や通りに活気に溢れてきたのだった。
「だからこそ、この国の国民は、誰もが第一王子に期待を寄せているんだ。次代を担う王子とその奥方ーーやがては、王妃となる女性をね」
この国の行く末を左右する国王。その跡を継ぐ第一王子は、どんな人物なのだろうか。
そして、その第一王子が選ぶ女性は、如何なる人物なのだろうか。
第一王子の縁談の話が出る度に、国民の期待は増えるばかりであった。




