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占いと地震【1】

「ちょっと、そこのアンタ」


 エレベーターに向かっていた槙野沙彩まきのさあやはキョロキョロと辺りを見回す。


「アンタだよ。アンタ」


 声が聞こえてきたのは、エレベーターの側にある小さなテナントからだった。

 テナントの側の立看板には、『占いの館』と書かれており、その下には『今日の占い師』との事で占い師の名前が書かれていたのだった。


「えっと……。私ですか?」

「そうだよ。アンタだよ。ちょっと、こっちにおいで」


 年配の女性の声に、「でも」と、沙彩は及び腰になる。


「私、今日は手持ちが少なくて……。とても、占ってもらう程、持っていなくて……」


 立看板には、占い料も書かれていた。決して高くはないが、安くもない金額に、沙彩は苦笑したのだった。


「いいから。誰も来なくて暇だから、話し相手になっておくれ。それとも、急ぎの用事でもあるのかい?」

「そんな事は……」


 今日の沙彩は、仕事も休みで、このショッピングモール内に出店している中古書店に本を売りに来ただけだった。

 インドア派の沙彩は休暇の日には、買い溜めた本を読むのが好きだった。

 けれども、一度の読書量に対して、ひと月に発売される新刊の量が多く、買い溜める本は増える一方であった。

 それもあって、沙彩の部屋は本に埋まっており、本棚はとうに限界を越えていた。

 それで、今日は休暇を利用して、読み終わった本を売りに来たのだった。

 それも終わったので、あとは帰るだけだったのだが。


「じゃあ、入っておいでよ。話し相手になってくれるなら、タダで占ってもいいよ」

「えっ!? タダで?」


 実は以前から、占いに興味があった。特にここの占いの館はよく当たると、SNS上で話題になっていた。

 ただ、ここのようによく当たると評判の良いところは、ほぼほぼ良い値段をしていたのだった。


「じゃ、じゃあ……。お言葉に甘えて、少しだけ」


 沙彩は迷った末に、占いの館に入って行った。

 パーテーションで仕切られた三ヶ所の占いブースの内、一番奥側のパーテーションに人の気配がした。


「こっちだよ。早くおいで」


 キョロキョロと物珍しそうにしていると、一番奥のパーテーションに行くと、全身黒い服を着た老婆がいた。

 沙彩が近づくと、老婆が机を挟んで対面の椅子を指した。


「さあさあ。ここに座って」

「はあ……」


 沙彩がおずおずと椅子に座ると、老婆はイヒヒと笑う。


「これは随分と珍しいタイプじゃな」

「はぁ……?」


 全身黒色の格好をして、白髪が混じる髪を後ろでまとめた老婆の言葉に、沙彩は意味を掴みかねる。

 そんな沙彩の様子に気づく様子もなく、老婆はテーブルの下から水晶玉を取り出すと占い出したのだった。


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